対象読者
- JavaScriptとWeb開発の基礎に理解がある方
- Reactに興味/関心があり、これから学び始める方
前提環境
筆者の検証環境は以下の通りです。
- macOS Sierra 10.12
- Node.js v8.9.4/npm 5.6.0
- React 16.2.0
- redux 3.7.2
- react-redux 5.0.7
Fluxの思想
Flux(フラックス)はFacebook社が提唱している、クライアントサイドのWebアプリケーション開発のためのアプリケーション・アーキテクチャ(設計思想)です。単方向のデータフローを構築できることが最大の特徴で、開発の規模が大きくなってもデータの流れを見失いづらいことが大きなメリットです。Reactとの併用を主に想定して生み出されたため、ReactによるWebアプリケーション開発を行う多くの現場で採用されています。
それでは、Fluxがどのような考え方をするアーキテクチャなのかを解説していきます。Fluxは次の3つの要素から成り立っています。
名前 | 役割 |
---|---|
Store(ストア) | アプリケーションの状態データを保持するオブジェクト、状態の更新を実施する処理 |
Action(アクション) | 状態を更新するための指示内容を表すメッセージ |
Dispatcher(ディスパッチャー) | Storeに対してActionによる更新指示を行う関数 |
Fluxの最大の特徴である単方向データフローは、ここにUIである「View」を加えて、図1の通り表されます。
状態の更新指示内容である「Action」を関数である「Dispatcher」で「Store」に伝えて状態を更新し、その結果を「View(React)」に伝える、といった流れです。
実際にアプリケーションに組み込んだ場合には、ユーザーが画面を操作したイベントに応じて新たなActionを発行(dispatch)して、状態と画面を更新していく形になるので、次の通りになります。
図2に沿って初期化後の処理を一つひとつ見ていくと、次のことをしています。
- ユーザーがViewを操作する(ボタンを押す、文字を入力する、など)
- 更新したい事柄をActionの形にまとめて、Dispatcherに渡す
- DispatcherからActionを渡されたStoreが、Actionの内容に応じて状態を更新する
- Storeの状態が更新されたことを検知したViewが書き換わる
Fluxアーキテクチャを採用したアプリケーションは、このデータフローを繰り返していくことになります。データの流れを逆流させたり、Dispatcher以外の方法でStoreを更新したりすることはできないので、アプリケーションの動きを把握しやすいです。Fluxが開発規模の拡大に強いとされる理由はここにあります。
Fluxに触発されたライブラリたち
Fluxそのものはあくまでも設計思想です。Fluxの単方向データフローを皆さんのアプリケーションの中で実現するための方法を、Facebook社は強制していません。そのため、世界中の開発者たちが「私が考えた最高のFlux」や「Fluxに触発された便利なライブラリ」を生み出しました。筆者が代表的なものとして認識しているのは次のライブラリです。
ひとくちに「Fluxを導入する」といっても、こうもたくさんあってはどれを使えばいいのか迷ってしまいますね。筆者は次の理由から「Redux」を使うことが多いです。
- データ管理の機構が分かりやすい
- デファクトスタンダードになりつつあり、Web上の情報が多いため、トラブルシューティングが容易
- 込み入ったことをしたくなった場合の拡張性に優れている
- 拡張のためのライブラリが豊富に存在する
次節からは「Redux」を題材にして、Fluxを用いた開発は実際にどうすればいいのかを解説していきます。