越境は自然に起きにくい――ハードルを下げるための3つの取り組み
次に登場したのは、Takramの神原啓介氏だ。彼は、業務領域の越境を成功させるためにTakramが工夫していることについて解説した。
かつてTakramは、「株式会社タクラム・デザイン・エンジニアリング」という社名だった。しかし、2018年2月3日付けで社名を「株式会社Takram」に変更した。これは、「『デザインとエンジニアリングだけでは解決できない、新しいタイプの業務が増えた』ことに起因している」と神原氏は語る。
「社内でこの話をするときに、よく『BTCモデル』の話題が出されます。BTCとはビジネス、テクノロジー、クリエイティブの頭文字を取ったものです。これまでのデザイナーはCに偏っていたんですが、これからのデザイナーはBとTが必要になっていきます。私たちは、BとTとCが重なった頂点を目指すことを目標にしているのです」
「越境」というと、大きなジャンプをするようなイメージがある。しかし実際には、1~2年ごとに小さいジャンプをくり返し、数年経過すると結果的にそれが大きなジャンプになっているのが実態に近いと神原氏は述べる。
「理由はいくつかあります。自分が知らない分野に踏み込んでいくのは怖いし面倒で、何よりリスクが高いです。それに、一般的な組織では自分の担当外の領域には手を出せないのが普通でしょう。また、新しい分野のスキルを身につけるのには時間がかかります。そうした前提があるので、個人の努力で大幅な越境を起こすことは難しいのです」
そのため、Takramは「越境のハードルをできるだけ下げる」ための仕組みづくりを創業当初から続けてきた。主な取り組みは3つある。
1つ目は「3 MEMBERS」だ。Takramでは1つのプロジェクトを進める際に3~4人ほどのチームを組む。その際に、例えばIoT系プロダクトの開発プロジェクトの場合、IoTに詳しくないメンバーも意図的にアサインするという。そうすることで、IoTの知見があるメンバーとそうでないメンバーで情報交換をし、お互いに相乗効果が生まれるそうだ。
2つ目は「3 PROJECTS」だ。Takramのメンバーは2~3つのプロジェクトを同時並行でこなしている。そのうち1つは自分の得意ではないプロジェクト、残りの1~2つは自分の得意なプロジェクトにアサインされる。1つのプロジェクトは数カ月ほど続くため、得意ではない領域ばかりを担うのは精神的につらい。そのため、得意な領域も同時進行で受け持ってもらうことで、越境のストレスを下げるのだという。
3つ目は「3 METERS」だ。これは、自分のプロジェクトメンバーの半径3メートルにいること。つまり、物理的にメンバーの近くで仕事をすることを意味している。異なる職種のメンバーとともに話し、同じ画面を見ながら作業をすることで、濃度の濃い情報を得ることができるのだという。
こうした仕組みを上手に用いることで、Takramは越境しやすい文化をつくり上げていると、神原氏は総括した。
