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【Developers Boost】セッションレポート

「こんなにエンジニアが価値を出せる時代はない」――どのような未来に賭けるか【Developers Boost】

【C-1】U30エンジニアとしての技術的投資戦略


U30のぼくらはどんなゲームをプレイしているか

 安野氏はU30のエンジニアが直面している状況を、3つのゲームにたとえて説明した。

 1つ目は「資本主義経済ゲーム」。資本主義では資本を用いて拡大再生産する。ピケティによると資本収益率は経済成長率よりも大きいので、労働力より資本力が有利となる。U30は資本力がないので不利だ。

 2つ目は「不完全情報ゲーム」。囲碁や将棋は盤面の情報が明かされているが、現実世界は誰もが一部の情報しか知り得ず情報格差が存在する。U30はコネも情報もまだ少なく、不利だ。

 3つ目は「繰り返しゲーム」。同じ主体が何回も同じ条件で繰り返しプレイするということで、信頼やスキルの積み上げが効いてくる。U30は経験がないので不利になる。

 「総じてU30は、これだけを見るとクソゲー感があります」と安野氏は言う。

 逆にU30の強みは何か。1つは「リスクをとれる」(傾向にある)こと。U30だとまだ家族を持たず、生活水準もそれほど高くないため、バーンレート(1カ月に必要な資金)が低い傾向にある。仮に失敗しても再び挑戦することはいくらでも可能だ。もう1つは「時間的なリソースを投下しやすい」こと。先述した理由に加えて、体力もまだ落ちておらず、仕事に投下できる稼働時間を多く持てる。

 2つの武器と3つの不利な点を考慮し、安野氏は「ひとつ戦略としてあり得るのは、新規に立ち上がってくる領域に対して大きく勝負をすること」と提案した。

 新しい領域とは、今ならAIやVR、ブロックチェーンなどだ。新しい領域では資本力が成功の主要因ではないため、それらが少ないプレイヤーでも勝てる可能性がある。また老いも若きも「わからない」ので情報やスキルのギャップが少ない。平等な状態からスタートできて、スピード勝負でもある。リスクがとれない年代は参入しにくく、密度が高いコミットができるU30には有利な条件がそろっている。

未来にベットするには、この3ステップで進めていこう

 それでは、新しく立ち上がる領域にベットする(賭ける)には何をしなくていけないか。安野氏は「3ステップあります。1つ、『未来を予測する』。2つ、『予測した未来に備える』。3つ、『選択肢を定量的に比較してベットする』」と説明する。

 詳しく見ていこう。安野氏は「未来を予測する」ステップで機械学習に着目した。ここでは細かな実験を通じて情報収集することが大切になる。安野氏は先述したように、多様な実体験を通じてリアルな情報を得てきた。

 未来予測では自分1人ではなくチームでチューニングするのも効果的だ。安野氏は異なる専門分野の人たちと「1年後の予想」を発表し合い、それに同意できるかどうかも含めてシェアしている。1年後には予想が当たったかレビューすることで、周囲の反応と自分の感覚を合わせることができるという。「おすすめのプラクティスです」と安野氏は話す。

 「予想した未来に備える」では、安野氏は「機械学習の事業づくりができるようになること」を掲げてスキルセットをそろえていった。そして「スキルセットをそろえることは投資にあたります。闇雲に勉強するより一貫性のあるストーリーをもとに分野を選択していくのがいいです」と説明する。

 登場したばかりの技術を学ぶことはハイリスクハイリターンだ。「自分が見立てている領域に必要であればやるべきだし、必要なければやらなくていい」と安野氏は判断基準を示す。またスキルは単体では役に立たないことがある。安野氏の場合だと、掲げた目標を達成するために必要なものとして、技術に加えてデザインや事業戦略のスキルをそろえてきたというわけだ。OS、アルゴリズム、データベースなど普遍的な技術は何年たっても役に立つので「いい投資」になる。

 「選択肢を定量比較しベットする」はどんな環境で働くかということだ。自分に適切なリスクとリターンから選ぶのがいいという。安野氏が「わかりやすい軸」として示したのが企業のステージだ。

 IPO後のエンタープライズだと、自分が出したバリューに対して高ければ高いほど昇進していくという形でリワードがある。しかしどこかの段階で頭打ちになる。レイトステージのスタートアップだと、イグジットすると企業価値の分だけ自分のリワードが上がる。ただしイグジットしなかったら基本的には時間給のみ。エンタープライズに比べるとリスクはあるものの低い水準でおさまる。

 シードやアーリーステージのスタートアップだと、最初は出資するなどリスクを負うことになる。一方である段階を過ぎたらリワードは青天井で伸びていく。ハイリスクハイリターンだ。

 これらは「どれがいいか」ではなく、自分に合うリスクとリターンはどれかということ。安野氏は「自分にとって良いものをテイクするようにしましょう」と話す。

 最後に、安野氏は次の通り述べて講演を締めた。

 「こんなにエンジニアが価値を出せる時代はないのではないかと考えています。Netscape開発者である投資家でもあるマーク・アンドリーセン氏が“Software is eating the world”と発言しているように、ソフトウェアはどんどん世界に広まっています。これはエンジニアが出せる社会へのインパクトが広がっているということです。エンジニアは『どのような未来に賭けるか』を真剣に考えたほうがいいと思います。これはそれぞれの最適戦略だけにとどまらず、世の中全体が良くなるための主要なドライバーになるでしょう。ぼくは未来を作っていきたいエンジニアと話すのがすごく好きなので、お気軽に声をかけてください」

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

フリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Onlineの取材・記事や、EnterpriseZine/Security Onlineキュレーターも担当しています。Webサイト:http://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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