エンジニアをいかにしてルーチンワークから解放するか
Nutanixは2009年に米国サンノゼで創業された新興IT企業だ。世界で初めてHCI製品を世に送り出したベンダーとして、これまで市場をけん引してきた。IDCの調査によると、2018年第3四半期のHCIソフトウェアベンダー別ソリューション売上額シェアにおいて、同社は56%のシェアを占めている。
Nutanixが目指すのは、パブリッククラウドが持つスピード感や柔軟性、スケーラビリティなどのメリットと、オンプレミスが持つコストメリットやサービスレベル、ベンダーロックインの回避といったメリットの両方を併せ持つ、これまでにない新たなインフラソリューションだ。こうしたソリューションがエンジニアにもたらすメリットについて、ニュータニックス・ジャパン合同会社 島崎聡史氏は次のように述べる。
「従来型のITインフラ、特に仮想化基盤はストレージやSAN、サーバーの階層にハイパーバイザーが加わって複雑さが増し、さらにシステムごとにインフラがサイロ化・分断されてしまっているため、運用作業がかなり複雑化している。Nutanixが目指すのは、こうした非効率なインフラ運用作業に費やされる時間を減らし、その分生産的な仕事に使える時間を増やすことだ」(島崎氏)
そのためにHCIは、従来型のITインフラを構成していたストレージやSANを排し、汎用型のサーバーノードを複数つなげ、SDS(Software Defined Storage)を搭載することでサーバーノードの内蔵ディスクを束ねてストレージプールを提供する。さらに統合管理ツールを搭載することで、インフラ全体の一元的な管理も実現。これによってインフラ運用の複雑さを排し、エンジニアを非生産的な作業から解放するとともに、オンプレミスでありながらクラウド並みのシンプルなインフラ運用を可能にするという。
インフラ運用の生産性向上は、現在喫緊の課題となっている。株式会社クララオンラインで10年以上にわたって国内外のさまざまな大規模クラウド/ホスティング環境のインフラ運用に携わってきた宇野素史氏は、インフラ運用の現場が直面する危機について「今後、デジタルトランスフォーメーションの動きが本格化すると、ITの需要はさらに拡大してインフラエンジニアの仕事は確実に増える。にもかかわらず、少子高齢化の傾向はますます進み、労働人口は減っていく。従ってこのままでは、インフラ運用の現場は破綻しかねない」と警鐘を鳴らす。
Nutanixがグローバルで行ったアンケート調査においても、日本は海外より戦略的IT活用への意識が低めで、かつIT人材の継続的な雇用に苦労しているという結果が出ているという。こうした状況を改善するには、少ない人数でより大きな成果を上げられるよう、エンジニアの業務効率を向上させる必要がある。そのためには、「ルーチンワークからエンジニアを解放し、より価値の高い仕事に人的リソースを集中させるほかない」と宇野氏は力説する。
「今日のインフラ運用の業務はルーチンワークが多く、かつ今後IT活用が進んでいくとその量も併せて増えていく。エンジニアの数が減っていく中、こうした状況に対応していくためには、エンジニアがルーチンワークに忙殺されている現状を変える必要がある。
ちなみに会社によっては『修行』と称して若手エンジニアにルーチンワークをさせるところもあるが、もってのほかだ。ルーチンワークは、思考停止による成長停止しか生まない。若い人材が自然と集まる魅力的な職場を作り上げるためには、若手に新しいことにどんどんチャレンジさせて、成功(および失敗)体験を積ませることで成長を促していかないといけない」(宇野氏)
RPAとNutanixの連携によるインフラ管理の自動化
では一体どうすれば、ルーチンワークの負担を減らすことができるのか。そのための方法のひとつとして、宇野氏は「ルーチンワークをロボットに代行させる」方法を提唱する。
例えば、開発環境やテスト環境のためのインフラを準備する際、フロントエンジニアはインフラエンジニアに対して「いつもの構成で」と一言でインフラ構築を気軽に依頼する。一方、それを受けたインフラエンジニアは裏でWebサーバーを立ち上げたり、ファイアウォールやロードバランサーを設定したり、データベースを用意したりと、実に多くの作業を強いられている。
インフラエンジニアが人知れず苦労しているこうしたインフラ構築・設定作業を、RPAとNutanixを組み合わせることで自動化できるという。まず、フロントエンジニアからインフラ部門に対する依頼を受け付けるための、サービスカタログのサイトを用意する。このサイト上でインフラ構築の依頼を受け付けると、裏でRPAのロボットがNutanixの管理ツール「Nutanix Prism」にログインし、画面を自動操作して構築依頼のあったサーバー・ストレージリソースを生成して払い出す。
こうした自動化の仕組みを実現することで、これまでインフラ構築のために行ってきたルーチンワークからエンジニアを解放し、貴重な人的リソースをより戦略的で価値の高い仕事に割り振れるようになる。ちなみに、製品そのものに実装されているオンプレミスのサーバー・ストレージリソースだけでなく、パブリッククラウドのリソースもNutanix Prismから制御できるようになっている。
「オンプレミスのリソース管理と同じように、AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azure、GCP(Google Cloud Platform)といったパブリッククラウドのリソースもNutanixから管理できる。これを実現しているのが、裏で動いている『Nutanix Calm』というツールで、オンプレミスとパブリッククラウドが混在するハイブリッド環境におけるデプロイの手順やモジュール間の依存関係を定義できるほか、起動や停止、スケールイン・アウト、削除などのタスクを自動化する」(島崎氏)
本セッションでは、実際にNutanix Calmを使って、Nutanixのオンプレミス環境上でMySQLのデータベース環境を自動的に生成すると同時に、AWS上でもWebサーバー環境を自動的に生成してハイブリッドのWebアプリ環境を自動構築する様子がデモンストレーションされた。
こうしたユースケースのほかにも、Webからの情報収集(クローリング)や定期的なレポーティング、パッチ適用作業、セキュリティチェックといったさまざまなルーチンワークに、同様の仕組みを適用可能だという。
「RPAのロボットは、Nutanix上のリソース管理を自動化できるほか、Office 365やSlackといったビジネスアプリケーションの操作も自動化できる。またNutanixをAWSやMicrosoft Azureと連携させることで、パブリッククラウドを使った作業の自動化も可能だ。加えて、近年注目を集めるKubernetesとも連携でき、業務アプリケーションやプライベートクラウド、パブリッククラウドを組み合わせた機能的な環境をRPAのロボットからまとめて自動操作できるようになる」(宇野氏)
なおNutanixは、RPAから自動操作する以外にも、APIを通じてプログラムから自動処理することも可能だ。多くの機能がREST APIとして公開されているほか、パブリッククラウドのPaaSに相当する機能も備えている。例えば「Nutanix Era」という機能はAWSのAmazon RDSに相当するもので、データベースのプロビジョニングや各種管理タスクをサービスとして提供する。また「Nutanix Buckets」はAmazon S3に相当し、REST APIでアクセス可能なオブジェクトストレージを提供する。さらに「Nutanix Karbon」という機能では、Amazon EKSライクなKubernetesのマネージドサービスを提供する。
「Nutanixは、インフラエンジニアだけでなくデベロッパーとも相性がいいインフラ管理の仕組みを提供する。これらの機能を通じて、日本のエンジニアが『新しいこと』に取り組むための時間を創出するお手伝いをしていきたい」(島崎氏)
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