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「デリゲーションポーカー」で不透明な役割分担をカイゼンする~権限委譲のプラクティス

開発現場のストーリーから学んで実践! 最初で最後のカイゼン・ジャーニー 第3回

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2019/04/19 11:00

目次

解説「デリゲーションポーカー」

今回の解説は御涼が担当しますね。各メンバーは自分の技量に自負やプライドがあるので、あうんの呼吸で好き勝手にやっていると思いきや、鎌倉さんのリーダーシップや意思決定のスピードに任せてしまい、滞留してしまうこともあります。誰が意思決定したのか? 誰に確認すれば良いのか? メンバーによって認識が違い、誰がどこまでの責任を持つのかが決まっていないので、混乱することもしばしばあります。

今回の解説は御涼が担当しますね。

各メンバーは自分の技量に自負やプライドがあるので、あうんの呼吸で好き勝手にやっていると思いきや、鎌倉さんのリーダーシップや意思決定のスピードに任せてしまい、滞留してしまうこともあります。誰が意思決定したのか? 誰に確認すれば良いのか? メンバーによって認識が違い、誰がどこまでの責任を持つのかが決まっていないので、混乱することもしばしばあります。

 また、世の中には、良かれと思って気を利かせたのがあだになってしまった、という経験のある方も多いのではないでしょうか。あるいは、誰かの意見を待った方が良いのか? 時には勝手に実施した方が多忙なメンバーの時間を節約できるから良いのか?など頭の中で右往左往、逡巡する方もいらっしゃるでしょう。私自身、気苦労が絶えないのも事実なんですよ。

 これらの混乱はチームの運営のあり方に起因するもので、権限委譲が明確になっていないことが要因のひとつと考えられます。

 今回は権限委譲をテーマにしたプラクティスを説明していきましょう。

どんなときに効果的?

 こんな状況が少しでも当てはまる場合、権限委譲を考えるチャンスです。

どんなときに効果的か

どんなときに効果的か
不透明な権限と責任
  • 役割の認識不一致で混乱していて遅延やトラブル発生
  • 依頼したつもり・指示待ち状態での停滞感
個人依存体質
  • 偏ったメンバーの業務多忙と生産性依存状態
  • 依存の関係性があるようだが把握できていない状態
キャリアパスや成長機会構築
  • 成果に直結しない上下関係、成長機会、制度や組織構造に不満が露呈しているとき
  • 新メンバーがチームへジョインした際、役割や責任の分担などチームのあり方を説明するとき

なぜやるの?

 以下の目的で実施しましょう。

目的

目的
組織での成長
  • メンバーに機会を与え組織として成長し、組織のパフォーマンスUPのため
  • 意思決定のスピードを上げるために自律的で自己組織化チームを構築するため
  • 偏ったメンバーや上司への依存体質をカイゼンするため
認識のズレ解消
  • 権限委譲する側とされる側の認識を合わせ、認識のズレを解消するため
メンバーのありたい姿を考える機会
  • 組織の未来と照らし合わせ、メンバーが未来にはどうなりたいかを把握し目標設定するため
  • 成長や育成や自発的行動を促すため

権限委譲はリーダーの責任

機会を与える権限委譲

 権限の認識のズレはお互いにストレスになるでしょう。解消しないかぎりお互いにしこりを積み重ねてしまいます。権限をメンバーに委譲し、勇気づけていくことがリーダーの重要な役割なんです。

 権限と責任が同居することで重要な判断を任せられ、自分事となり、指示待ち状態から自立へと変化していくのです。

 リーダー1人の強力なリーダーシップだけでは、メンバーの成長はいつか止まってしまいますし、モチベーションも上がりません。思考停止の指示待ちメンバーを増加させてしまうのが落ちでしょう。せっかくメンバー全員の頭脳があるのですから、その多様なスキルにシナジーを生み出してはいかがですか。

組織で成長するための環境構築

 リーダーの仕事のひとつに環境づくりがあることを忘れてはいけませんね。組織として成果を出すことやメンバーの育成も重要ですが、俯瞰して見られる立場にあるリーダーでしかこのタスクはこなせません。メンバー個人の成果や成長だけに主眼を置くのではなく、組織として成長を考え、組織としてパフォーマンスを上げていくことが大事なのです。

 なぜならそれがチームで働くことの意味であり、多様な個人の化学反応を導き出し、メンバーの人数以上の成果を上げることが、本当に機能しているチームなのですから。権限委譲の仕組みを作り、組織を成長させていきましょう。

プラクティス実施手順

今回は、ゲーム形式で楽しみながら権限委譲を実施できるデリゲーションポーカーを使ってみます。デリゲーションポーカーはJurgen Appelo氏によって設立されたManagement 3.0の権限委譲プラクティスです。

今回は、ゲーム形式で楽しみながら権限委譲を実施できるデリゲーションポーカーを使ってみます。デリゲーションポーカーはJurgen Appelo氏によって設立されたManagement 3.0の権限委譲プラクティスです。

事前準備

 事前に、以下の準備を整えておきましょう。

  • 権限委譲スコープの確定(プロジェクト内 or 業務組織内 or 会社組織内)
  • 参加者の設定と声がけ(2人~7人)
  • 時間設定(15分~90分)
  • 場所の確保

 また、以下の部材を用意すると良いでしょう。

  • デリゲーションポーカーを参加者人数分
  • デリゲーションボード記載用A3用紙
  • サインペン
用意するもの
用意するもの

 「参考・出典」にデリゲーションポーカーの購入サイトや画像ダウンロードURLがありますので、ご活用ください。

当日の流れ

1. オープニング(10分)

 「権限」や「責任」などの言葉を強調しすぎると場が固くなってしまうでしょう。場を和ませるべく、「ゲームを楽しみながらお互いに評価は気にせずに確認しあいましょう」と促してみましょう。発言があるだけで、メンバーは評価や責任などの思いを巡らせる必要性が低下します。

デリゲーションポーカーの説明
  1. 各参加者はデリゲーションポーカーを1組(7枚の権限レベル)ずつ持つ
  2. 下記のデリゲーションボードをA3用紙に記載する
デリゲーションボード
デリゲーションボード
7枚の権限レベルの説明

 リゲーションポーカーは7つの権限レベルがあります。上司からの目線で書かれています。それぞれの意味を見ていきましょう。

7枚の権限レベルのカード
7枚の権限レベルのカード
レベル1. 命令する

 私(上司)が彼ら(メンバー)に決定を伝える:この権限レベルは全ての権限が上司に存在する。

レベル2. 説得する

 私(上司)が彼ら(メンバー)に売り込む:WhyやHowの説明が必要な権限レベルだが内容を理解して実施できる。

レベル3. 相談する

 彼ら(メンバー)に相談し私(上司)が決める:メンバーに提案し意見を求め最終意思決定は上司がする権限レベル。

レベル4. 合意する

 私(上司)と彼ら(メンバー)が合意して決める:上司とメンバーの権限レベルは同じで合意をもって実施する。

レベル5. 助言する

 私(上司)は助言するが彼ら(メンバー)が決める:メンバーから提案し上司はアドバイスをするだけの権限レベル。メンバーはそのアドバイスを受け入れるかなどの意思決定は任せられている。

レベル6. 尋ねる

 彼ら(メンバー)が決めた後で私(上司)が尋ねる:メンバーが意思決定したことを、上司が尋ねたときだけ説明すれば良い権限レベル。

レベル7. 委任する

 私(上司)は彼ら(メンバー)に完全に委ねる:メンバーは上司への説明や報告なく実施できる権限レベル。

 レベル4が上司とメンバーの権限レベルが同等になっています。ここを中心にレベル1では上司が権限を完全に保有し、対比するようにレベル7はメンバーが権限を完全に保有しています。レベル2と6、レベル3と5も同様に対比しています。

2. テーマをリストアップ(15分)

 下記の手順でテーマを参加者全員で考えましょう。

  1. 話し合いたいテーマを参加者全員で複数リストアップする
  2. リストアップされたテーマで具体的に何の権限に関して話し合うか共有する
  3. リストアップされたテーマに話す順番をつける
  4. デリゲーションボードの各行にテーマを順番に転記する

3. デリゲーションポーカーの開始(15~60分)

 ポーカーの手順は以下の通りになります。

手順1

 メンバーの1人が最上位のテーマを声に出して読む。また過去の具体的状況や経験談を話す。

手順2

 参加者(上司とメンバー)はどのレベルの権限をチームに与えるか、各自7つのカードからひとつ選び裏返してテーブルに出す。

手順3

 全ての参加者のカードがテーブルに出たら、まず上司のカードを公開してからメンバーのカードを公開する。

手順4

 一番小さな数字のカードと一番大きい数字のカードのメンバーが、その背後の思いを語る。最後に上司が自身が選んだカードの意図を説明する。

手順5

 具体的なシチュエーションを話題に上げながら参加者全員で議論する。

手順6

 参加者全員のカードが一致していない場合、カードを自身の手札内に戻して、再度カードを出し合って議論する。

手順7

 参加者全員のカードの過半数が一致したら、その権限レベルを参加者の誰が担当するか議論する。

手順8

 担当者をデリゲーションボードの7つのレベルに記載し、次のテーマに移動する。その後、手順1~8を繰り返す。

4. クロージング(5分)

 最後はクロージングです。運用のことに触れ、確認や見直す時期も決めておきましょう。

  1. 全テーマについて話し終えたら上司やメンバーが常に見えるところに張り出しておく
  2. 次回のフィードバックの時期を決定しておく
     a) 実際に権限委譲できているかを確認するタイミングや時期
     b) 権限レベルの見直しのタイミングや時期
デリゲーションボードの例
デリゲーションボードの例

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著者プロフィール

  • 市谷 聡啓(イチタニ トシヒロ)

     ギルドワークス株式会社 代表取締役/株式会社エナジャイル 代表取締役/DevLOVEコミュニティ ファウンダー  サービスや事業についてのアイデア段階の構想から、コンセプトを練り上げていく仮説検証とアジャイル開発の運営について経験が厚い。プログラマーからキャリアをスタートし、SIerでのプロジェ...

  • 新井 剛(アライ タケシ)

     株式会社ヴァル研究所 SoR Dept部長/株式会社エナジャイル 取締役COO/Codezine Academy Scrum Boot Camp Premiumチューター  CSP(認定スクラムプロフェッショナル)/CSM(認定スクラムマスター)/CSPO(認定プロダクトオーナー)  Java...

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