LINE DEVELOPER DAYは今年で5回目となる。6つのセッション会場のほか、ロビーでのショートセッション、ポスター展示を前にしたポスターセッション、LINEのプロダクトやエンジニアの取り組みが体験できるブース、そしてハンズオンと多様なコンテンツが用意されている。
「LIFE with LINE」を目指すLINEのデータへの取り組み
初日の基調講演では、LINE CTO 朴イビン氏より、LINEの現況とテクノロジーにおいて注力している取り組みについて紹介された。
LINEは、生活のさまざまな面をサポートする「LIFE with LINE」を目指し、約70のサービスを運営、今年だけで20サービス以上をローンチしたという。
昨年より金融サービスに力を入れ、「LINEほけん」「LINE証券」、日本向けの仮想通貨取引サービス「BITMAX」などをリリースしてきた。LINE Payも成長を続け、国内におけるユーザーは3700万人の規模だ。
LINEが提供するサービスだけでなく、他サービスとLINEを連携するためのサービスも強化されている。2019年6月の「LINE CONFERENCE 2019」で発表されたLINE Mini appは、LINEのなかに、飲食店の予約ページなどのサービスページを開設できるサービスだ。ユーザーはLINEからサービスを検索したり、企業はLINEを通じてユーザーに通知を送ったりすることができる。
さらにLINEは、これらのサービスを自然な形で提供するためにAIも重視し、朴氏は「LINEのサービスを利用しているすべてのシーンでAIがともにある」と語る。
LINEでは、AIを推進していくため、データを扱うためのふたつの原則を掲げている。
ひとつめはプライバシーファースト。プライバシーは、コストや機能以上に最優先されるべきものと掲げている。ふたつめはデータのサイロ化をなくすことだ。データのサイロ化、つまりデータソースがサービスごとに分かれるということは、非効率なうえにプライバシー面でのリスクもありうる。
このふたつの原則を実現するために取り組んだのは、異なるサービスをひとつのデータ環境で運用する「Unified Self-Service Data Platform」だ。このプラットフォームにより、人間にとってはより安全で、AIにとってはより効率的にデータを活用できるようになる。
Clovaで培ったAI技術を社外に提供する「LINE BRAIN」
続いて、LINE BRAIN室 室長の砂金信一郎氏が登場し、LINEのAIの取り組みについて説明した。
LINEのAIの活用例として、砂金氏はまず、LINEアプリ上にユーザーごとにカスタマイズされた情報を届ける「Smart Channel」について言及した。LINEでは、ユーザーがどんな公式アカウントをフォローしているかなどのユーザー行動とコンテンツから特徴量を抽出、それらを元にレコメンデーションなどの機械学習の仕組みを用意しておくことで、各サービスに組み込みやすくしている。これらの仕組みを活用したのがSmart Channelだ。
さらにLINEでは、Clovaで培った自然言語処理や音声認識技術を「LINE BRAIN」として社外に提供している。
今回のLINE DEVELOPER DAYでは、事前に登録を済ませれば、会場では顔をかざすだけで受付が済むという顔認証技術が用いられた。これは「Face Sign」という技術を用いており、サイネージや本人確認などさまざまなシーンでの応用が考えられる。
さらに文字認識技術OCRの活用例として、自動フォント生成技術も披露された。これは500文字ほどの手書きデータを読み込ませれば、自分の手書き文字風のフォントが作れるというもの。今回はデモとして、「全自動手書きレポートマシン」を自作した大学生のたむ氏の協力のもと、たむ氏の手書き文字を元にフォントを生成した。今回のコラボレーションは、たむ氏の取り組みを紹介した記事を見た砂金氏がたむ氏にコンタクトを取って実現したもので、会場にはたむ氏も招かれた。
さらに、レストランの電話予約を事前な自動音声で受ける技術「Project DUET」は、「LINE AiCall」と名前を変え、大手町のレストラン「俺のGrill&Bakery」にて実証実験がスタートした。