チームの「機動性」を高める4つのポイント
視座と考え方の「多様性」が担保されたチームで、次に必要となるのは、実際にプロダクトを作っていく際の「機動性」になる。市谷氏は、チームの機動性を高めるためのポイントとして、
- 「重奏的」な仮説検証
- 「ジャーニースタイル」のプロセス
- チームの「フォーメーション・パターン」
- 適者生存型の「アーキテクチャ」
の4つを挙げた。
「重奏的」な仮説検証とは、チームのメンバーがそれぞれに頭の中にある仮説を外在化する(他の人に分かるように伝える)段階と、検証によって生まれた共通の理解に対して、それぞれが解釈を行いながら、各自の新たな仮説を掛け合わせていく段階から構成される。
この際には、個々のメンバーに対して「他の解釈を排除することを強制しない」ことが重要だという。この過程で、POにはチームでの議論をリードしていく役割が求められる。
「ジャーニースタイル」のプロセスとは、時間やお金と同様に、チームメンバーの意識も有限リソースのひとつと捉え、到達したいテーマに適したタイムボックスを設定するやり方だ。事業の「ビジョン」だけでは遠すぎて、意識が続かない。かといって「スプリントゴール」の期間だけでは短すぎて到達できないテーマを「ジャーニー」として設計する。
「ジャーニー」の実体は、共通したテーマにかかわる複数のスプリントをまとめたものになるが、「ジャーニー」ごとに到達したい目標の言語化、定量化を行い、終了した段階でふりかえり、目的地にむきなおりながら、適宜、ジャーニーの延長(スプリントの追加)や新しいジャーニーの追加を行う。ジャーニーを構成するスプリントは固定的なものだが、ジャーニーは可変とすることで機動性を向上できる。

設計した「ジャーニー」に合わせて、チームの「フォーメーション・パターン」も可変とする。「ジャーニー」では、それぞれに到達したい目標が異なる。その実現に必要な機能を備えたチームを適宜作ることで、機動性を高めるというわけだ。
ジャーニーを進める段階で「チームで何を優先するか」「方針のうち、どの度合いを高めるか」といった、ミッション達成に必要な「ファースト」(主義)も選択する。チームの協働感を高める必要性があれば「チームファースト」、プロダクトで成果を上げることが一番に求められているなら「プロダクトファースト」、タスクの消化を最優先とする場合には「タスクファースト」といった形で名前を付けてチームで共有しておく。市谷氏は「名前を付けることによって、メンバーが今、チームに求められていることを意識しやすくなる」とする。

「適者生存型アーキテクチャ」とは、プロダクトに関する理解の深まりに合わせて、最適なアーキテクチャを選択しながら全体のプロセスを進めていくやり方だ。仮説検証で、状況、課題、解決策の何が分かったのかを明確にし、その内容に応じて「次に分かりたいこと」を考えて、それに最も適したアーキテクチャを選択するというのが「適者生存」の意味するところだ。
「適したアーキテクチャ」の選択にあたっては、仮説検証において、いかにユーザーに「現実感がある」(しかし、現実ではない)プロダクトを使ってもらい、その反応を見ることができるかを重視する。それまでの検証で「分かった」内容の度合いに応じて、次のステップで必要な要素を、「現実感が高く」「次の学習に見合ったコスト」で実現可能な状況を作れる環境が「適したアーキテクチャ」ということになる。

4つのポイントのうち「仮説検証」については、「リーン製品開発」のセットベースが基盤になっている。それに「ジャーニースタイル」のプロセスを組み合わせていることから、市谷氏は、この開発スタイルを「リーン・ジャーニー・スタイル」と呼んでいる。
不確実性が高く、正解のない中でプロダクトを作っていくにあたって、これらを意識し実践することが「ともに考え、ともにつくる」ことにつながっていくのではないかと述べ、セッションを締めくくった。
