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【デブサミ2020】セッションレポート (AD)

エンプラ企業でアジャイルを導入するには? “あるある”の失敗を回避するための傾向と対策【デブサミ2020】

【14-D-2】エンプラアジャイル導入の守破離

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 変化の激しい社会情勢において、スピーディかつフレキシブルな対応は企業の大きな課題となっている。その解決手法として「リーン」や「アジャイル開発」などが注目されているが、導入に苦労している企業も少なくない。そうした中、Pivotal Labsは世界各国でリーン&アジャイルを実践するチームの立ち上げ支援を行い、多くの実績をあげてきたという。果たしてどのように効果的なのか、Pivotalジャパン プロダクトマネージャーの安西結氏、小俣剛貴氏が、日本の大手企業におけるプロジェクトの経験をもとにアジャイル導入の傾向と対策を語った。

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アジャイル導入・浸透に有効なPivotal Labの「Lean XP」

 オープンソースのCloud Foundryプラットフォームを商用化したサービスで知られるPivotal。PaaSや開発支援ツールなどの提供だけでなく、リーン&アジャイル開発の導入支援を行う「Pivotal Labs」も提供している。その手法は、単なるコンサルテーションではなく「素早く、持続可能な形で開発する方法を、顧客企業とともに実践しながら伝授・浸透させる」というものだ。

 これを実現するためのポイントがいくつかあると、安西氏が説明した。

Pivotalジャパン株式会社 Pivotal Labs Tokyo プロダクトマネージャー 安西結氏
Pivotalジャパン株式会社 Pivotal Labs Tokyo プロダクトマネージャー 安西結氏

 1つめのポイントとなるのが「バランスチーム」だ。「バランスチーム」とは、ユーザーを理解する「デザイン」、技術を理解する「デベロップメント(開発)」、ビジネスを理解する「プロダクトマネジメント(PM)」の各役割で構成される4〜5名のチームで、それぞれの立場で視点を出し合い、協力し合った時にいいプロダクトが生まれると考えられる。

Pivotal Labsの開発体制 バランスチーム
Pivotal Labsの開発体制 バランスチーム

 そして2つめのポイントとして、「バランスチーム」を顧客企業とPivotalの両方で組織し、役割ごとにペアになって一緒に作業を行うことがあげられる。顧客側のメンバーがPivotal Labsに派遣される形で入り、4〜5か月間、同じ空間で密接にコミュニケーションを取りながら仕事を進めていくというわけだ。

 Pivotal Labsではこの手法を「Lean XP」と呼んでいる。PMは「リーン」で実装と検証を柔軟に繰り返し、デザインは「ユーザー中心設計」で行われ、そしてデベロップメントはアジャイルの一手法である「エクストリームプログラミング(XP)」を実践していく。朝会の後にペア作業に着手。ランチを挟みペア作業を継続、そして18時には仕事を終えて退社するといったシンプルなスケジュールとなっている。

Pivotal Labsの手法 Lean XP
Pivotal Labsの手法 Lean XP

失敗でトラウマに!「アジャイル“あるある”物語」を回避するために

 ここで、小俣氏から「とあるアジャイル導入体験談」として、エンタープライズでのアジャイル導入の際に“よくある”ストーリーが紹介された。

 Pivotalジャパン株式会社 Pivotal Labs Tokyo プロダクトマネージャー 小俣剛貴氏
Pivotalジャパン株式会社 Pivotal Labs Tokyo プロダクトマネージャー 小俣剛貴氏

 ある日、本を読んだり、経営者セミナーに出席したりした担当役員から「アジャイル開発がいいらしいね」とミッションが落ちてくる。それを中間管理職が引き取り、「若手チームで予算は組まずに」と勉強会から始めるよう依頼されるが、担当者はよくわからないまま、スクラムの本を読んでみたり、インターネットで他社の事例を調べてみたりしながら、「とりあえず何か作ってみよう」と始めてみる。

 しかし、本のとおりにやるのは簡単ではないことに気がつく。ユーザーリサーチや新しいツールの導入にはコストや時間がかかり、プロダクトは何をどこまで自分たちで決めて良いのかわからず、ものを作っている時間が少ない。スペースは確保してもらっているのにディスカッションが多く、周りからは遊んでいるように見えてしまう。

 そして数か月後に突然「成果を見せてほしい」と、あるウォーターフォールで開発中の部門を手伝うように言われ、アジャイルでやろうとするが、プロジェクトリーダーには「仕事は遅いし、やり方に従わないなら出ていってほしい」と怒られてしまう。そんなふうにして、社内の中でチームが潰されたり、成果が出ないまま肩身が狭い思いをしたりする……。

 まさに“あるある”なストーリーだが、果たしてアジャイルを導入し、浸透させることなどできるのだろうか。その問いに答えるのが、「プロセス・チームフィット」「プロセス・カンパニーフィット」「スケール」による導入ステップだ。つまり、チームから適応範囲を広げて、全社に浸透させていくわけである。

3つのステップ
3つのステップ

 その重要ポイントについて、小俣氏は次のように語った。

 「アジャイルチームの成熟には時間がかかるため、焦るがあまりに未熟なうちに重要なプロジェクトを任せて失敗することも少なくない。それがトラウマになることもあるため、チームを守りながら成長させていくことが大切だ。つまり、アジャイルの価値を証明して社内の信頼を獲得するまで、チームを守るコミットをする必要がある。そのためには、失敗を許容できるようなセットアップで初めて成熟に合わせて負荷をあげていく。また、会社ごとにビジネスや制度、人なども異なるため、進め方に絶対的な解はない。他社の事例をまねるのではなく、自社に合うやり方を模索する必要がある」

次のページ
チームから全社へとアジャイル開発を浸透させるための3ステップ

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