データ入力作業を大幅に効率化するAI-OCRサービス「DX Suite」、マルチモーダル対応のAIモデルを独自に作成・活用できる「AnyData」、様々なタスクを自律的にこなすAIエージェント「Heylix」――いずれもAI insideが世に送り出し、新たな市場を創造し続けるAIプロダクトだ。AI insideは、AIが企業・組織における様々な業務をサポートし、飛躍的な業務効率化と生産性向上をもたらすことを実証してきた。
「AIテクノロジーの妥協なき追求により非常識を常識に変え続ける」というミッションのもと、AI insideは、テックベンチャーによる「AI事業の成功」を体現してみせただけでなく、AI SaaS企業からAIプラットフォーマーへの進化を通じて「AIの民主化」に真正面から挑んでいる。
AI insideの独創的なAIプロダクトはいかにして生み出されるのか、プロダクト開発を担うエンジニアチームのマインドとは、そして、同社の第2創業期を支えるビジネスパートナーとは――AI insideのプロダクト開発を統括する三谷辰秋氏と、オブザーバビリティプラットフォームの業界リーダーであるNew Relicのコンサルタント 清水毅氏が語り合った。
AI insideの第2創業期と「DX Suite」の進化
――AI insideのビジネスが急成長しています。近況を教えていただけますか。
三谷辰秋氏(以下、三谷):AI insideは、2017年に提供を開始したAI-OCRサービス「DX Suite」で大きな成功を収めました。企業や自治体におけるデジタル変革の推進を妨げていた「紙ベースの書類」や「手書きの帳票類」を、圧倒的な高精度でデジタルデータ化できるDX Suiteの性能が高く評価されたものです。DX Suiteはお客様の業務フローに容易に組み込むことが可能で、AI-OCR後のデータ処理も自動化できるため業務の大幅な効率化に貢献します。
DX Suite、AnyData、HeylixなどのAIプロダクト群は、およそ2兆円規模と言われる日本の非IT系BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場をはじめ、業種・業態を問わず様々な業務のデジタル変革の推進基盤となるものです。現在、AI insideは「第2創業期」とも言える急成長期を迎えており、AI SaaS企業からAIプラットフォーマーへの転換に向けて、技術開発体制とサービス基盤の拡充を急ピッチで進めています。
――AI insideにとって、AIプラットフォーマーになることにはどのような意味がありますか。
三谷:AI insideでは『AIで、人類の進化と人々の幸福に貢献する』というパーパスを掲げ、経営トップの強いリーダーシップのもと、人とAIが協働して誰もがその恩恵を受けられる社会の実現を目指しています。「AIの民主化」は経営目標であり、AI insideが提供するAIプラットフォーム上で顧客やパートナー企業などが多様なサービス/ビジネスを展開し、エコシステムを形成してそれぞれの価値を高め合っていけるような環境を実現したいと考えています。
AIプラットフォーム上では、顧客が自社のビジネスを展開し、その先の顧客の利用体験までを担うわけですから、基盤サービスは止まっても遅れてもダメで、常に安定的に提供されることが求められます。プラットフォーマーには、社会インフラ/公共インフラを支えていく覚悟が必要です。
ですから、オブザーバビリティ(可観測性)がいっそう重要になります。現在のサービス品質はどうか、顧客のビジネスにどう貢献しているのか、といった視点でサービスレベル指標(SLI)を策定し、「AI insideヘルスページ」でリアルタイムに公開したいと考えています。自社の利益よりも顧客の利益、エコシステム全体の利益を大事に考えることが、プラットフォーマーには欠かせません。
オブザーバビリティとモダン監視は同義ではない
――オブザーバビリティは、AI insideにどのような価値を提供していますか。
清水:まず、AI insideのエンジニアが「事業視点」を持ち、まるで呼吸するように当たり前にオブザーバビリティを活用している、という事実をお伝えしたいと思います。私自身は、「日本のITエンジニアにビジネス貢献の武器としてのオブザーバビリティを提供したい」と考えて日々活動しているのですが、AI insideにはまさにそれを実践している理想のエンジニア組織があります。
「オブザーバビリティはモダンな監視のことだろう」と誤解されることも多いのですが、ユーザー体験やサービスレベルを把握するというようなモダンな監視それ自体はオブザーバビリティの一面に過ぎません。オブザーバビリティの真の価値は、監視によりシステム上で何らかの異常が起こった際にそれを通知するだけでなく、「どこで何が起こったのか」「なぜそれが起こったのか」を把握し改善できる状態を実現することにあります。AI insideでは、集約されたエラー情報からトラブルの内容と事業リスクを評価し、優先順位を設定して対処していく手順が確立されています。これにより、継続的にサービス品質の改善が可能になり、顧客のより良い利用体験とビジネスの伸長に結びついています。まさに、理想的なオブザーバビリティの実践と言えるでしょう。
三谷:ありがとうございます。AI insideのエンジニアはフルサイクル指向で、アプリケーション開発に加え、サービス監視や問題発生時の原因特定と解決も担っており、これが開発チームの負荷を高める原因になっていた時期がありました。オブザーバビリティの活用が進み、カスタマーサポートチームがダッシュボードを見て即座に状況を把握し顧客に説明できるようになったことで、開発チームへのエスカレーションを大幅に削減できました。オブザーバビリティは、開発と運用、エンジニアとビジネス、AI insideと顧客など、異なる組織間の「共通言語」となりコミュニケーションを円滑にしてくれました。
清水:「事業視点を備えたエンジニアこそがビジネスイノベーションをリードできる」というのが私の持論なのですが、しっかりとした「事業視点」を持っていることがAI insideのエンジニア組織の大きな強みではないでしょうか。開発生産性を高めイノベーションに注力するために、高いレベルでオブザーバビリティも使いこなしています。エンジニア起点でイノベーティブなプロダクトが次々と生まれているのも納得できます。
三谷:テクノロジードリブンなプロダクト開発に、AI insideの強みがあるというのは事実ですね。一方で、AIプラットフォーマーとして次のプロダクト戦略をどう具体化していくかは非常に重要なテーマですから、顧客課題やニーズの収集・分析も重視しています。たとえば、DX Suiteでは応えられない要件に対して、「仕様だから」と諦めることなく解決方法を模索し続けたところから、AnyDataのようなプロダクトが生まれた経緯もあります。