問題の解決に向けて
まず行ったのはOne Team, One Goalという言葉の共有からでした。One Team, One Goalを目指しこれから組織をどのように変化させていくのか、ボードメンバーがそのことについて確実にコミットすること、それらを実現させることができるメンバーであることを明確に丁寧に伝えました。
その後、状況が変わったことを実感してもらい「私たちは本気で状況をよくしようと思って、ベトナムまで来ている」ということを伝えるために、自分たちの判断ですぐに動かせるところから迅速に対応しました。細かい点を挙げれば枚挙にいとまがないですが、日本とベトナムの両拠点がOne Teamとなるために、特に効果の大きかった対策のは以下の9点です。
- 報告・連絡・相談を適切に行うことを徹底した
- エンジニアのキャリアパスを明確にし、どのポジションにどのような能力が必要なのかを明文化した
- コミュニケーションツールを整備しなおし、全拠点のエンジニアがSlackやBacklog、Cacooといった共通のツールを使うようにした
- プロダクトの開発分野にコミットするための人員を確保した(初年度で10名以上の追加採用)
- ベトナム拠点から本番環境へのアクセス方法の整備を行った
- 四半期ごとにプロダクト全体の責任者がベトナム拠点を訪れ、プロダクト全体の状況と今後の組織方針の説明をするようにした
- 半期ごとの人事評価を自分たちで決めたOne Team, One Goalを実現するための指標に基づいて行うようにした
- プロジェクトマネージャーが定期的に担当しているプロダクトの状態や、今後の計画を説明しにいくようになった
- プロダクトの成功が自分たちの昇給に関わってくることを改めて説明した
振り返ってみれば日本国内でエンジニア組織を運営する上でも必要なことを、ベトナム拠点にあわせたやり方で実行してきたのだなと改めて感じます。
とはいえ最初の頃は日本と同じようなやり方で進めようとした結果、そもそもの意識の違いからうまくいかないということも度々ありました。
例えば目標設定と評価の制度は、今の形にたどり着くまで何度もやり方が変化した最たるものです。当初は日本で採用しているようなフォーマットに自分の目標を入力し、期が変わったタイミングでその目標に対してどのくらいコミットできたかの評価を行うという手法を採用していました。しかしながらベトナムでそのような評価制度は一般的ではなく、組織の方針や自身のミッションに対して適切な目標設定を各メンバーが行うことは困難で、設定された目標に対するリーダー陣やボードメンバーのレビューにかかる工数が大きく、いびつなものになっていました。
その後何度かの変更を経て、One Team, One Goalを実現するために必要な項目を設定し、設定された項目に対して各メンバーがどのようにコミットできていたか、またはどのような不足があるのかを評価してスコアリングする方式に落ちつきました。
現在の開発体制
かつては日本側のプロジェクトマネージャーから仕様や設計がブリッジエンジニアに共有され、仕様や設計そのままの納品物を作成、納品物に問題があればブリッジエンジニアを通して確認をとるといったよくあるオフショアの開発体制でしたが、現在は様変わりしています。
プロダクト開発に関わる全てのメンバーが共通のBacklogのワークスペースとSlackのチャンネルに所属しており、仕様や設計に疑問があれば解消されるまでやりとりが行われ、フィードバックや確認作業も複雑な内容でなければブリッジエンジニアを通さずに直接コミュニケーションを取り、解決できるようになりました。開発に必要な技術選定に関して、ベトナム拠点側で主導して進めているチームもあります。
これはベトナム拠点だけの変化ではなく、日本のエンジニアがベトナム拠点から発信されるOne Team, One Goalという言葉に共感しそれを実現しようとしてくれたことも大きな助けになりました。強い希望のあった本番環境へのアクセスに関しても整備され、障害の発生時や各種問題の調査により積極的に関われるようになったことに加え、より深くプロダクトの運営に関わることで自分たちの関わっているプロダクトへの思い入れも深まったようです。
また、プロダクトの方向性や事業の状況についての説明を受ける時もただ聞いているのではなく、メンバーから意見や質問がでるなど、同じゴールを目指し、それを達成することが自分たちの成長につなることを認識し、自分たちが何に貢献できるのかについて考えるようになりました。新型コロナウィルスの影響でベトナム拠点の社員が出社できなくなり、急きょ全社員リモートワークを行うことになりましたが、効率を大きく落とすことなく本来の予定に沿って開発を継続できたことで、コミュニケーションの質が大きく改善され各メンバーの意識も大きく変化したことを強く実感しました。
とはいえまだまだ万全の状態とは言えず、全体の技術力の底上げなどには課題が残る状態です。エンジニアリングの知識はテクニックだけではなく概念を伝えるものも多いことから言語の違いが壁になり、継承が難しいことが目下の課題であり、まずはルールベースで対応できるところから改善することで変化を実感してもらうことから進めています。
次回は日本国内の組織の再立ち上げについて紹介する予定です。
