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[新連載]「ものづくり」とコミュニティのこれから ――FabCafeのこれまでを振り返る

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「FAB」という言葉とムーブメントの成り立ち

 「FAB」は、MITのニール・ガーシェンフェルド教授が提唱した言葉だ。彼はMITの人気講座、「How to Make (Almost) Anything (ほぼ何でもつくる方法)」を通じて、さまざまなデジタル工作マシン、センサーや電子工作、ソフトウェア、プログラミング、材料などを学び、複合的かつ横断的にモノを作る講座を体系化した。アーティストでもエンジニアでも、高校生でもリタイアした人でも、幅広いバックグラウンドの人と「ものを作ること」をシェアする。それがFABだ。

 FabLabは、ニールが提唱したFABという概念を社会に実装するために作られたプラットフォーム。それは市民に開かれた工房で、Fab憲章に則って誰もがモノを作ることができる場である。今では世界149カ国、約2,000箇所に広がっている(2020年10月現在)。

 日本で初のFabLabが鎌倉とつくばにオープンしたのは2011年5月。東日本大震災の直後であった。震災で既存の社会システムやインフラストラクチャーへの考えかたに変化が生まれるなかで、それぞれの場所で個人が自分のためにモノを作れるという視点は、いままでにないものであった。

 そんななか、2012年3月にFabCafe Tokyoが渋谷・道玄坂上にオープン。いまでは世界12ヵ所にあるFabCafeも、ここからスタートした。

 FABをもっとカジュアルに、開かれた場で触れてもらうためにオープンしたFabCafe。カフェというオープンな場に誰もが訪れることができ、場合によっては予約しなくてもデータがなくても、モノを作ることができる。もっと言えば、必ずしもモノを作らなくてもよい。コーヒーを飲みながら作っている人を眺めるだけでもいい。それがFabCafeだ。

 FabCafeがオープンした2012年、少なくともまだ日本では「FAB」やレーザーカッター、3Dプリンターはクリエイターとつながっていなかった。それらをつなげ「What do you fab?=あなたならなにをFabしますか?」というステイトメントのもとに、FabCafeが存在する各都市のクリエイティブコミュニティの結節点となることも、FabCafeのミッションであった。

技術としてのデジタル・ファブリケーション

 「FAB」という言葉は、その加工技術を指して「デジタル・ファブリケーション」と表現されることが多い。直訳すると「デジタルによるモノづくり」であり、レーザカッター・3Dプリンターといったマシンはもちろん、ロボットアームやドローンなど、デジタルな座標系によって制御され、モノをつくる技術全般を指す。

  少し古い事例だが、ドローンを使った建築工法も、デジタル・ファブリケーションの事例に含まれるだろう。赤外線誘導されたドローンが正確に建築物を作りあげている。

 デジタル・ファブリケーションに近い言葉に「コンピューテーショナル・デザイン」という言葉がある。デジタルで新しいデザインを生み出すことを意味しており、デジタル・ファブリケーションがツールや手段だとしたら、コンピューテーショナルデザインは「それで何がデザインできるかという思索」と言い換えることもできるだろう。複雑に計算されたデザインや、既存の素材とデジタル技術を組み合わせて、新たなマテリアルや物性を表現しようとする試みが続けられている。

ドイツ・シュトゥットガルト大学、コンピューテーショナル・デザインおよび建築研究所(ICD)によるBUGA Fiber Pavilion (2019)
ドイツ・シュトゥットガルト大学、コンピューテーショナル・デザインおよび建築研究所(ICD)によるBUGA Fiber Pavilion (2019)。ファイバーをロボットアームを使用して編み込みながら建材とし、新たな物性の建築をテストしている。

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https://codezine.jp/article/detail/13155 2020/11/04 08:00

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