DevNetはインフラの世界とアプリ開発の世界の架け橋
2020年2月24日、シスコシステムズは新しい技術者認定資格「DevNet認定」をスタートさせた。DevNetは2014年から同社が運営しているネットワークプログラマビリティやSDN技術を取得、サポートするためのプログラムとして始まり、今ではコーディングなどの学習コンテンツ、コミュニティ、ツールキットなどを提供するサイトに発展。現在の会員数は全世界で5万人を超えるという。
そんなDevNetという活動から、なぜ認定資格が生まれることになったのか。現在、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいる。DXはインフラだけではなく、アプリケーション、ビジネスというあらゆるレベルで抜本的な転換が必要になる。
「アプリの業界は自動化やAPIなどで効率化が進んでいますが、インフラの世界は、いったん機器を導入して設定すると、長期間そのまま利用されているケースが多い。つまりビジネスのスピードが速くなるにつれ、アプリはどんどん変化しているが、インフラがその足かせになっているように見えるのです。ですが、私たちのインフラはアプリケーションと同様、APIを提供し、自動化を積極的に進めています。これまで別々に開発、管理されていたインフラとアプリケーションの世界のギャップを埋め、架け橋を作るための活動の1つがDevNet認定なのです」
こう語るのはシスコシステムズの田川真樹氏だ。田川氏は金融業界を担当しているアカウントSEで、DevNet認定がリリースされる前からDevNet活動に従事しており、「DevNet Express」というイベントでは講師を務めた経験も持つ。DevNet認定がリリースされて以降は、パートナーにDevNet認定取得のためのトレーニングの案内などをしているという。
これまで同社の認定資格というと、ルーターやスイッチ、セキュリティ、音声・ビデオ系のコラボレーションに関する技術を問うエンジニアリング系の資格であるCCNAやCCNP、CCIEを思い浮かべる人が多い。
「現在は今回新たに新設されたDevNetに加え、CyberOpsというカテゴリーの認定資格も用意しています。CyberOpsはサイバーセキュリティオペレーションに関する知識やスキルが問われる資格です。DevNet認定は現在、アソシエイトレベル(日本語化済み)とプロフェッショナルレベル(一部日本語化済み)を展開していますが、今後はエキスパートレベルの提供も予定しています」(田川氏)
シスコが認定資格を提供する背景は、「DXを推進するエンジニアとしてすばらしいスキルを持っていることを証明するため」だという。CCIEは1993年にリリースされたが、当時はネットワークの普及により、機器の需要も高まる一方だった。そのとき機器のすばらしさを顧客に証明できても、それを設定するエンジニアのスキルや知識を証明することはできない。それを証明するためにCCIEという認定資格がスタートしたという。今回のDevNet認定のリリースもそれと同じだと言う。
DevNet認定の出題範囲とその特徴
DevNet認定の出題範囲はどのようなものなのか。出題範囲についてはシスコのサイトに詳細が記されているのでそこを見てほしい。例えばDevNetアソシエイト認定の出題範囲は、ソフトウェアの開発や設計に関するもの。「ネットワークとソフトウェアの双方の知識が必要となる」と田川氏。
その割合は「ソフトウェア開発に関する問題が90%、ネットワークに関する問題が10%」と、シスコシステムズの岡﨑裕子氏は説明する。岡崎氏は製品に特化したエンジニアとして、技術サポートに従事。担当製品は同社のネットワーク管理ツール「Cisco DNA Center」だ。さらに田川氏同様DevNet Expressで講師を務めた経験を持つ。
具体的な出題範囲は、APIの理解および活用、シスコプラットフォームおよび開発、アプリ開発およびセキュリティ、インフラストラクチャおよび自動化など。「シスコ製品の知識だけではなく、一般的な考え方の範囲が大きいという印象」(田川氏)、「ベンダーに依存していない内容も多く盛り込まれている。シスコにこだわらずに勉強できる内容になっている」(岡崎氏)が言うように、アプリ開発やインフラの知識をうまく生かしつつ、アプリとインフラをつなぐ普遍的な知識が得られる試験と言えるだろう。