7つの視点でビジョンを文章化
では、以上の現状分析を踏まえて、どうプロダクトの価値に落とし込むのか。金田氏は、素案に対してプロダクトビジョンを書き出しておくという。プロダクトマネージャーとしては自身の考慮不足を確認することになり、議論に使えば認識の齟齬を防ぐ役割が期待できる。金田氏は自身がプロダクトビジョンを書き出す時に使っている7項目(下図のカッコ内)を紹介。こうした各項目を文章化しておくことで、開発チームだけでなく経営層やマーケティングチームなどとも意思疎通をしやすくなるという。
前述のビデオデート機能のリリースでも、この7つの項目を素案で書き出したと話す金田氏。実際の機能は開発されておらず、目に見えるアプリがない状況であったが、サービスのリリース計画や経営判断、マーケティング戦略立案ができたという。プロダクトの目指す姿が文章化できているので、経営や開発、マーケティング、PRといった各プレイヤーの目指す方向がずれにくくできた。
とはいえ、プロダクトビジョンは書き出せば良いというわけではない。それぞれの立場のプレイヤー全員が共感して取り組める形に仕上げなければならないからだ。意見を集約し、実際に作れそうか検討してみないと分からないことも多い。金田氏はプロダクトビジョンを何度も書き直し、それを伝えて認識のズレを潰したり、議論を重ねたりと奔走したという。前述の「個人が力を発揮しなければならないこと」の一つが、このプロダクトビジョンのすり合わせだろう。
遠い未来は考慮しすぎない
こうした素案を作るには、将来がどうなるかを予想しなければならない。プロダクトマネージャーの役割には「『未来を想像せよ』という教えがある」(金田氏)。解像度の高い素案作りは、まさに未来を想像する作業そのものだろう。金田氏も、緊急事態宣言が発出される1週間ほど前には事態を予測し、事前に社内で開発計画に対する意見を何人かと議論していた。こうした根回しもあって、リモート主体での開発体制やサービスリリースといった活動がスムーズにできたという。
最後のコツとして、金田氏は「遠い未来ではなく、少しだけ未来を想像するといい」との考えを示した。プロダクトの5年後、10年後といった未来を考えることはあるものの、世の中の変化が早い現代では「どうなるかは分からない」からだ。極端に言えば、「やらなきゃいけないと考えていたことが、明日にもやらなくていいことになるかもしれない」という。
想像する未来が遠すぎると、組織の内部でしっかりと共有するのも難しく、予想通りにならないリスクも大きい。プロダクトマネージャーとして考えるべき未来とは、言葉にして説明すれば共有できるような、比較的近い未来で構わない。
これらは、何かを決めなければならない重責を追うプロダクトマネージャーのプレッシャーを和らげ、質の良い決定をするためのコツと言えそうだ。
