「ふりかえり」で始める、アジャイルなチームの作り方
新型ウイルス感染症の世界的な蔓延で社会や経済が翻弄された1年。これまで同じオフィス内の声を掛けられる距離にいたチームメンバーも、リモートワーク導入で今では画面の向こう側だ。メールやチャットなどのツールはあるものの、メンバーが今何をしていて何に悩んでいるのかが見えづらく、一体感も以前よりは希薄になった。このままで変化についていけるのだろうか? チームとして新たな価値を生み出せるだろうか? そんな危機感を覚える人も少なくない。
リモートワークを中心とした”ニューノーマル時代”の働き方において、変化に立ち向かうためにはどうすればいいのか。その疑問に、“ふりかえりエバンジェリスト”の森一樹氏は「アジャイルなチーム」と答える。
アジャイルなチームとは、「学び、カイゼンし続けることで、変化にも柔軟に対応でき、大きな価値を生み出し続けられるチーム」と森氏は定義する。そのためには、コミュニケーションが活発で問題が迅速に共有され、自律的に考えながら行動に移すことができ、プロダクト実現に向けて必要な知識を積極的に学ぶことができる状態を保つことが大切だ。
では、そのような状態のチームを作り出すためには何をすればいいのか。それが「ふりかえり」だと、森氏は述べる。
ここ数年、ふりかえりの重要性が認識され、やり方を指南する記事や書籍が増えている。しかし、ふりかえりを導入するための最初の一歩や定着させる方法についてはあまり語られていない。理由は、チームの状態によってベストな導入方法が異なり、定着までのステップも異なるからだ。
そこで森氏は、自分たちのチームにとっての最適解を見つけるためにも、まずはふりかえりのマインドセットを作ることを推奨する。具体的には、いま自分たちにとってどんなふりかえりが必要なのかを全員で考え、実験するように楽しく試行錯誤することだと森氏は説明する。
ふりかえりのテーマを決めるときは、誰かひとりではなく全員で話し合って決めることが大切だ。その方が、ふりかえりが定着しやすいと森氏は言う。また、実験のように新しい、面白いことをどんどん試そうというマインドセットも重要だ。「ふりかえりで失敗しても、何も痛みはない。ふりかえりの場だからこそ、どんどん新しいことを試していく。そういうふうに考えられるようにしたい」(森氏)
ふりかえりの基本的な流れ
どんなマインドセットで臨むべきか理解できたところで、続いては大まかな流れからイメージを掴もう。森氏が紹介した流れは、次のとおりだ。
- ステップ1:ふりかえりの事前準備をする
- ステップ2:ふりかえりの場をつくる
- ステップ3:出来事を思い出す
- ステップ4:アイディアを出し合う
- ステップ5:アクションを決める
- ステップ6:ふりかえりをカイゼンする
- ステップ7:アクションを実行する
事前準備では、慣れないうちはファシリテーターを決めておくと進めやすい。そして、仕事モードからふりかえりモードに切り替えられるよう、集中できる場を設ける。「仕事モードのままだと、その人の直近の問題や悩みごとに集中力をそがれてしまい、チーム全体のプロセスやコミュニケーションに目が届かなくなる」(森氏)
場が整ったら、ふりかえりの開始だ。まずは、出来事を思い出す。誰かの発言から連想されるものをどんどん声に出していくのもいいし、個々で情報を整理してから共有するのもいい。情報が共有できたら、これらに対して何ができるのか、個々で考えてからアイディアを出し合い、話し合いで深めながらまとめていく。その後、アイディアに対する具体的なアクションを決めて、最後にふりかえり自体をふりかえりつつ、互いに感謝の言葉を掛け合うなどして前向きな気持ちで締めくくる。
以上のふりかえりを何度も繰り返しながら、アジャイルなチームの状態を目指す。