アジャイルなチームに成長するための3ステップ
上記のステップを繰り返しながら、チームは次の3つの段階を踏んで成長していく。
- 立ち止まる
- チームの成長を加速させる
- プロセスをカイゼンする
最初の段階は、立ち止まることだ。仕事に忙殺され、何かに追われている状態では視野が狭くなり、コミュニケーションも滞りがちだ。そんなときこそ、勇気をもって一度立ち止まる。たとえば週1回、90分から120分、立ち止まって現状を確認する時間を定期的に設ける。
1ができたら、次のフェーズではチームの成長を加速させるために、コミュニケーションの量や質を高めて、よりよいコラボレーションの方法を模索する。目標は、ふりかえり以外の場でもコミュニケーションやコラボレーションが発生し、自発的に問題解決に取り組む状態になることだ。
特に重視するのは、信頼関係の構築だ。チームビルディングはチーム結成時に実施することがあっても、継続的に行われることは少ない。だが、チームや個人の状態は常に変化しており、価値観やスキルも変化する。ぜひ定期的にチームビルディングの時間をとっていきたい。
とは言っても、毎週1時間、チームビルディングだけの時間を確保するのはなかなか難しい。そこで森氏は、ふりかえりの時間にチームビルディングを実施することを勧める。チームとしてどうなりたいのかを念頭に、互いの価値観を共有、尊重できる関係を育んでいこう。
最後の段階は、プロセスのカイゼンだ。今うまくいっていないプロセスを見直し、うまくいっている部分を強化するフェーズだ。特に、うまくいっている部分を強化することは、チームが成長を実感し、集団効力感や自己効力感といった自信の向上につながる。もっとこうしてみようという挑戦も生まれやすくなり、チームの成長も加速する。マイナスを補うだけでなく、プラスを伸ばすという発想はぜひ取り入れてほしいと森氏は述べる。
うまくいっていない問題を解消する場合は、問題のコアの部分から手を付ける。小さな問題であればアクションにつなげやすいが、組織的な課題など大きな問題の場合は、簡単にアクションが見つからないこともある。
こうした問題は因果関係が複雑に絡み合っていて、問題を一度に解決するような真因を見つけ出すのが難しい。問題の真因を見つけるには、少しずつ変化を加えて試していくと良いと森氏は言う。「たとえば、上層部のステークホルダーと連絡をとりたいが、メールには返信がない。そんなときにはチャットを試す、その人の上司に連絡をとってもらう。そうすると反応が変わる。こうやってトライアンドエラーを繰り返しながらカイゼンしていくといい」
ふりかえりがうまくいく3つのパターン
続いて、ふりかえりを始める方法を考える。森氏の経験から「だいたいうまくいくパターン」は3つあるという。
1つは、スクラムのスプリントレトロスペクティブのように、定期的に立ち止まる場を作るパターンだ。トップダウンで定義してしまってもいい。
このパターンで大切なことは、現状を受け入れながら楽しくふりかえるようにすることだ。
「変わらなければならない、進捗を出さないといけないといった過度な期待を持たないこと。アクションが決まらなくても問題ない。実験を楽しむ気持ちで話し合う方が、ワクワクするアイディアやチームを飛躍させるようなアイディアが生まれやすくなる」(森氏)
2つめのパターンは、朝会や夕会などを利用して、簡単な情報共有から始めることだ。「たとえば朝会で、互いのことやチームの状況を知るための時間を作る。慣れてきたら、状況をカイゼンする話し合いの場を作り、腰を据えた話し合いへとステップアップしていこう」(森氏)
最後は、打ち合わせのカイゼン。朝会の時間も使えない場合は、打ち合わせや連絡会の最後に5分間に打ち合わせを見直す場を作ってみよう。ポイントは、ふりかえりという言葉を使わずに続けることだ。継続してうまく回せるようになったら、他の活動でも展開したいと切り出し、ふりかえりの場を設置する。