昨今、ビジネス用途の業務の可視化や、生産性向上のための取り組みに、Raspberry Pi(ラズパイ)を使っているというニュースを見かけるようになりました。ラズパイは、もともと教育用途で開発された超小型コンピュータで、リーズナブルな価格で入手しやすいことからDIY、プロトタイピング用途で使うものと思われがちです。しかし、ラズパイの仕様は、新しいモデルがでる度に向上しパソコン相当となっており、その出荷数の6割が産業用途です。Raspberry Pi 3から通信機能も強化され、最近ではセルラー通信を組み合わせることで「遠くのモノやコトをリモートから管理、制御する」IoT用途での利用も増えています。
どのモデルを選べばよいか? ラズパイの歴史とモデルを解説
トップバッターの日本ラズベリーパイユーザーグループ代表 太田昌文氏からは、「ラズベリーパイをはじめよう、今からでも遅くないラズパイ」と題して、ラズパイの歴史と各モデルとその特徴を紹介しました。
ラズパイは、もともと学校でコンピュータやプログラミングを学ぶことを目的に作られたシングルボードコンピュータです。学生が買える書籍一冊程度の価格、学校鞄に入れて持ち歩いても壊れない耐用性が基本思想になっています。ラズパイのパイは、プログラミング言語のPythonのパイです。
2012年2月ラズパイの最初のモデルが提供された後、新しいモデルが次々に市場投入されていきます。
最も産業用途で使われているのがRaspberry Pi 3です。1Gのメモリを搭載し、有線LANだけではなくBluetooth®や無線LAN(Wi-Fi)といったワイヤレス通信にも対応しています。また、Raspberry Pi 3は、日本国内の工場でも製造されていることから、品質も高いという評判があるそうです。
最新モデルのRaspberry Pi 4は、8Gまでメモリを搭載することができ、ネットワークはGigabit Ethernetに対応、4Kディスプレイも接続できるようになるなど、スペックが大幅に向上しました。
産業用途を考えたとき、機器への組込み向けのコンパクトなRaspberry Pi Compute Moduleも選択肢になります。メモリ(1、2、4、8 GB)、内部ストレージeMMC(なし、8、16、32 GB)、無線LANの有無を選ぶことができます。なにより、長期間の生産が約束されていることから、産業用途でも採用しやすくなっています。
初心者向けに作られた、Raspberry Pi Zero Wは、日本では1,600円程度で入手でき、フリスクケース同等の最小サイズを実現しました。あくまでお試しモデルの位置づけで購買制限があるため、大量に使う場合はピンヘッダ付きのモデル Raspberry Pi Zero WHを選択します。
先日発表され、話題になったのがキーボード一体型のRaspberry Pi 400です。日本語版の提供開始が待たれます。
文字認識に障害がある方にテキストを判別し読み上げてくれる「OTON GLASS」や、エッジでマシンラーニングを利用できるIdein社のActcastでもラズパイを使っています。海外では、複雑な計算やデータ処理を高速に実施するHPCとして使うケースもあります。
「ラズパイのコンセプトのひとつに「楽しく使える」があるとのこと、ラズパイ開発を楽しんでください」と太田氏は締めくくりました。