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産業用途で活用が進む「Raspberry Pi」の最新動向~ラズパイIoTの基礎から事業化のコツまで

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2021/06/23 11:00

目次

プロトタイピングから実用化へ、ラズパイの産業利用のポイントを紹介

 最後に、ラズパイを使った産業プロジェクトを多数手がけるメカトラックス株式会社 代表取締役 永里壮一氏から、「プロトタイピング後のジレンマをどう解決するか」をテーマに発表がありました。

 ラズパイはその製造台数のうち60%が業務用途というデータがあります(2018年時点)。安価でパソコン並みの性能を有し、加えて日本語での情報、周辺機器も豊富にそろっていることから、手軽に開発できるデバイスとしてビジネスユーザーからも注目されています。

 ラズパイは、プロトタイピングでよく使われます。プロトタイピングとは、実働機(プロトタイプ)を低コスト、短納期で制作して、実際に現場で使ってフィードバックを得て製品開発に生かすことです。製品の仕様が明確な、製品試作とは異なります。

 プロトタイピングの成功のコツのひとつめは、「目的にフォーカスして 最初から完璧に作らない」こと。何を確かめたいのかを明確にして、実装する機能/品質の優先順位を見極め、完璧な品質を求めるのではなくまずはすぐに動くことを優先します。次に、「プロトタイプを現場で使い、ユーザー(市場、現場、社内)の反応、フィードバックを得る」こと。より使いやすく継続的に開発することに意味があります。

 ラズパイでプロトタイプを開発する際に、よく聞くニーズに「どこでも簡単に設置して使えるようにしたい」があります。これは、前述のセルラー通信を用いることでクリアできます。ほかにも、「消費電力を抑えるためスリープさせたい」「アナログデータを計測したい」「電源のない屋外で使いたい」という声が多く聞かれます。これらの仕組みは自作することもできますが、高度な専門性を要するためメカトラックスが提供しているようなラズパイ専用の周辺機器を使うことで開発期間を大幅に短縮できます。

 永里氏は、「ラズパイを安定稼働させる」方法を2つ紹介しました。改善ポイントは2つ、まず「SDカードの搭載メモリの仕様に注意」すること。必ず事前にSDカードは動作テストを繰り返し、安定して使えるSDカードを型番指定で調達することが有効です。次に、「電源の安定供給」。ラズパイに周辺機器を接続すると電圧が降下して不安定になる場合があります。その際は、GPIOのピンヘッダ経由でも給電できるようにすることで、電源を強化できます。

プロタイピングから実用化に進むには

 最後に「プロトタイプは成功したものの、その先に進めない」状況をいかに打破するかについて見識を述べました。

 通常ハードウエアはある程度の量を製造しないとコストが下がりません。とはいえ、ラズパイ等を使用したプロトタイピングの後に1000個などある程度まとまった量の製造に着手するのは過剰在庫の不安からなかなか勇気がいることです。だからといって、少量製造では、現場やビジネスモデルに要求されるコストに収まらず、プロトタイピングの次のステップになかなか移行できません。

 実用フェーズで使うデバイスを少ない時間と労力で作るためには、すでにあるラズパイや周辺機器、SORACOMなどのサービスを用いて、「必要な数だけ量産する」ことが近道になります。

 メカトラックスが手がけた「河川監視システム」では、水位計とカメラで小型河川を監視し、太陽光パネルと夜間用蓄電池、セルラー通信で動かしています。ラズパイを実用フェーズでも使うことで、都度、必要な数を製作し、設置することができています。

 また、農業IoT機器のプロトタイピングから製品化までの事例を挙げ、こちらもラズパイを上手く活用することで少量製造を初回から何度も繰り返し、一度も大量製造することなく累計で数千台規模の稼働台数を誇るサービスを立ち上げていることを紹介しました。

 永里氏は、「ラズパイのエコシステムは広がっており、いまや高度なシステムも専用の周辺機器やセミオーダーで実現可能です。実用化の壁を乗り越えて、プロジェクトを成功させてください」と締めくくりました。

 本イベントの動画は以下でご覧いただけます。



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著者プロフィール

  • 株式会社ソラコム(ソラコム)

    ソラコムでは、アイディアやパッションを持つあらゆる人がIoTテクノロジーを活用できるようにする「IoTの民主化」をミッションに、IoTプラットフォームSORACOMを提供しています。デバイス通販サイト SORACOM IoT ストアでは、実績あるIoTデバイスを1個から提供、必要な機材一式と手順の書...

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