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チームの学びを“モチベーション”で科学する――学習効果を飛躍的に高めるポイントとは

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「モチベーションの公式」に沿ったプランニング

 学習の対象が決まったら、いよいよ施策のプランニングに入ります。ここで重要なのは、内発的な学習意欲を高められるように、「モチベーションの公式」に沿って企画していくことです。

 「Will」「Can」「Must」という言葉でも語られますが、人のモチベーションは「やりたい」「やれそう」「やらなきゃ」という3つが満たされた時に、最大化されると言われています。

 スキルアップ施策において陥りがちなパターンとして、以下のようなケースが挙げられます。

  1. Will膨張型(個人の希望を過度に尊重し、業務に繋がらない取り組みになってしまう)
  2. Can欠乏型(実現性や持続性が度外視され、打ち上げ花火で終わってしまう)
  3. Must偏重型(「やるべき」に重点を置くあまり、やらされ感が募ってしまう)

 内発的動機を大切にするとはいえ、「Must」の観点ももちろん重要です。「業務に活かせるかどうか」「このスキルを伸ばすことで、生産性が向上するかどうか」をまず考えるべきでしょう。

 そこに加えて、ひとりひとりが前のめりに参加できそうかという「Will」や、取り組みとして実現・持続可能性があるのかという「Can」も考慮することで、施策の効果を高めることができます。

 これらを満たすためには、チームメンバーで話し合いながら、自分たちで施策を設計するのが効果的です。各人が学びたいことや掘り下げたいテーマを出し合う中で「Will」を満たしながら、業務の状況や取り組みの負荷を検討することで「Can」を高めていくと良いでしょう。

実際にチームで取り組んだ3つの育成施策

 ここで、私たちのチームで実際に取り組んだ施策を3つご紹介します。

取り組み1:UI/UX道場

私たちのチームでは、デザイン経験が豊富で育成を担える人材が当初いませんでした。そこで、スキルアップの機会創出をパートナーの方にお願いし、「道場」と称するスキルアップ研修をゼロから企画・設計していただきました。座学でのインプットと実践トレーニングを繰り返す半年間の講座です。

実際のプロダクト開発でもご一緒している方々に企画をお願いすることで、開発組織やプロダクトの状況に合わせたリアリティのある内容を学ぶことができました。

UI/UX道場 設計の工夫

  • Will:学習内容や取り扱う題材について、参加者からも提案する。
  • Can:UIとUXを隔週で1時間ずつ実施し、業務との両立ができるボリュームに。
  • Must:実業務でのパフォーマンスやスキルレベルに応じて、コンテンツを決定。

取り組み2:輪読会

デザインやプロダクト開発に関する課題図書を決め、該当箇所を読んだうえで簡単なレジュメを持ち寄り、学びや感想をシェアするという取り組みです。毎週1時間ディスカッションの時間を設け、1冊を2週間〜4週間程度で読み進めています。あえて負荷が軽くなるように設計しているので、取り組みを始めて1年近く経った今も継続することができています。(輪読会で使用した書籍の一覧は、記事末尾に記載しています)

輪読会 設計の工夫

  • Will:それぞれが読みたい本を持ち寄り、課題図書を決定。
  • Can:読みかたやレジュメのまとめかたを自由にし、稼働状況に応じて柔軟に実施。
  • Must:デザインの古典から話題になっている新著まで、業務につながる書籍を選定。

取り組み3:デザイン雑談チャンネル(Slack)

Slack上でデザインに関してなんでもつぶやけるチャンネルを用意し、「ちょっとした学び」や「印象に残った記事」、「一緒に考えてみたいイシュー」を自由にやりとりできる仕組みです。

自分だけではリーチできなかった情報に触れることができたり、ふとした拍子に真剣な議論が始まったりと、情報収集や情報交換のハードルを下げ、手軽に楽しく学べるインフラとして機能しています。

デザイン雑談チャンネル 設計の工夫

  • Will:何を投稿してもOK。それぞれが好きなときに好きなことを投稿できる。
  • Can:ノンデザイナーでもチャンネルに参加可能で、投稿ハードルも低くする。
  • Must:デザインシステムなど、職種をまたいだアジェンダも積極的に情報交換。

 いかがでしたでしょうか。今回は、「楽しみながら学び続けるチーム」をテーマにお届けしてきました。「何を学ぶのか」、「どうすれば参加者のモチベーションを高められるのか」を考えてみることで、取り組みをアップデートできるはずです。ぜひ参考にしてみてください。

(補足)輪読会で使用した書籍一覧
  • D.A.ノーマン『誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論』
  • ジェフ・ゴーセルフ, ジョシュ・セイデン『Lean UX 第2版 ―アジャイルなチームによるプロダクト開発』
  • Stephen Wendel『行動を変えるデザイン ―心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する』
  • マーティ・ケーガン『INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント』
  • リーアンダー ケイニー『ジョナサン・アイブ 偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー』
  • ソシオメディア株式会社, 上野 学, 藤井 幸多『オブジェクト指向UIデザイン──使いやすいソフトウェアの原理』
  • アリステア・クロール, ベンジャミン・ヨスコビッツ『Lean Analytics ―スタートアップのためのデータ解析と活用法』
  • 黒須 正明『UX原論 ユーザビリティからUXへ』
  • クリフ・クアン, ロバート・ファブリカント『「ユーザーフレンドリー」全史 世界と人間を変えてきた「使いやすいモノ」の法則』
  • 木浦 幹雄『デザインリサーチの教科書』
  • 広木 大地『エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング』
  • 馬田 隆明『未来を実装する――テクノロジーで社会を変革する4つの原則』
  • 暦本 純一『妄想する頭 思考する手 想像を超えるアイデアのつくり方』
  • 前田 高志『勝てるデザイン』

この記事の続きは、「CreatorZine」に掲載しています。 こちらよりご覧ください。

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https://codezine.jp/article/detail/14288 2021/06/02 08:00

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