VRが広まった先になにがあるのか
――コロナ禍の前後で、実写VRの需要は変わりましたか?
現在のようにチームを増員した大きな理由のひとつが、まさにコロナ禍に入ったことでした。
これまでオフラインで行っていたイベントなどのコミュニケーションを、動画を活用しオンラインで配信したいというニーズがぐっと増えましたし、なかでもライブ配信の増加は顕著でしたね。オフラインのイベントなどで展開していたVRの需要が激減してしまった一方で、オンライン上で視聴するための動画コンテンツも増加しました。
また同様に、クライアントにも変化があったように感じています。エンタメ系の企業は以前から長きにわたって動画に取り組んできましたが、コロナ禍によって、いままで動画に触れる機会が少なかった業界のクライアントも増えた印象です。オンラインセミナーなどの需要はかなり増加していますし、BtoBの領域では、サービスの使いかたなどなにかを説明するツールとして動画を制作する企業も多いです。
たとえば、グローバル展開している施設を運営する企業では、スタッフに同行してもらうことなく現場の説明ができるような紹介動画を制作しました。もちろん、生の体験と比べれば情報量は少なくなりますが、2D動画の切り貼りで説明するよりはVRの方が多くの情報を伝えることができる。同様に、トレーニング分野でのVR動画の活用は非常に注目されています。なかなか再現の難しい医療の現場や、行くことのコストが高い現場などは実写VRで収録をしておいて、擬似体験してもらうことでのトレーニング効果は非常に高いと思います。
――最後に、最近のVRのトレンドや今後の動向について、見解をお聞かせください。
Oculusは、以前はFacebookが運営する専用サイトでしかデバイスを購入することができなかったですが、ビックカメラなどの家電量販店でも購入できるようになったことは、VRにとって大きな転換点だと思っています。ハードルが下がってきたことのひとつの表れではないでしょうか。
このように少しずつ敷居が下がっていくと、いまブームになりつつあるVR空間上での会議や出社などもより広まっていくと思います。
僕もVR空間上でVRに関するプロジェクトのプレゼンで、参加するクライアント企業の皆さんに1台ずつVRデバイスを送り、実際に体験してもらいながらVRのメリットを説明しました。実際に空間上に3Dモデルを出したりしながらプレゼンを進める中で、本当に会っている感じがしましたし、PCのオンライン会議よりもより多くの感情やニュアンスを伝えることもできたと実感しました。
また、今後ではありますが、物理的な実態がないから近い距離でなにかしても問題ないと考える人もなかにはいるかもしれません。それがハラスメントにつながるケースも生まれてくるでしょう。想像以上にアバターも自分の一部になるので、VR空間上にも不快な距離感があるんですよね。そういった点は、普及していく中で課題になっていくのではないでしょうか。
さらにそのあとのステージでは、VR空間上とブロックチェーンを紐付け、アバターが本人であることを証明できるようになるといったことも実現してくれば、ヴァーチャルショッピングなども実現できてきますよね。私自身もその進化を楽しみにしています。
――渡邊さん、ありがとうございました。