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クリエイターとマーケターはいかにDXを捉えるべきか 変化の本質と今後求められる視点を考える

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キーワードは「リアルタイム性」と「スケールの変化」

――クリエイティブやマーケティングは今後どのように変わっていくと思いますか?見解をお聞かせください。

先ほどお伝えしたように、キーワードはリアルタイム性だと思います。望むかどうかにかかわらず、テクノロジーはそう進化していくので、対応せざるを得ない状況になっていくでしょう。

データ活用によって企業活動は効率化できますし、KPIや収益を上げることができるのは間違いない。さらに今後、データはさらにリアルタイムで生成されていくようになるので、レスポンスが高ければ高いほど企業にとってはメリットになると思います。すでにそうなりつつありますが、その流れがいっそう加速していくと、人間の処理能力では追いきれなくなる。データの洪水というのは、まさにその表れだと感じています。

クリエイターとマーケターの連携が進む先には、今まで手で作ってきたクリエイティブをスケールさせていくことが確実に求められるようになる。クリエイティブコンテンツのスケールも、今後非常に重要なテーマになってくると考えています。つまり、今まではクリエイティブの対象が1万人だったものを10億人に広げ、さらに個別にパーソナライズしてコンテンツを提供するにはどうしたら良いのかといった視点が必要になるということです。

やはりデジタルの特徴は、パーソナライズができること。その程度によってはつきまとわれているように感じるという声もありますが本質は違います。必要とされる情報を提示することで、お客さまの労力を減らしたり、いままで気づいていなかった提案を1人ひとりにしてくれるパーソナライズは、確実に顧客体験を向上することができるのです。

そういったパーソナライズされた体験が進化していくと、今まで1万人を対象にしていたものを10億人に広げたり、3つだったセグメントを100にしたりといったことがデジタル上ではすぐに可能なんですよね。ただ、それに対応した数のクリエイティブをすぐに作れるかというと難しい。それが、クリエイティブのスケールが求められる理由です。今後でいうとそういった「スケールの拡大」も、大きな変化になるのではないでしょうか。

クリエイターが担うべき「指揮者」の役割

――「リアルタイム性」や「スケールの変化」が起こる未来に向けて、クリエイターやマーケターはそれぞれどのような視点を持っておく必要があるのでしょうか。

マーケターの方から言えば、昔のお客さまとつながる方法といえば、テレビCMなど4大マスメディアが主流でした。ですがそれにデジタルが加わることで、さまざまな選択肢が広がっています。その流れは今後も続いていくことを考えると「お客さまとどうつながるのか」というファクターに、テクノロジーが果たす役割がどんどん増していくはずです。

そのためにすべきことは、まずテクノロジーについて勉強すること。インターネットがなかった時代には、お客さまから手紙でご質問をいただいたときには、手紙でお返事を書くといったサポート業務を私も行っていましたが、今はそんなことはないですよね。お客さまとのつながりかたもテクノロジーによってアップデートされているなか、その進化を正確に把握し予測できるよう学んでいくことが、これからますます重要になっていくと感じています。

テクノロジーに関するキーワードは、日頃からアンテナを張っておくことでキャッチできるようになると思います。AIのなかにもさまざまなカテゴリーがあると思いますが、クリエイティブやマーケティングに関係しそうなものはなにかを考えることが大切です。

最近の私でいうと、興味を持っているのはブロックチェーンです。ブロックチェーンのなかにあるNFTでは、デジタルコンテンツの中に証明書のようなものを紐づけることで、その価値を担保しながら売買することも可能なのですが、そういった技術とマーケティングのシステムをつなげると何ができるか――。

たとえば写真や素材を提供するマーケットプレイス「Adobe Stock」では、1枚単位や月額制で素材を利用することができます。そのなかにブロックチェーンを組み込み、デジタルのシステムと連携することができれば、ひとつの画像がどれくらいコンバージョンに寄与したのかを把握することもできるはず。そうすると、売上に貢献した分の0.01%はクリエイターに還元するといった世界も実現可能なのではないか。いち個人としてではありますが、そんな未来も想像しています。

1人ひとりがそういった形でテクノロジーへのアンテナをはること。そして、予想した未来のために必要な技術を勉強し、かつどういったステークホルダーと関係性を構築すべきかを常にイメージしていく必要があるのではないでしょうか。

クリエイターがマーケターと一緒に果たす役割というのは、少し抽象的ではありますがオーケストラの指揮者だと思うんですよね。

マーケティングシステムやAdobe Stockのような素材など、さまざまな要素があったときに、どうやってそれを組み立てるか。そして、いかに観客である顧客の感情をリアルタイムで把握しながら満足度を得られるのか。もう少し具体的にいえば、1枚の写真をどう作るか、ランディングページをどのように制作するのかといった次元ではなく、すべてのリソースをつなげたうえで、お客さまの体験をリアルタイムで作るためにはどうするのか――。そんな視点を持ちながらオーケストラを指揮し、ひとつの演奏を最高潮に持っていくような役割が、これからは求められていくのだと思います。

そのため、それらを構成する技術を把握するべくアンテナを張っておくことはもちろん、それを体験につなげるためにストーリーを組み立てる力も重要になると感じています。

オーケストラって本当に複雑なんですよね。いろいろな役割の楽器があり、あれを譜面におこすのは気が遠くなるような地道な作業でしょう。さらに演奏者は設計図どおりにリアルタイムで音を奏で、指揮者は背中でお客さまの高ぶりを感じながらひとつのオーケストラを完結させていく。

1人ひとりの演奏者は、人ではなくなるかもしれません。アルゴリズムがその役割を担うこともあるでしょう。そのアルゴリズムの設計自体も、クリエイティブの領域のひとつになるのではないかと思います。

そうすると、こういったお客さまに対して、こういう仕掛けをアルゴリズムで作り、テンプレートと素材を組み合わせてリアルタイムで配信していく、といったパッケージを作ることも可能になるはずです。アセットの写真を取り替えてコンバージョンが上がったのであれば、アルゴリズムの閾値を少し変えるとどうだろうといった微調整のサイクルを回していく。アルゴリズムとテンプレートのベースになるもの、そこに当てはめるコンテンツなどをセットとしてAdobe Stockのようなマーケットプレイスにのせれば、世界中の企業に使っていただくこともできるかもしれません。

クリエイティブのオープンソースというのはまだ少ないですが、クリエイティブのアルゴリズムを含めたオープンソースのパッケージのなかにブロックチェーンのNFTのようなものが仕掛けられていおり、世界中のマーケティングシステムの中で稼働し、その売上の比率に応じて収益を上げていく。かなり先の話かもしれませんが、そういった世界が実現されるのではないかと個人的には感じています。

いわゆる「指揮者」になれる方々にとってもっとも重要な要素が、クリエイティブのスキルです。お客さまと共感しながらものを作ることができる素養を持った人こそが、指揮者になれる人材だと考えています。

クリエイティブが評価される時代は確実に近づいているはず。それに対する備えを、進めてもらえればと思います。

この記事の続きは、「CreatorZine」に掲載しています。 こちらよりご覧ください。

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https://codezine.jp/article/detail/15123 2021/11/01 08:00

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