ローコードの強みを活かし3つの事業を展開
今回の講演は、岩佐氏がCodeZineで手がけている連載「プロの開発者こそローコード開発ツールを活用しよう!『FileMaker』完全ガイド」の第1回記事「ローコードはITプロフェッショナルを幸せにするのか?――FileMakerエンジニアに学ぶ、ローコード開発の本質」を掘り下げる形で進められた。
同記事は公開直後から人気記事ランキングでナンバーワンを獲得しているが、「著者としては嬉しいことだが、まったく想定しなかった」と岩佐氏は語る。なぜなら、FileMakerという開発プラットフォームはIT業界ではマイナーな存在だと思っていたからだ。
「転職回数が多いので」と前置きするように、岩佐氏はITエンジニアとして、さまざまな企業で経験を積んできた。国内資本の情報システム部門で経験した後、たった1年だが地方のソフトウェア開発会社に転職。そこではシステムエンジニアリングサービス(SES)と呼ばれる多重下請けビジネスに組み込まれ、COBOLプログラマーとして従事したこともあるという。
その後、外資系企業やベンチャー企業の社内SEの経験を経て、2006年8月に娘が誕生した年に独立し、ライジングサン・システムコンサルティングを設立。そして2010年頃から本格的にFileMakerプラットフォームを活用した事業をスタートさせた。
ライジングサン・システムコンサルティングの事業内容は大きく3つ。「いずれもローコードの強みを活かせる事業であり、他のIT企業ではあまりやっていない事業だと思います」(岩佐氏)
1つ目はClaris FileMakerを用いた業務システムの内製化支援事業。このサービスでは、Zoomなどで画面共有をしながらペアプログラミングで開発支援をするライトなサービスから、プロジェクト期間が1年を超えるような、基幹システムの構築や社内開発者の育成まで、さまざまな規模の事例があり、「当社にとってメインの事業となっている」と岩佐氏は説明する。
2つ目の事業がスキル移行支援である。Microsoft .NETやJava、そのほかの一般汎用言語で開発してきたITエンジニアを、FileMakerプラットフォームの開発者としてスキルコンバートするプロセスを支援する。
3つ目の事業がプロトタイプ開発。将来的に、Webサービスやパッケージシステムとしてリリースする予定のソフトウェアのプロトタイプを、FileMakerの高い開発生産性を活かして、小予算でスピーディーに開発することで、新規事業立ち上げを支援するサービスである。コンサルティング企業のノウハウをパッケージ化する手伝いや、医療機関に特化した経営管理のシステムを、将来的にWebサービスとして展開するというプロジェクトを支援した実績があるという。このように同社の事業は、いずれもFileMakerを活用したものとなっている。
ライジングサン・システムコンサルティングの事業の核を担うClaris FileMakerというローコード開発ツールは、新しいプロダクトというわけではなく、約30年の歴史がある。開発しているのはAppleの100%子会社のClaris International Inc.(以下、Claris)だ。フォーチュン500に登場する企業の95%がFileMakerを利用しており、日本でも20万社以上の顧客が利用しているプロダクトである。「どんな企業が活用しているのか、さらに詳しい情報を知りたい場合は、Claris公式ブログを見てください」(岩佐氏)
ではなぜ、岩佐氏はFileMakerというローコード開発ツールを使うと、ITプロフェッショナルが幸せになれるというのか。岩佐氏が考えるITプロフェッショナルの幸せとは、「ユーザーから直接『ありがとう』が聞ける幸せ」「プロとしての技術力が活かせることの幸せ」「ビジネスとして十分な収益が得られることの幸せ」の3項目だ。「FileMakerの開発ならこの3項目が手に入る」と岩佐氏は話す。