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キーパーソンインタビュー

米国でIPOを達成したエンジニアが語る、技術者からCTOへの道――HashiCorp共同創業者兼CTO Armon Dadgar氏インタビュー

CTOに至る各ステップで、Dadgar氏が重視したことは

 Dadgar氏は共同創業者のHashimoto氏とともにCTOを担当していたが、2021年8月にHashimoto氏はエンジニア職に戻った。Dadgar氏は組織のリーダーとして製品ロードマップや事業のプランニングに時間を多く費やし、Hashimoto氏は自分の手でコードを書き、ソフトウェア開発に注力している状況となっている。

 Dadgar氏は、「CTOの役割というのは会社によってかなり違いますので、一つの定義に収まるものではないと思います。大きく分けると、外向き・内向きがあります。外向きのCTOは顧客やパートナーやユーザー等と積極的にやりとりをします。内向きのCTOは製品チームの運営を担当します。私の場合はその2つが混ざっていますが、CTOの役割によって必要なスキルセットは変わります」と説明し、CTOに至るまでのステップで意識すべきことを聞いた。

 最初のステップで、一人の開発者がチームを率いるチーフエンジニアになる際のポイントについてDadgar氏は、リーダーシップのスキルを学ぶことが大切だとした。チームとして開発をしていく以上は、リーダーやコーチが必要となり、アーキテクチャーを一人でデザインするのも難しいため、たとえ管理職でなかったとしても、チームの力を引き出さねばならない状況が訪れるからだ。

 リーダーになって徐々に自分の手で行っていた仕事をほかのメンバーに任せてサポートする立場に変わっていくと、次の段階ではプロダクトやセールスのマネージャーと多くの時間を過ごして顧客の視点を知ることが重要だ。そして、次のステップはプロダクトマネージャーになることだ。

 「組織を大きくしていくには、エンジニアの目からは見えないような、マーケティングや営業、サポートなどのメンバーが組織に対してどんな貢献をしているのかを理解しなければなりません。エンジニアの仕事だけをしていると難しいかもしれませんので、プロダクトマネージャーになることができればそういった人たちとの接点ができるようになります」(Dadgar氏)

 Dadgar氏のようにプロダクトマネージャーからチーフセールスエンジニアへと歩むステップは、日本の一般的なエンジニアのキャリアでは少ないかもしれない。エンジニアはどちらかというと顧客からは遠い場所で仕事をすることが多いからだ。

 Dadgar氏は、だからこそ、プロダクトマネージャーの経験は重要だとし、「エンジニアはテクノロジーやアーキテクチャーに対してエキサイトしがちです。しかし顧客は自分のビジネスの課題をどう解決できるかを知りたいです。ですから、視点を変えていくのはとても重要なのです」と語った。

IPOまでの3つのフェーズと、スタートラインとしてのOSSプロジェクト

 HashiCorpは2021年12月に株式上場を達成した。Dadgar氏は、そこに至るまでの8年間には3つのフェーズがあったと述べた。

 1つ目は、自分たちがやっていることに意義があるかを確かめるフェーズ。市場にはさまざまなテクノロジーやサービスがあるが、顧客にとって意義のあるプロダクトを提供しなければならない。2つ目はプロダクトを市場に受け入れてもらうフェーズ。製品の価値を顧客に理解してもらって、機能や価格を設定し、安定的に繰り返し販売できるようにする。3番目のフェーズは、規模の拡大だ。IPOには少なくとも売上1億ドルが必要で、HashiCorpはそれを成し遂げた。

 IPOに至るまでに一番苦心したことについてDadgar氏は、2016年にCEOとして、テック業界のビジネス経験豊かなDave McJannet氏を迎え入れたことを挙げた。McJannet氏は、HortonworksやVMwareなどでマーケティングに携わり、事業を拡大してきた経歴を持つ人物だ。この決断についてDadgar氏は、「自分の会社の権利を他人に渡さなければならないという点に悩みましたが、組織の構築とエンタープライズ系の顧客にセールスするための専門家の力が欲しかったのです」と振り返った。

 HashiCorp にとってもDadgar氏にとってもIPOは最終目標ではない。Dadgar氏は今後もプロダクトの成熟化や新しい製品の開発に注力していくとした。最後に、起業を考えたりCTOを目指したりしているエンジニアに対してのアドバイスを求めると次のように語った。

 「『いつか起業しよう』『今は準備段階だ』と考えている人もいるかもしれませんが、何事も完璧なタイミングというのはありません。だから今すぐ始めることです。水泳を学ぶことといっしょで教科書を読んでもだめで、腹を括って飛び込まなければならないのです。始めるには、オープンソースのプロジェクトがいいでしょう。今の仕事を続けながらできますし、プロジェクトを通じて、お客様とのやりとりやリーダーシップを学べます。そうやって力と自信を身につけて起業してください」

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

小林 真一朗(編集部)(コバヤシシンイチロウ)

 2019年6月よりCodeZine編集部所属。カリフォルニア大学バークレー校人文科学部哲学科卒。

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