学生時代からアウトプットを続けている崎原氏が語るアウトプットの大切さ
崎原氏は大学の情報系学科で学び、2021年にアクセンチュア株式会社に新卒で入社した。現在はクラウドインフラエンジニアとして、AWS上のアプリケーション環境の設計、構築、運用に従事しており、2023年にはJapan AWS Jr. Championにも選出された。趣味は、Go言語を用いて得た知見を記事にして投稿することや技術イベントへの登壇だ。崎原氏は仕事とプライベートの両方で、アプリケーションとインフラの両面に通じるエンジニアを目指し、日々努力を重ねている。
講演の冒頭で崎原氏は、「突然ですが、アウトプットって普段していらっしゃいますか?」と尋ねた。多くの人が「発表するネタがない」と感じたり、忙しい日々の中で外部に発表する時間を作ることに難しさを感じたりするかもしれない。崎原氏自身も発表のテーマ探しに困ることや、仕事後の疲れで作業を行えないことがあるものの、意識的にアウトプットを行うよう努めていると強調した。
崎原氏はこれまでのアウトプットの歴史を紹介した。公式な場では、主にAWSインフラに関する内容を発表している。初めての発表はJAWS-UG(AWS Users Group – Japan)のLT会でのIAMポリシーのAssumePolicyに関するもので、その後CloudNative Security ConferenceでTerraformのセキュリティについて、またHashiCorpのカンファレンスで「ベストなTerraformディレクトリ構成」について、そしてJAWS-UGにてAWSのIaCツールを使用した監視ダッシュボードに関する発表を行っている。
学生時代からすでにハンドルネームを使用して発表も行っており、Goに関するロングセッションやLT、JAWS-UGの支部での登壇などがある。また、技術記事投稿サイトにGoやAWSの記事を多数投稿し、技術同人誌即売会での単著や共著の書籍の執筆、商業出版に至った作品もある。
崎原氏は、「初めて自分のアウトプットを一覧にしてみて、パワポのスライド1枚分の成果物が溜まったことが感慨深いです」と語った。これらの成果物は、当時崎原氏が抱いていた思いや苦しみ、そして得たものがすべて詰まっている。
4つのフェーズに分かれる、これまでのアウトプット歴
崎原氏がアウトプットを行ってきた時期を分類すると、4つのフェーズに分かれる。フェーズ1はエンジニアを志し、就活をして内定を得るまでであり、フェーズ2は内定者時代である。フェーズ3は大学卒業後、社会人として研修を終え、現場に投入されるまでの期間で、フェーズ4は研修を終え、実際に働き始めた時期だ。
崎原氏は中学・高校を普通科で卒業し、大学では工学部の情報系学科に進んだ。大学での教育は主に数学と理論に基づいており、C言語で有名なアルゴリズムを書く程度の授業が中心だった。このため、大学卒業時にはコンピュータの基本的な知識も不足していた。
ITの基礎知識もほとんどなく、サーバーにログインすることすら知らなかった。大学の授業は主に標準入力からのデータ処理に限られていたのだ。大学3年の秋に転機が訪れる。
DjangoというPythonのWebアプリフレームワークを使ったことでエンジニアとしてのキャリアを志すこととなったのだ。しかし、実績がないために就活は困難を極めた。インターンの機会にも恵まれず、仕方なく自分で学び、作ったアプリのURLを就活のエントリーシートに記載することになった。さらに、他にもなにか成果物を作りたいとの思いから、アプリ作成時に得られた知見を技術記事としてまとめるようになり、これが執筆を始める動機となった。また、既存の技術記事が初学者にとって理解しにくいことも執筆の動機の一つとなった。
崎原氏はアクセンチュアに内定し、卒業後の職を確定させることができた。就活が終わり、働き始める前のモラトリアム期間がフェーズ2だ。この時期は義務感から解放され、自分の興味に基づいてGo言語やAWSを使ったインフラ構築に取り組んでいた。
この時期のアウトプットの主な動機は、初学者にわかりやすい記事が世の中にないため自分で書きたいということに加え、試行錯誤や学んだ内容のサマリーを外に出すことで他人からのフィードバックを得たいという願いがあった。学生で技術に興味を持つ同僚や同好の士が周りにいない環境であったがゆえ、自作の内容がベストプラクティスに沿っているかのアドバイスを身近な場所で得ることが難しかったためである。
フィードバックを受けることを望みながらアウトプットを続けた結果、技術者コミュニティと繋がることができ、フェーズ3に至る。崎原氏はGo言語のコミュニティに参加し、ハンズオンや技術同人誌の執筆、LT登壇などを通じて新たな形のアウトプットを始めた。
投稿する記事について技術者コミュニティからは「いい記事だね」「いいまとめだね」「これは誰も書いてなかった」といった肯定的な反応を多く得ることができた。自分の活動に対するフィードバックを得る目的は達成されたのだ。これにより彼女は自信を得て、初学者や中級者向けの技術記事を書くことが自分のミッションであると感じるようになっていった。
崎原氏はコミュニティ活動を行いながら大学を卒業し、アクセンチュアに就職した。新卒研修を終えて現場投入を迎えることで、フェーズ4に入った。趣味とは異なり、仕事としてITエンジニアリングに向き合う必要が出てきた。
仕事では明確な課題解決が必要であり、そのための切迫感が個人開発とは異なる。コンサルティング会社では、課題解決のためのプロとしての助言が求められる。ただ作業を行うだけでなく、その結果から何が学べるかを考える必要がある。また、自分たちだけでなく業界全体を見渡す横断的な視点も求められるようになった。
「明確な課題感があることは、記事の知見がなぜ求められているのかという動機の厚みを増しますし、記事の結論が普遍的で現場横断的な知見になることも良いことです。アウトプットが大好きな人間として、エンジニアとしてコンサルティング会社で働くことは、意外にも居心地が良いと感じています」(崎原氏)
アウトプットする時に大切なこととは
普通科の高校を卒業後、大学では数学寄りの情報系学科で学んだ崎原氏は、専門的に王道のコンピュータサイエンスを学んだ人々に対してコンプレックスを抱いていた。しかし、アウトプット活動によって初学者と中級者の橋渡しというニッチな領域での活動を通じ、自分の道を見つけることができた。
好きなこと、得意なこと、世間が必要とすること、稼げることの四つが重なる領域が自身の生きがいにつながる。未経験エンジニアとしての道を歩み始めて4年、崎原氏にとっての四つがすべてそろった。好きなことは技術であり、得意なことは初学者と中級者の橋渡し、その能力を生かして世間が必要とする仕事をして稼いでいる。
アウトプットを重ねる中で、崎原氏の考えや動機、ミッションは変化していった。直面する課題や困難に対して頭を悩ませながら解決策を見つけ出し、それを他人に共有し、反応やフィードバックを得ることは大きな励みとなる。また、そんな経験から現在世の中が何を必要としているのか、自分が今後何をすべきか、何を学ぶべきかを考える機会が得られる。課題に直面し、それを解決する過程を繰り返すことで、エンジニアとしてのスキルを築き上げてきた崎原氏は、このプロセスを今後も続けていく。
近年ではChatGPTに技術解説を求めたり、DeepLで英語の公式ドキュメントを翻訳したりできるため、単に実行したり翻訳したりするだけの成果物の意義は減少していくだろう。崎原氏はこれからの人間によるアウトプットには「強い目的やメッセージ性が求められるようになる」と語った。
崎原氏自身も、自分が作るものにメッセージ性があるかどうか、何を成し遂げたいか、何を世の中に訴えかけたいかを考えてきた。今後もアウトプットを続け、大きなカンファレンスに登壇するような知見を得たいと考えている。さらに自身の価値を高め「崎原さんにお願いしたい」という個人指名を得られるようになりたいと思っており、「GoとAWSに興味のある方、登壇依頼などのお誘いをお待ちしております」とアピールした。
講演のあと、受講者からの「私もエンドレスにわからないことを調べている状態にある」といった意見に対し、「目標を見失わないために、情報を効率的にまとめるスキルを身につけることが重要です。このスキルは記事執筆時にも役立ち、社会生活において有用です。わからないことを調べ、理解する過程でこのスキルを確立することが、将来的に助けになります。頑張ってください」と助言した。
そして最後に改めて伝えたいこととして「ただアウトプットをするだけじゃなくて、なぜ自分がそうするのか、それをすることで何を得られるのかを今一度考えてほしいです」とコメントした。
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