1年未満で開発された「THE FIRST TURING CAR」その特長とは?
ファースト・チューリングカーは、レクサスRXをベースにチューリングが開発したAI自動運転システム、白線や前走車を読み取るカメラ、及びそれを可視化するディスプレイを搭載した車である。2023年1月20日から1台限定で販売を開始し、3月にエンドユーザーに納車した。
チューリングのAI自動運転システムの特徴は、これまで人間が行ってきた運転動作をAIが行うアプローチとして採用していること。フロントガラスには人の目と同じようにカメラを2台設置。それらのカメラが読み込んだ画像データから白線や前走車をAIが検知、判断し、アクセルやブレーキを踏んだり、ステアリングを回したりなど車両を操作する。また新たに搭載されたディスプレイには、カメラで取得した映像データにAIが推論した経路をオーバーレイする形で表示される。
ファースト・チューリングカーでは、開発期間が1年未満と短かったこともあり、実際の車両の制御についてはレクサスRXに装備されているADAS(先進運転支援システム)を利用することにした。チューリングの自動運転システムが行うのは、検知と判断のみ。「最初は外装や内装もオリジナルに仕上げるという構想もありましたが、ミニマムな形で仕上げることになりました」(渡邉氏)
チューリングのAI自動運転システムで採用した技術スタックは、OSにLinux、言語にC++とPython。「スマホアプリやWebサービスの開発に携わってきた私には結構身近な技術。車載だからという特別感はなく、一般的なアプリケーション開発という感じがしました」と渡邉氏は言う。またディスプレイに映し出すユーザーインターフェース(UI)の開発についても、「一般的なUIの開発と何も変わらない」と渡邉氏はいう。
使用する技術などには違いはないが、Webサービスやスマホアプリの開発と大きく違う点が1点ある。それは「搭載する小さな計算機の性能で本当に動くのか、電力の消費は大きくないか、そのようなハードウェア感覚を持つことです」と渡邉氏。特にEVでは、バッテリの持ちが課題となっている。省電力なプログラムにするかは、ソフトウェアエンジニアの力の見せ所と言える。