WorkRequestへの設定
先述の通り、from()メソッドにより生成されたWorkRequestオブジェクトは、何も設定がされていないデフォルトの振る舞いを行います。次に、このWorkRequestの設定方法を紹介します。
WorkRequestへの設定にはビルダーが必要
WorkRequestに設定を行う場合は、生成したWorkRequestインスタンスに直接設定を行うわけではありません。代わりに、以下の手順となります。
- WorkRequestのビルダーを生成
- ビルダーに設定
- WorkRequestを生成
この手順で行ったコードサンプルは、Javaならばリスト9、Kotlinならばリスト10のようになります。
OneTimeWorkRequest.Builder workRequestBuilder = new OneTimeWorkRequest.Builder(CountUpWorker.class); // (1) workRequestBuilder.addTag("DelayedWorker"); // (2) workRequestBuilder.setInitialDelay(5, TimeUnit.SECONDS); // (2) WorkRequest workRequest = workRequestBuilder.build(); // (3)
val workRequestBuilder = OneTimeWorkRequestBuilder<CountUpWorker>() // (1) workRequestBuilder.addTag("DelayedWorker") // (2) workRequestBuilder.setInitialDelay(5, TimeUnit.SECONDS) // (2) val workRequest = workRequestBuilder.build() // (3)
以下、順に説明していきます。
1. WorkRequestのビルダーを生成
(1)が該当します。これは、Javaの場合は、OneTimeWorkRequest.Builderインスタンスの生成コードです。その際、from()によるWorkRequestインスタンス生成の時と同様に、リスト9のように、引数としてワーカークラスを渡します。
一方、Kotlinの場合は、リスト10のように、OneTimeWorkRequestBuilderインスタンスとなります。また、ワーカークラスの指定は、引数ではなく、ジェネリクスの型指定として行い、引数はなしとします。
2. ビルダーに設定
(2)が該当します。表1のWorkRequestのビルダーのメソッドを利用して、設定を行っていきます。
メソッド | 概要 |
---|---|
addTag | タグ文字列を設定 |
inputData | ワーカーで利用するデータの設定 |
setInitialDelay | ワーカーの開始タイミングを設定 |
setBackoffCriteria | リトライに関する設定 |
setExpedited | 重要度の高いワーカーの設定 |
setId | IDを設定 |
これらのメソッドのうち、リスト9とリスト10では、タグ文字列の設定のaddTag()を利用しています。このメソッドでタグ文字列を設定しておくと、ワーカーのキャンセルなどを行う際に、このタグ文字列でのワーカーの検索が可能となります。
また、同じく、setInitialDelay()も利用しています。このメソッドでは、ワーカーの開始を遅らせる設定が可能です。設定方法は、第1引数に数値を、第2引数に第1引数の数値の単位を指定します。リスト9とリスト10では、第1引数が5、第2引数がTimeUnit.SECONDSとなっているので、ENQUEUED状態になってから5秒後にワーカーが開始される設定となります。
その他のメソッドのうちいくつかは、次回以降紹介する予定です。
3. WorkRequestを生成
(3)が該当します。各種設定が行われたビルダーに対してbuild()メソッドを実行することで、WorkRequestインスタンスが生成されます。あとは、from()で生成したWorkRequestインスタンスと同様に、WorkManagerのenqueue()に登録を行います。
なお、ここまでの手順を、メソッドチェーンを利用して、以下のようなコードを記述することも可能です。
WorkRequest workRequest = new OneTimeWorkRequest.Builder(CountUpWorker.class).addTag("DelayedWorker").setInitialDelay(5, TimeUnit.SECONDS).build();
Constraintsを利用した細かい設定
表1を見てもWorkRequestのビルダーで設定できる内容は、あまり種類がありません。代わりに、細かい設定にはConstraintsオブジェクトを使います。これは、Javaではリスト11、Kotlinではリスト12のコードとなります。
Constraints.Builder constraintsBuilder = new Constraints.Builder(); // (1) constraintsBuilder.setRequiredNetworkType(NetworkType.UNMETERED); // (2) Constraints constraints = constraintsBuilder.build(); // (3) workRequestBuilder.setConstraints(constraints); // (4)
val constraintsBuilder = Constraints.Builder() // (1) constraintsBuilder.setRequiredNetworkType(NetworkType.UNMETERED) // (2) val constraints = constraintsBuilder.build() // (3) workRequestBuilder.setConstraints(constraints) // (4)
Constraintsオブジェクトを利用する場合も、(1)のように、まずConstraints.Builderインスタンスを生成し、(2)のように、そのビルダーに対して表2のメソッドを使って設定を行っていきます。その後、(3)のようにbuild()メソッドを実行して、ようやくConstraintsオブジェクトを生成します。最終的にWorkRequestのビルダーのsetConstraints()メソッドに(3)のConstraintsオブジェクトを渡すことで、表2で行った設定が可能となります。
メソッド | 概要 | 引数 |
---|---|---|
setRequiredNetworkType | 特定のネットワーク状態の時のみワーカーを実行する設定 | NetworkTypeの定数 |
setRequiresBatteryNotLow | バッテリの充電量が充分の時のみワーカーを実行するかの設定 | boolean |
setRequiresCharging | 充電時のみワーカーを実行するかの設定 | boolean |
setRequiresStorageNotLow | ストレージの空き容量が充分の時のみワーカーを実行するかの設定 | boolean |
なお、setRequiredNetworkType()の引数として利用するNetworkTypeの定数には表3のものがあります。
定数 | 概要 |
---|---|
CONNECTED | いかなる種類でもネットワークに接続されている必要がある |
METERED | 従量制ネットワークに接続されている必要がある |
NOT_REQUIRED | ネットワーク接続は不要 |
NOT_ROAMING | 非ローミングのネットワークに接続されている必要がある |
TEMPORARILY_UNMETERED | 通常は従量制だが一時的に非従量制のネットワークに接続されている必要がある |
UNMETERED | 非従量制のネットワークに接続されている必要がある |
リスト11では、UNMETEREDを指定しています。このUNMETEREDは、通常はWi-Fi接続を指すため、端末がWi-Fiに接続している時のみワーカーが実行されるようになります。
まとめ
Android Jetpackについて紹介していく本連載の第9回は、いかがでしたでしょうか。
今回は、3回にわたって紹介するWorkManagerの初回として、WorkManagerの概説とその基本的な使い方を紹介しました。次回は、この続きとして、WorkRequestへの設定を掘り下げ、もう少し応用的なワーカーの実行方法を紹介します。