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リクルートのデータ意思決定を支える「アナリティクスエンジニア」に聞く! ダッシュボード開発の極意

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ダッシュボード開発で最も重要なこととは

 アナリティクスエンジニアの代表的な業務の一つが、ダッシュボード開発である。

 ダッシュボードは基本的に、事業の意思決定をするため、日々の事業の状況を、時間をかけずに把握するためのもの。「その後、どのようなアクションをするか、そのヒントを得るためのものだと思います」と林田氏。したがってリクルートでは経営トップ層の企業戦略の意思決定を支援するのはもちろん、マーケティングや開発などの各部署が戦術を考えていくために活用できるようカスタマイズして提供している。

 このように日々の意思決定において、重要な役割を担っているダッシュボード。どのような流れで開発を進めているのか。

 「最初にKPIの設定をします。KPIの検討において、そのKPIは本当に追うべきものなのか。事業に合っているものなのかを、データサイエンティストやデータエンジニア、アプリケーションエンジニア、PdMなどと一緒に議論しています」と新堀氏は言う。

 さらに設定したKPIに対して「それをどういう観点、どんな切り口でウォッチしたいか、KPIをブレイクダウンしてダッシュボードを作成していきます」と林田氏は言う。そのときは事業企画の担当者だけではなく、データサイエンティストと連携して、決めていくこともあるという。

 要件定義以降の開発プロセスは、「一般的なWebアプリ開発の案件と変わらない」と新堀氏。ではなぜ、要件定義の前に行われるKPI設定がそれほど重要になるのか。「KPIの設定を間違えて作られたダッシュボードはほぼ使われなくなるため」と林田氏は指摘する。そのため、さまざまな職種のメンバーを巻き込んでディスカッションするなど、泥臭いことも求められるという。

 リクルートでダッシュボードを開発するために採用している技術は、データマート作成にGoogle Cloudが提供するBigQuery。BIツールはSalesforceのTableau、Google CloudのLookerを活用することが多い。これらのツールで応えられない場合は、「データエンジニアと連携し、フルスクラッチで作ることもある」と新堀氏は言う。

使われるダッシュボードを開発するためのポイント

 せっかく作ったダッシュボードが「使われない」というのはよくある悩みだろう。使われるダッシュボードにするために、何が重要だろうか。

 ポイントは「データの質をいかに担保するか」と新堀氏は指摘する。事業企画の担当者から「データはある」と言われても、実際見てみると歯抜けになっていたり、半角と全角が混ざっていたりすることがよくあるからだ。

 次にPdMや事業企画の担当者が業務の中でどのようにBIツールを使って行くのかを、あらかじめ把握しておくことも重要だ。「チーム全員にライセンスを発行する必要がないケースもあれば、グラフにしなくてもローデータだけでよいケースもある。後者のケースであれば、BIツールではなくスプレッドシートで提供する方法も選択できる。

 ダッシュボード開発で失敗に至るケースの多くが、業務の中でどう使われるかを把握することなく、利用する従業員が求めるまま作ってしまうこと。「こんなダッシュボードが欲しいという要望に対して、掘り下げて話を聞くと、その人しか使わないということもよくあります。要件定義フェーズで、いつ・どこで・誰が・何のために使うのか、5W1H形式でしっかり詰めることが重要です」(新堀氏)

 実は、4年ほど前まではリクルートでも、ダッシュボードの開発において利用する従業員の要望そのまま開発する請負気質の体制があった。「当時は欲しいと言われたものを早くアウトプットすることを重視していた」と新堀氏は振り返る。その結果、とある事業領域のダッシュボードは、社員300人に対し、500ものダッシュボードが存在していたという。「ほぼ使われていないダッシュボードを量産していたのです」(新堀氏)

 言われたものだけを作っていると、自分たちは作業者だという認識となり、モチベーションが下がってしまっていた。しかも当時は実際に開発で手を動かすのは協力会社のエンジニアだったため、社員にはダッシュボード開発のナレッジも貯まらなかったという。だからこそリクルートではアナリティクスエンジニアという職種をきちんと定義することになったのだ。

 リクルートのダッシュボード開発のミーティングにおいて、アナリティクスエンジニアは事業の企画段階から参加する。そして、徐々にブレイクダウンしてダッシュボードの要件を定義していくという。そのミーティングには先述したように、データサイエンティストやPdM、データエンジニアだけではなく、フロントエンドエンジニアやインフラエンジニア、デザイナーなどさまざまな職種の人たちが参加。

 プロダクトやサービスの方向性を共に考え、時には、アナリティクスエンジニアが率先して「こんなデータがあるのなら、こういう指標で観た方が良いのでは」とKPIの提案をすることもある。そのためダッシュボード開発にもモチベーション高く取り組めるという。

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この記事の著者

中村 仁美(ナカムラ ヒトミ)

 大阪府出身。教育大学卒。大学時代は臨床心理学を専攻。大手化学メーカー、日経BP社、ITに特化したコンテンツサービス&プロモーション会社を経て、2002年、フリーランス編集&ライターとして独立。現在はIT、キャリアというテーマを中心に活動中。IT記者会所属。趣味は読書、ドライブ、城探訪(日本の城)。...

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関口 達朗(セキグチ タツロウ)

フリーカメラマン 1985年生まれ。東京工芸大学卒業後、2009年に小学館スクウェア写真事業部入社。2011年に朝日新聞出版写真部入社。2014から独立し、政治家やアーティストなどのポートレート、物イメージカットなどジャンルを問わず撮影。2児の父。旧姓結束。趣味アウトドア。

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