アジャイルを推進していくためのポイント
それではどうしたらいいか。よく海外文献では「チームに権限を与えればいい」という解決策が提案されることがあるが、鈴木氏は「日本ではなかなかそうはいかない。既存事業や資産を最大限活用するなら、既存組織にもリスペクトが必要です。組織を変える必要はありますが、破壊してはいけません」と指摘、次の4点を提案する。
アジャイルのリズムを決める
アジャイルのリズムを経営のリズムに合わせる。例えば四半期で成果が見えるように開発することが大事になる。具体例としては、業務調整を含む新機能のリリースサイクルは四半期ごとにし、既存機能の改善や追加は月次、ちょっとした修正などの保守は週次、緊急の障害対応は随時という具合のサイクルにする。
サービスデザインに取り組む
DXは顧客価値に注目することが大事だ。つい機能や仕様に目が向きがちだが、顧客や従業員に提供する価値に目を向けて、どのように実現するのかが本筋だ。そのため鈴木氏は「顧客体験と業務とIT機能を同時に語る」ことの重要性を強調する。モデル化することで実現性の確認をして、モデルを全ての部門で共有していくことを実践するのが大事になる。
DevOpsをちゃんとやる
DevOpsはインフラと運用のセルフサービス化であり、開発者と運用部門・インフラ部門の間をシームレスにつなげるものだ。開発者が運用部門に申請することなく、インフラ構築や運用ができるようになりスピードにつながる。開発と運用がうまく連携できていれば自動化ツールの整備も進む。
プラットフォームを整える
マイクロサービスなどモダンな手法を使うにはプラットフォームが必要になるため、新たな標準化の形を整えていく必要がある。部門ごとに個別にクラウド導入していてルールがばらばらであれば、新しい標準化の形にプラットフォームを整えていく必要がある。このプラットフォームは基幹システムとの連携の中継地点となり、基幹システムの機能切り出しなど段階的にモダナイズするための場所にもなる。
これまで述べてきた問題領域と、それに対する解決策については、Graatではエンタープライズアジャイルの問題領域として、組織レベルのアジャイルを実現するモデルを提唱している。

最後に鈴木氏は、「チームを取り巻く課題を解決するには、チームだけの問題にするのではなく、組織がちゃんと取り組むべきです。組織として課題解決しようとアプローチするようになると、いろんなことが社内で回るようになります」と述べた。意思決定サイクルから成果評価まで、組織レベルで多くの課題が存在する中、既存組織へのリスペクトを保ちながら、どのように変革を進めていくのか。その具体的な道筋を示した本セッションは、多くの参加者にとって示唆に富むものとなった。
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