「はたらくって楽しいですか?」
「はたらくを楽しく」をキーワードにした本セッション。Koheki氏は冒頭、「皆さんにも自分なりの『はたらくを楽しく』を考えてほしい」とセッションの目的を共有しつつ、「肩の力を抜いてラジオのように聞いてもらえたら」と前置きした。
Koheki氏は、2023年に新卒で入社した2年目エンジニア。学生時代は生物学を研究していたが、生物に興味がないことに気づいて大学院を中退し、「面接でボケて笑ってくれた」という理由でWorks Human Intelligenceに入社したという。
一方の佐藤氏は、学生時代から情報系のバックグラウンドを持ち、Works Human Intelligenceに入社してからは開発一筋。現在は、就労管理のプロダクト開発チームのマネージャーをしている。
二人が所属するWorks Human Intelligenceは、大手企業・公益公共法人向けの総合人事システム「COMPANY」の開発・販売・サポートと、その他HR関連サービスを提供している。同社のミッションは「複雑化、多様化する社会課題を人の知恵を集結し解決することで『はたらく』を楽しくする」だ。ビジョンの一つには「社員が成長する環境を作り、その成長にコミットし、我々が最も『はたらく』を楽しんでいる」とあるほか、バリューにも「Work fun!」を掲げている。
佐藤氏はWorks Human Intelligenceの言う「はたらくを楽しく」とは、「自社製品のCOMPANYを通じて、主に人事労務の分野で、人が時間をかけなくていいところを減らして、もっとクリエイティブなことに時間を使えるようにしたい」という思いが込められた表現だと説明した。
これに対してKoheki氏は「はたらくって楽しいですか?」と疑問をぶつける。ここから、二人の「はたらく」に対する本音トークが展開された。立場もバックグラウンドも異なる2人は、この「はたらくを楽しく」についてどのように捉えているのだろうか。
人それぞれの「はたらく楽しさ」
先ほどの疑問を呈したKoheki氏は、「はたらくを楽しく」という言葉にはピンとこないとぶっちゃけながらも、研究を辞めて同社ではたらき始めてから「顔色がよくなったね」と言われることが増えたと語る。それは「漠然とした不安からの解放がされやすくなった」からではないかと分析した。
「研究に比べて、結果だけじゃないっていうか。『こっちの方向で合ってるよ!』という過程の評価を、短いスパンでもらえるようになったのがいいのかなと。『楽しい』って単語を使うと違和感があるんですけど、はたらいて得られる良い感情やモチベーションは確実にあります」(Koheki氏)
一方の佐藤氏は、「楽しいと思える瞬間は割と多い」と語る。「自己成長や、誰かの役に立ったと感じたときは楽しい」と佐藤氏。
とはいえもともとなんでも楽しめる性格というわけではないそうだ。
「1〜2年目の頃は余裕がなくて楽しいかどうかを考える暇もなかったけれど、ちょっとずつできることが増えて、仕事を楽しむ術を考えられるようになった。自分なりの『楽しいポイント』が見えてきた気がします」(佐藤氏)
例えば、一見「何の意味があるんだろう」と思う仕事も、「この仕事を通じてこういう成長ができるはず」といった視点で考えることで、自己成長の楽しさを見出すことができるようになっていったという。
Koheki氏と佐藤氏それぞれの「はたらくを楽しく」を比べると分かる通り、「はたらく」における「楽しさ」は人それぞれだ。Koheki氏のように「楽しい」と言いきれない場合もあるが「モチベーションになっている良い感情は確実にある」。
そういった感情に至るためには、「自分なりの楽しいを見つける」こと、「はたらく中でどうやったらその楽しさを得られるかを考える」ことがポイントだとKoheki氏はまとめた。
楽しいを見つけるための「挑戦」の重要性
では、自分なりの「楽しい」を見つけるためには何をしたらよいのだろうか。二人はずばり「挑戦」だと言い切る。
「いろんな仕事を経験することで『これが楽しかった』とか、『これはちょっと嫌だった』といった気づきを得られます。そういった経験の中から『自分なりの楽しい』が固まっていくのではないかと思います」(佐藤氏)
つまり「楽しい」を見つけるためには経験が大事であり、その経験をたくさんするためには挑戦が重要だ、と佐藤氏は言っているのである。
一方、Koheki氏は「そもそも『楽しい』の前に、漠然とした不安がある」と、不安が先に襲ってくるタイプであると説明。その不安をなくし、楽しい状態に向かうために挑戦が「必要」と言い換えた。
というのも、Koheki氏の言う「漠然とした不安」とは、「できるかどうかわからないから、できない気がして怖い」というもの。そこで、挑戦して「できるかどうかわかっている」状態を増やすのだ。
「挑戦することで、自分にとって『できる』または『できない』とわかっていることを増やしていく感じです。できることはもちろん怖くないし、できないことは怖いんですが、できないとわかっているから取れる手がある。不安は不安だけど、漠然としていない不安になるんです」(Koheki氏)
佐藤氏もこの考え方には納得の意を示し、「不安が先に来る人こそとにかく挑戦してみて、そこから楽しいにつながる何かが見えてくるかもしれない」と補足した。
ここで佐藤氏が「Kohekiさんが挑戦するときに意識していることは?」と問いかけた。すると「勢い!」とこれまた言い切るKoheki氏。「私もよく(勢いで)やります」と佐藤氏も同意した。
「つまり、挑戦の最初の一歩を勢いで乗り切りましょう、ということです。例えばAWSの試験にとりあえず申し込んでおいて、後から勉強して何とかするといったやり方は、皆さんもやったことがあるのではないでしょうか」(佐藤氏)
挑戦におけるハードルは間違いなく最初の一歩にある。そこをこういった「頭で考える前に動く」「とりあえずやってみる」といった「勢い」で乗り越えることで、挑戦自体のハードルも下がっていくのだ。
とはいえ、そもそも「勢いがでない」という人もいるだろう。そこで参考にしたいのが、Koheki氏が紹介した「勢いを出すための処世術」。それは「『これ興味あるんですけど、自分できますかね?』と、判断を先輩に丸投げすること」だ。判断に不安がある人も多いが、それを先輩にお願いしてしまうのである。
「ゴーサインを出した先輩はめちゃくちゃ必死にサポートしてくれます。若手特権の乱用です」とKoheki氏は冗談めかして言った。
実は今回のセッション登壇も、二人の「勢い」による挑戦で実現したという。社内のSlackで登壇者の募集がかかっていたところ、二人とも何気なく絵文字で反応したのだ。佐藤氏は以前もDevelopers Summitに登壇経験があったため、Koheki氏の希望でサポート役もかねて今回の登壇が決まった。
佐藤氏は「前回勢いで『やります』と言った登壇の挑戦が、今回Kohekiさんの登壇のサポートにつながって、いい経験になりました。後輩の挑戦を後押しするって結構楽しい」と語り、まさに今回の挑戦から「はたらく楽しさ」を見出していた。
いつまで「勢い駆動」でいいの? 中堅の苦悩
ここでKoheki氏は「今は若手として勢いだけでなんとかなっているけれど、これから部下や後輩ができてもこのままでいいのか?」という悩みを、佐藤氏に尋ねた。たしかに、「勢い駆動で挑戦する」というのは若手の特権だと思われがちだ。
しかし佐藤氏は「中堅こそ勢いで挑戦して、若手に『勢いで挑戦していいんだよ』と伝えるべきではないか」と提言する。
中堅になりつつある佐藤氏自身も、もっと上の「ベテランの背中を見たい」と言い、「ベテランも勢いで挑戦してほしいですし、失敗の仕方みたいなのを後輩に見せてほしい」と語った。
とはいえ、失敗が許容されない状況もある。佐藤氏は「勢い駆動で挑戦するには失敗できる環境が大事」という点も補足した。
「同社ではバリューの中に『Honor the Challenge』(失敗を恐れずに挑戦する)という、挑戦を推奨する内容が含まれています。失敗を恐れなくてよい文化が根付いているので、私たちも安心して勢い駆動で挑戦してこられたのだと思います」(佐藤氏)
セッション全体を振り返って、佐藤氏は「『はたらくを楽しく』について考えてきたら、『勢い駆動の挑戦が大事』ということがわかりました。はたらくにおける楽しさは人それぞれ違います。皆さまが自分なりの楽しさを探してみようと思っていただけたらうれしいです。そのために『勢い駆動で挑戦していこう』と思っていただけたら」とまとめた。
最後にKoheki氏が「勢い駆動で挑戦しよう」という言葉を再度掲げて、セッションを終えた。