経営幹部まで巻き込み、機能廃止を決めた理由
「COMPANY」Ver.8系のコードは約7,000万行に及び、30年にわたり大手法人グループの人事労務業務を幅広くサポートしてきたことを示している。WHIの約600名のエンジニアが開発・保守を担う中、納谷氏はコードの最適化と保守性向上を重要課題と位置づけている。利用状況を踏まえた機能の見直しを進め、将来の拡張性確保と顧客価値の最大化に努めている。
利用の少ない機能を廃止するには、まず利用状況を把握することが不可欠だ。Ver.8はクラウドサービスであり、一定の応答性を満たせば製品開発者が随時データを取得できる。しかし、Ver.7以下は大半が顧客のネットワーク内に構築されており、外部と通信しないという意味で、利用状況を十分に把握できていない。 利用状況を取得するには、全ユーザーに個別確認するしかない。
顧客対応はサポートセンターと担当コンサルタントが担っているが、膨大な機能群ゆえ、どの機能を実際に使用しているかをすべて完璧に把握することは困難である。特に何千人、何万人規模の大手法人グループでは、顧客側でも各機能の利用状況を完全に把握している担当者はほとんど存在しない。これが機能廃止を進めるうえでの大きな課題となっている。
そこでWHIは2023年1月から、不要機能の削減を含む「開発力向上プロジェクト(DIP)」を開始した。CTOや経営幹部がオーナーを務める全社的な取り組みとして進められ、開発部門に加え、フロント部門の代表者も参画している。不要機能の削減が会社全体の重要な課題であることを共有しながら進行している。現状にそぐわなくなった機能を適時に廃止できる体制を構築し、製品仕様の面から保守性を向上させることを目指した。

2023年4月から、Ver.7以下の全ユーザーの利用状況データ取得が始まった。しかし、データの取得は社内の営業やコンサルタントだけではなく、顧客側にも対応を依頼しなければならない。
そこで、データ取得作業を効率化するため、利用状況収集用のSQLを募集し、データ収集の仕組みを整備した。当初はデータ取得に課題も多く、期限が大幅に遅れたものの、2024年5月にようやくすべてのデータが集まった。これにより、エンジニアや開発者がデータを分析できるサービスを整え、具体的な分析作業が可能になった。