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Developers Summit 2025 セッションレポート

組織に貢献するフリーランスエンジニアという生き方

【13-E-7】組織貢献をするフリーランスエンジニアという生き方

なぜ“正社員”ではないのか?4つの視点から語るフリーランスの利点

 フリーランスでありながら組織に深く関わるという働き方は、竹端氏にとっても最初から自然な選択だったわけではない。そこに至るまでには、自身の志向や経験に基づく変化があった。

 会社員時代、竹端氏はリードエンジニアやエンジニアリングマネージャー(EM)として、採用・技術広報・組織施策の立案・実行など、横断的なマネジメント業務に携わっていた。この時期について、「いわば“仕切る側”として動く日々が続いていた」と竹端氏は総括する。

 その反動もあって、フリーランスに転向した当初は「まずは純粋に開発者として手を動かしたい」という思いを強く抱いていた。マネジメントと開発を並行するなかで、どうしても補完的な実装に回りがちだった経験から、より深く技術と向き合いたいと考えるようになったのだ。

 そうした考えが大きく転換したのが、2021年に参画したサイカでの経験だった。当初からテックリードとしてジョインし、プロダクトマネージャー(PdM)と共に新規チームの立ち上げを主導。採用や開発体制づくり、文化の整備にも深く関わった。また、社内のエンジニア組織運営にも参加し、CTOや技術リーダーたちとともに全社的な施策を推進していった。

 そのなかで「マネジメント的な部分で評価される場面が多かった」といい、あらためて自身の適性に気づくこととなった。「自分が動かす側にいるほうが、かえってストレスが少ない」という感覚も後押しとなり、現在では自ら積極的に組織を動かす立場を引き受けるに至ったのだ。

 とはいえ、フルタイムで開発業務に携わりつつ、採用活動や技術広報まで担当していると聞けば、「なぜ正社員にならないのか」と尋ねたくなるのも自然な反応だろう。実際、竹端氏も面接の段階で「組織に貢献したい」と伝えているため、そのギャップに驚かれることも多いという。

 この問いに対し、竹端氏は「フリーランスだからこそ得られるメリットがある」とし、その特徴を4つの視点で整理して紹介する。

 1つ目は、「契約報酬の考え方がシンプル」な点。正社員の場合、有給休暇や福利厚生、各種手当などが絡んで報酬体系が複雑になりがちだ。制度の変更によって待遇が変動することもある。一方、フリーランスでは「月◯時間の稼働に対して◯円」という明確な契約が多く、成果に見合った報酬が支払われる。企業比較も単純で、判断基準が明快になるという。

制度は「いつも同じ」ではない。変化の多さが判断を複雑にする
制度は「いつも同じ」ではない。変化の多さが判断を複雑にする

 2つ目は、「入るのも辞めるのも手間が少ない」こと。正社員の転職では複数回の面接や煩雑な書類提出が必要となり、入社・退社時の手続きも負担になることがある。一方、業務委託契約であれば、面接は1~2回、書類は契約書とNDAのみで済み、クラウドサインなどの電子契約で完結する。契約は多くが3カ月更新の形式をとっており、自然に終了・移行できる点も心理的なハードルを下げている。

 3つ目は、「自由に動けて、相乗効果も生める」こと。副業や外部登壇、勉強会での活動など、正社員には制約がかかるケースもあるが、フリーランスであればそうした制限はほとんどない。竹端氏自身も、フルタイムの開発業務と並行して技術顧問を務めたり、個人として外部登壇を行ったりしているという。「一個人としてフラットに動ける自由さがある」と語る。

 また、社外で得た知見を社内に還元する動きも促しやすく、竹端氏は「必要に応じて会社の事例を発信に取り入れることで、信頼性の高いアウトプットにもつながる」と実感を語る。

 4つ目は、「気を抜けば契約が切られる可能性がある」という、いわば“適度な緊張感”だ。正社員のように守られた雇用形態とは異なり、フリーランスは常に評価の対象となる。プロジェクトの終了や予算縮小によって、業務委託から整理されるケースも少なくない。

 「一見ネガティブに映るかもしれませんが、だからこそ成長が促される。だれずに自分を磨き続けられるという点にこそ、価値を感じています」(竹端氏)

 さらに、「この人は必要だ」と思ってもらえる存在になれば、契約終了のリスクも低くなると付け加える。一方で、自身が「この現場は合わない」と感じた場合には、契約満了をきっかけに円滑に次のステージへ移れる柔軟さもあるという。

「よっぽどのことがない限り解雇されない」日本の正社員制度。安心感がある一方で成長実感を得づらいときもある
「よっぽどのことがない限り解雇されない」日本の正社員制度。安心感がある一方で成長実感を得づらいときもある

 フリーランス人材の存在は、企業にとっても少なくない価値をもたらす。外部との接点を広く持ち、企業の論理に縛られない視点から組織を見ることができる点。そして、状況に応じて柔軟に契約関係を見直せるという点も、企業にとっては大きなメリットになり得ると竹端氏は捉えている。

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自由にも責任を、安定にも戦略を

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この記事の著者

夏野 かおる(ナツノ カオル)

 博士。本業は研究者。副業で編集プロダクションを経営する。BtoB領域を中心に、多数の企業案件を手がける。専門はテクノロジー全般で、デザイン、サイバーセキュリティ、組織論、ドローンなどに強みを持つ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

井山 敬博(イヤマ タカヒロ)

 STUDIO RONDINOのカメラマン。 東京綜合写真専門学校を卒業後、photographer 西尾豊司氏に師事。2008年に独立し、フリーを経て2012年からSTUDIO RONDINOに参加。 STUDIO RONDINO Works

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CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

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