AI時代の「協働システム」と開発者の新たな役割
説明会でアトラシアン マーケティング統括マネージャーの朝岡絵里子氏は、同社が「開発者向けツール」の提供に留まらず、技術者と非技術者(ビジネス部門)が「本当に半々」で利用するプラットフォームへと進化していることを強調した。

同社が提唱する「Atlassian System of Work(協働システム)」は、組織内の異なるチームが同じ目標に向かって協力する仕組みを指す。朝岡氏は「AIに与えるデータがゴミならゴミしか出てこない」と指摘。AIが真価を発揮するには、ビジネス目標と開発タスクが連携し、社内ナレッジが活用できる基盤が不可欠であり、その基盤をアトラシアンが提供するとした。
クラウド移行と「コレクション」化でプラットフォームを刷新
この「協働システム」を実現するため、アトラシアンはプラットフォームの抜本的な見直しを進めている。
大きな影響が予想されるのは、クラウドへの完全移行方針だ。同社はオンプレミス製品である「Data Center」エディションについて、2029年3月をもってサポートを終了すると改めて発表した(BitbucketとBambooは例外)。朝岡氏は「全アトラシアンのお客様にクラウド移行をお願いします」と述べ、AI機能はクラウドでのみ提供される点を強調した。また、従来のAWS基盤に加え、新たにGoogle Cloudとのパートナーシップも発表され、プラットフォームの選択肢が広がった。
さらに、製品体系も刷新された。JiraやConfluenceは独立した「製品」から、単一の「アトラシアンクラウドプラットフォーム」上で動作する「アプリ」として再定義される。これにより、検索、ユーザー管理、そして中核となるナレッジグラフ「チームワークグラフ」が共通化される。
そして、これらのアプリはユーザーの職務ロールに応じた「コレクション」として提供される。全てのユーザーの基盤となる「チームワークコレクション」(Confluence、Jira、Loom)に加え、開発者向けには「ソフトウェアコレクション」が新たに発表された。
中核となるAIソリューション「Rovo」
新しいプラットフォームとコレクション群の全てを横断するのが、AIソリューション「Rovo」だ。Rovoはエンタープライズサーチ、チャット、AIエージェント作成(Rovo Studio)の機能を持つ。Rovoは当初上位プラン限定だったが、有償の全てのクラウドエディションで利用可能になった。
アトラシアン エグゼクティブプロダクトマーケティングストラテジスト 渡辺 隆氏は、Rovoの新たな機能「スキル」を紹介した。これは「Jiraのタスクを作成する」「Teamsにメッセージを送る」といった特定のタスクを実行する再利用可能なモジュールだ。開発者はRovo Studioを使い、これらの「スキル」をプロンプトベースで組み合わせ、ノーコードでAIエージェントを作成できる。
さらに、サードパーティのAIエージェントとの連携も強化された。デモでは、Jiraのチケット内からCanvaのAIエージェントを呼び出し、Jiraのコンテキストを渡してデザイン作業を依頼する様子が示された。渡辺氏は「ChatGPTに聞いてJiraに戻ってSlackに投げて、といったコンテキストスイッチがどんどんなくなってきている」と述べ、ツール間を横断するAI連携のメリットを強調した。
