生成AIを使った連携
最近、筆者も生成AIを活用したシステム開発に携わる機会が増えてきました。その中で、UI/UXが、高度な自然言語処理能力を持つ生成AIによって置き換えられる未来が近づいているように感じています。
大規模言語モデルの進化により、人間と自然な対話を通じてシステムを操作する可能性が広がっています。
生成AIを使った自然言語インターフェイス
特に業務システムにおいては、オペレーターやサポート窓口がお客様の要望をヒアリングしながらシステムを操作する場面が多くあります。
例えば、ある注文をキャンセルしたい場合、従来のWebシステムでは、注文履歴画面から該当の注文を探し、キャンセルボタンをクリックするなど、複数の画面遷移と操作が必要になるのが一般的です(図9左)。
しかし、生成AIを活用したインターフェースでは「注文番号〇〇〇の注文をキャンセルしてください」と自然言語で指示するだけで、システムが適切な処理を実行できる可能性があります(図9右)。これにより、利用者は画面の操作方法を熟知していなくても、容易に目的を達成できます。
MCP(Model Context Protocol)による接続
AIシステムにおいてチャットテキストの内容に応じて外部システムを実行する仕組みは、これまでも個別のAIプラットフォームが提供する独自のAPIなどを利用して実現されてきました。しかし、これらの個別実装は、AIベンダーごとに異なるAPIの形式、データフォーマットなどを理解したうえで対応する必要があり、熟練したAIエンジニアの知識が不可欠でした。
しかし、近年MCP(Model Context Protocol)という、異なるAIシステムから外部システムを共通のルールで実行するための標準化の動きが広まっています。この仕組みを利用すると、図10に示すように、先ほど例に挙げた自社ECシステムにおける「注文をキャンセルする」といった機能を、特定のAIベンダーに依存することなく、さまざまなAIシステムに柔軟に組み込めます。
図中のMCPホストとMCPサーバー間の通信プロトコルには厳密な規定はありませんが、例えば、HTTP 上で JSON-RPC や RESTful API などの既存の技術を利用してデータや命令をやり取りすることが可能です。
MCPサーバーという言葉から、特別な新しい技術を習得する必要があるイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際に利用する技術は、Web API開発などでこれまで用いられてきた技術とかなり共通しています。
また、連携の目的やシステムの特性に合わせて、ここまで紹介してきた Webhook、ESB/EAI、データフローオーケストレーションツールといった連携方式も、MCPの枠組みの中で、MCPサーバーとさらに下位のシステムを連携させるために活用できるはずです。
このように、生成AIを活用したシステムは「エクスペリエンスレイヤー」を自然言語という汎用的なインターフェースに置き換えることで共通化を促進し、より「バリューレイヤー」による本質的な価値提供に注力できる時代が到来するかもしれません。
最後に
JavaScriptを使わない時代のWebシステムでは、HTMLがクライアントであり、同時に「エクスペリエンスレイヤー」としての役割を担っていました。そして、サーバー側の実装が「バリューレイヤー」でした。技術的な制約と目的がほぼ一致していたため、非常に分かりやすい構造の中で開発を進めることができました。
一方、JavaScriptの利用が一般的になり、よりリッチな表現が利用者に求められるようになり、現在もその傾向が強まる中で、それぞれのレイヤーの境界線が曖昧になりつつあります。
そのような成長過程において、Webシステムという技術の進化とは異なる軸で普及し始めた生成AIという技術が、UI/UXを単純化する流れを生み出すかもしれないという点に、筆者は興味深さを感じています。
