「コミュニティに行ってみよう」──寺田氏が考える知識を深め、広げるために必要なこと
──Pythonは現在最も人気のあるプログラミング言語とも言われていますよね。先ほど2005年当時はWeb系の利用がメインだったというお話がありましたが、寺田さんご自身が変化を実感されたタイミングはあるのでしょうか。
寺田:2014年、2015年頃だったと思います。先のとおり、PyCon JPを2011年から開催しているのですが、このあたりでPythonをデータ分析や機械学習に使う人がものすごく増えた印象があります。
トークの内容も変わってきましたし、参加層も少しづつ変わってきました。実際に、ユーザー数も、PyCon JPの参加人数も増えてきて、データ分析ブームや機械学習ブームとPythonが融合していくように感じました。
──これだけ幅広い用途に用いられるのは素晴らしいことですね。
寺田:そのあたりを見ていくと、Pythonはいまや色々な用途に使われていて、さまざまな関係者がいて、ユーザーの多くは実は大きな変化は望んでいないんじゃないかとすごく思っています。前章に出てきた、UTF-8対応の話もそうですが、サードパーティ製のライブラリにはものすごく影響が大きいので、時間をかけてでも、しっかりと丁寧なプロセスを踏むようにしているんだなと感じます。
Python3系が出てきて、それでもまだ2系が使われているときには、3系の行われた修正が2系に取り込まれたりもしていました。すごく古いものを含めて、しっかりメンテナンスがされ続ける、そういう体制があるからこそPythonと安心して付き合っていけるのかなと思います。
──人気言語ならではの苦労があるのですね。コミュニティについても、この20年間での変化を教えてください。
寺田:過去20年での一番大きな転換点は、やはりCOVID-19だと思います。オンライン化によって、地方の人との距離感がなくなって参加しやすくなったメリットもありながら、リアルがなくなってつながりは希薄になったり、そこの転換点というのはすごく大きかったです。
それから、日本のPythonコミュニティメンバーを見ていると、グローバルで発信したり、グローバルに活躍する人も増えているなと感じています。
──日本のコミュニティには特徴があるんですね。
寺田:Python以外のコミュニティも含めると、日本のカンファレンスの開催量は人口比で見たときにめちゃくちゃ多いんじゃないかと思います。アジアで見たら圧倒的です。これは、コロナ禍が明けてからも変わっていない、むしろ増えている気がします。それから地理的な集まりやすさもあってか、日本のミートアップはレベル高いねという言葉をよく聞きます。
──ありがとうございます。それでは最後に初学者を含めたPythonエンジニアに向けて、寺田さんからメッセージをいただいてもよろしいでしょうか。
寺田:この20年を振り返ってみて、いろいろなコミュニティに支えられたというのはすごく思っています。さまざまなことを知ったり、勉強するきっかけになったり、ほとんどがコミュニティの影響でした。
先日アメリカで開催されたPyCon USに行って、何人かのデベロッパーが話す生の声を聞いたり、それを聞いていた人とその場でディスカッションしました。そういうシチュエーションが増えれば増えるほど、より深く、いろいろなものを知れるんだなと実感しました。
コロナ禍で、コミュニティの大切さが失われかけたことがありました。ただ、やはり人と人が集まって話して、同じ仲間と同じ時間、同じ空気を吸うこと自体が、人間にとって大事なことなんだろうなと再確認しています。読者の皆さんも、時間と懐が許す限り、そういうところに行ってほしいと思います。
今年のPyCon JPは終わりましたが、11月8日(土)には名古屋でPyCon mini 東海が開催されます。頑張ってちょっと参加すること自体素晴らしいことだと思いますので、ぜひ検討してみてください。
