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Developers Summit FUKUOKA 2025 セッションレポート

生成AIの本質的な課題とは? GMOペパボが語るボトルネック分析と生産性"爆増"への挑戦

【Session4】AIを導入しても、開発生産性は"爆増"していない。なぜ?

浮き彫りになった3つの課題とまとめ

 開発生産性の先行指標が4倍に増加したにもかかわらず、「爆増」と呼べるレベルに至っていない現状を受け、西田氏は「次なるボトルネックがどこかにあるはず」という視点から課題分析を進めた。

 この課題分析の前提として、西田氏は「制約条件の理論」に触れた。これは、組織や仕事のプロセスにおける全体のパフォーマンスは、「他の部分がどれだけ優れていても、最も処理能力が低い部分、ボトルネックに制限される」という理論である。

制約条件の理論について
制約条件の理論について

 つまり、インプットが100あっても、途中のプロセスBの処理能力が50であれば、アウトプットは50に制限されてしまう。このボトルネックを特定して改善することが非常に重要であるという認識から、開発プロセスにおけるボトルネック特定のための情報収集が開始された。

 開発メンバー(エンジニア、ビジネス職、デザイナーを含む)へのアンケートやヒアリングを重ねた結果、ボトルネックとして疑わしき箇所として以下の3点が浮上した。

  1. CIの実行時間が非常に長い
  2. 品質保証に時間を要している
  3. 要件定義に時間を要している

1. CIの実行時間が非常に長い

 ボトルネックとして最初に特定されたのは、CIの実行時間が非常に長いという問題であった。GitHub Actionsの実行時間が集計された結果、「明らかに遅いCI」が判明した。

集計結果から遅いCIが特定
集計結果から遅いCIが特定

 これを受け、ボトルネック解消のための「CIの改善」が実施された。しかし、この大幅な時間短縮にもかかわらず、その後の開発生産性の先行指標であるPRマージ頻度のグラフには、改善による明確な変化は見られず、効果を正確に評価するには「もう少し長いスパンで見て観測する必要がある」と述べた。

2. 品質保証に時間を要している

 2つ目のボトルネックとして挙げられたのは、品質保証に要する時間であった。当時の業務プロダクトは、複数システムの連携が求められるユースケースが非常に多いため、リリース前には必ず全体を通したE2Eテストが必要となっていた。このE2Eテストに人手を要していたため、ボトルネックと疑われた。

 対応として、時間の正確な計測は困難だったものの、ボトルネックの可能性が高いと判断し、現在はPlaywrightを用いた自動テストの導入を開始している。

3. 要件定義に時間を要している

 3つ目のボトルネックは、要件定義に時間を要している点、つまり作るものを決めるのに時間がかかっていることであった。

 アンケートの結果、開発したいことは多くあるものの、そこから要件を整理し、関係者の合意形成を経て実装着手できる状態にするまでが重いということが見えてきた。この課題への対応は正直まだできていない状況だが、今後は業務の棚卸しと、一つ一つの業務のAIによる自動化を視野に入れつつ活動を進める計画である。西田氏は、この領域は先行事例が見つからないことから、これからの領域ではないかという見解を示し、引き続き対応していく姿勢を見せた。

 最後に講演の総括として、西田氏は「AIコーディングエージェントの活用で開発生産性は向上しますが、早期に頭打ちになってしまうようです。なので、ボトルネックを特定し、解消していきましょう」という言葉でセッションを締めくくった。

 AIの導入は生産性向上のきっかけになるが、真の「爆増」を実現するためには、AIが大量にコードを生成しても耐えられるよう、開発プロセス全体の最も弱い部分(ボトルネック)を見つけ、人間がそれを解消していくことこそが重要であるという、本質的なメッセージを残した。

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この記事の著者

CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

小玉 莉子(編集部)(コダマ リコ)

 2022年に新卒で翔泳社へ入社し、CodeZine編集部に配属。 公立はこだて未来大学情報アーキテクチャ学科卒。

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