AIエージェント経由でも消費者体験は維持できるのか。事業者の懸念と対策
エージェンティックコマースの導入にあたり、販売事業者からは主に4つの要望があるという。
1つ目は、新しい販売チャネルへの積極的な参入だ。ChatGPTに限らず、Geminiなど他のプラットフォームも含めた新市場を掴みたいという意向である。しかし、ストライプの既存製品を使っても、実装には6~12か月ほどの期間を要することが課題である。
2つ目に、AIエージェント経由でもブランドイメージを維持したいという要望だ。生成AI上で販売しながらも、単なる配送業者になるのではなく、自社のブランドイメージを確立したいという販売店が多い。
3つ目は、顧客との関係維持である。ゲストとして流入する顧客に商品を売るだけではなく、ブランドのロイヤリティを高めたいという希望がある。
4つ目は、不正対策への要望だ。AIエージェントのセキュリティや安全性に対し、依然として慎重な見方もある。
販売事業者の要望の一方で、AIエージェント側(プラットフォーム側)からもさまざまな要望が挙がっている。「数千万の加盟店を一気に登録したい」「商品の責任やリスクは負いたくない」「決済成功率を高めたい」「管理の手間を軽減したい」といった要望が寄せられている。
これらの要望を受けて、ストライプでは以下の領域に注力して製品開発を行っている。
「これからは個人もAIエージェントを持つ時代です。ヒト対AIエージェントはもちろん、AIエージェント同士の取引にも関わっていきたい。AIエージェントが商品カタログに容易にアクセスできる環境を整えることも重要です。また、人間ではなくマシンが処理することを前提に製品を開発します。さらに、今後何倍にも決済ボリュームが増加するなかでも、不正が入り込まない仕組みの構築に注力しています」(安部氏)
さらにストライプでは、AIエージェントの代わりに販売店の登録管理を行い、商品カタログや在庫情報の管理も担う。販売店側は、個別にAIエージェントの登録が不要で、不正対策も組み込まれた決済を利用できる。最終的には加盟店(販売店側)に顧客情報を渡し、ロイヤリティの向上にもつなげられる仕組みを目指している。

エージェンティックコマースを支援する新製品「ACS」とは
こうしたストライプ社の志向をすべて具体化し、2026年1月にリリースされたのが「Agentic Commerce Suite(ACS)」である。ACSを導入することで、複数のAIエージェントを通じたエージェンティックコマースを実現できる。
ユーザー体験自体は、先述のACPとSPTを利用した、ChatGPT上のエージェンティックコマースと同様だが、販売事業者とAIプラットフォームの要望をかなえつつ、複雑性を解消している点が大きな強みである。

ACSを使えば、「最短1週間でセットアップを完了し、販売を開始できる」と安部氏は語る。
利用手順は、まずStripeアカウントを作成して、税金を設定する。そして、Stripeに商品カタログデータをアップロードする。このデータは、API経由で商品が売れるたびにアップロードすることも可能だ。その後、注文のフルフィルメントを準備し、最後に商品を掲載したいAIチャットエージェントを有効化すれば完了する。
安部氏は、実際にACSのダッシュボード画面を示しながらデモを行った。販売を行うAIエージェントの選択から、商品カタログのアップロードまで、わずか数十秒で完了する様子が披露された。

