KPIは下がらなかった。段階リリースと全社連携が守ったユーザー体験
──大規模なリニューアルだったため、他チームとの連携も多かったのではないですか?
田邉:CSチーム(カスタマーサポート)との連携が特に効果的でした。通常はリリース時に共有するだけのところを、今回はプロジェクト立ち上げ当初からCSのメンバーに専任でチームに参加してもらいました。機能の背景や意図を含めて情報共有し続けることで、CSチームがユーザーの問い合わせに対して「機能が決まった理由」まで含めたコミュニケーションができるようになりました。お問い合わせには専用カテゴリーを設け、リニューアル後の新UIを使っているかどうかが判別できるようタグも付けてもらうなど、フィードバックを体系的に収集する仕組みも作りました。
佐藤:SNSに投稿されたユーザーの声も含めて、社内Slackにリアルタイムで流れる仕組みがもともとあります。そこに「構造改革フィードバック」という専用リアクションを設定し、そのリアクションをつけた投稿が自動的に専用チャンネルに転送されるようにしました。プロジェクトメンバー全員が常にフィードバックを閲覧できる状態を作ったことで、チームとしての方向感を合わせやすくなりました。
──連携で苦労した場面はありましたか?
佐藤:広告チームとの連携では大きな行き違いがありました。新しい画面の広告対応はタスクフォース内ではできないため広告チームにお願いしていたのですが、開発終盤になって「こちらは広告チームに依頼済みのつもりが、向こうはこちらの実装が終わるのを待っていた」という状況に気づき、慌てて仕切り直しました。大規模プロジェクトでは、タスクフォース外のチームとの連携確認を、より早いタイミングから細かく行う重要性を学びました。
田邉:SREチームとは事前に「起動時のデータ取得処理が変わり、サーバー負荷も変化する可能性がある」と共有し、リリース後は継続的に監視をしてもらいました。「このリクエストが急増している」「こちらのリクエストが急減したが問題ないか」といった連携が、安定稼働に大きく貢献しました。
──リニューアル完了後のユーザーの反応や、KPIへの影響はどうでしたか?
佐藤:UIが大きく変わるとネガティブな反応が来ることはチーム全員で覚悟していて、実際に多くのお問い合わせとSNS上の意見をいただきました。ただ、主要なKPI(重要業績評価指標)の数字はまったく下がっていません。大多数のユーザーが違和感なく使い続けてくれていることが数字から見えて、個人的には大きく安心しました。フィルターカレンダー(複数のカレンダーの表示・非表示を素早く切り替えられる機能)は複数カレンダーを利用するユーザーから「使いやすい」という声も届いています。
田邉:共有カレンダーという既存の価値を守りながら、個人に向けたパーソナライズされたカレンダー体験を提供できる場をリリースできたと感じています。

──リリース後にリファクタリングは進めていますか?
佐藤:まさに今進めています。「どの個別カレンダーを開くか」の指定を、グローバル変数ではなく明示的なパラメーターで渡す形に変えつつあります。ユーザーには見えないところで、内部構造を着実に整理しているところです。
田邉:Androidも頑張っています。今後の開発をスムーズに進められるよう、現在は既存のUIに合わせて、UI構造やデータ保持の方法などのリファクタリングを進めています
──今回の経験を通じて、エンジニアがプロダクトの未来を見据えた技術戦略を描く上で最も大事だと感じたことは何ですか?
佐藤:プロトタイプで早めに試すことの重要性を改めて痛感しました。大きな開発をいきなり始めるのではなく、まず動くものを作ってユーザーに触ってもらい、「いける」という確信を持ってから進みます。あの段階で確信を得られたからこそ、その後の長い開発期間も前向きに続けられたと思います。大きな変更でも、準備を怠らず、早い段階での検証をいとわないことが、結果的に最も安全で確実な方法だと感じました。
田邉:大きな変更はユーザーにとっても負担になるので、プロトタイプを作り、ユーザーインタビューで検証し、お知らせなどのコミュニケーションを丁寧に準備してリリースする。一つひとつの段取りが大切だとあらためて感じました。プロジェクトを通じて納得感を持って実装を進められたことが、長いプロジェクトを最後までやり切れた一番の理由だと思っています。
──最後に、エンジニアリングの観点からプロダクト・事業への貢献について、どう考えていますか?
佐藤:エンジニアの役割は、目指す方向性に対して「具体的にどんな形に落とし込むか」を考えることだと思っています。ユーザーにとっての使いやすさ、コードベースの品質、開発工数など、これらを総合的に判断してベストな形に持っていくことが、エンジニアの責任だと感じています。
田邉:既存の仕組みや開発コストを踏まえた提案はもちろんですが、自分もTimeTreeのユーザーであるという視点も大切にしたいと思っています。技術者でありながら使う人間の目を持つこと。そのバランスを意識しながら、今後もプロダクト開発に貢献していきたいです。
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