はじめに
Visual Studio 2005 Team System(VSTS)によって、Visual Studioのターゲットは開発者の枠を越えることになりました。VSTSはプロジェクトマネージャーからテスターまでを包括的にカバーし、チーム開発を強力に支援する製品としてリリースされましたが、まだまだ浸透していないように思います。以前、Team Foundation Server(以下、TFS)の機能については『TFSで行うチーム開発、プロジェクトマネジメント』で紹介しましたが、実際どうやって使おうかと悩む方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、TFSによるレポーティングの具体的な使用方法について紹介します。
対象読者
- Visual Studio 2005 Team Systemに興味がある方
- Team Foundation Serverに興味がある方
必要な環境と準備
- Team Foundation Server
- Visual Studio 2005 Team Systemのいずれかのエディション
- Team Explorer
TFS及びTeam Exploereのインストール方法については『Team Foundation Server超簡単インストール』を参照してください。前回までの記事をご覧いただいており、環境構築が済んでいる場合には、特に作業の必要はありません。
Visual Studio 2005 Team Systemについてですが、本稿執筆の時点でVSTS 2005の評価版がダウンロードできなくなっています。今回新たにVSTS環境を構築する場合には、Visual Studio 2008 Team Suite 90 日間評価版およびVisual Studio Team System 2008 Team Foundation Server 90 日間限定評価版をダウンロードの上、それぞれ利用してください。ただし、GUIなどに違いがあるため、記事の内容をすべてそのまま確認できるわけではないことにご注意ください。
何がレポートされるのか
TFSのレポーティング機能は、プロジェクトの進捗やバグの推移、ビルドの詳細情報などをグラフや表といった直感的に分かりやすい形で表示する機能です。グラフや表を見るために特別なデータ操作は不要で、簡単なマウス操作のみでレポートを見ることができます。レポートの雛型はプロジェクトテンプレートに組み込まれており、MSF Agileでは20種類、MSF CMMIでは23種類のレポートが提供されています。
では、TFSがどうやってデータを収集・解析しているのかと言うと、SQL Server Analysis Servicesを利用してTFSのデータウェアハウス、およびデータキューブを自動生成し、SQL Server 2005 Reporting Servicesを利用してレポートを表示しています。収集されるデータは作業項目やソースコード管理や自動ビルドなど、多岐にわたっていますが、中でも作業項目からは多くの情報が収集されます。正確なレポートを得るためには作業項目を適切に管理することが非常に重要です。では、具体的にどんなレポートが用意されているのでしょうか?
レポートの種類
先にも述べましたがMSF Agileでは20種類、MSF CMMIでは23種類のレポートが提供されています。下表は提供されているレポートとその概要です。
レポート名 | MSF Agile | MSF CMMI | レポート概要 |
作業項目 | ○ | ○ | 作業項目の一覧表示と詳細情報の表示 |
ビルド | ○ | ○ | ビルドを一覧表示し、詳細を表示 |
再アクティブ化 | ○ | ○ | 作業項目の再アクティブ化済み数と未再アクティブ化数の時系列変化を表示 |
残存作業 | ○ | ○ | アクティブ、解決済み、完了の作業項目数の時系列変化を表示 |
バグ率 | ○ | ○ | バグの作業項目の状態の時系列変化を表示 |
バグ (優先度順) | ○ | ○ | バグの作業項目の状態の時系列変化を優先度ごとに表示 |
プロジェクト速度 | ○ | ○ | 作業項目の解決済みの数、その平均、および完了の数の時系列変化を表示 |
品質指標 | ○ | ○ | 品質を損なわずにどのくらいの必要条件を完了できるかを表示 |
計画していなかった作業 | ○ | ○ | 後から追加された作業項目を時系列で表示 |
関連作業項目 | ○ | ○ | 関連付けがなされている作業項目をツリーで一覧表示し、詳細を表示 |
シナリオの詳細 | ○ | × | 作業項目「シナリオ」の一覧と詳細の表示 |
必要条件の詳細 | × | ○ | 必要条件の作業項目の一覧と詳細の表示 |
実際の品質と計画された速度 | ○ | ○ | 品質を損なわずにどのくらいの必要条件を完了できるかを表示 |
アクティブなバグを伴って成功しているテスト | ○ | ○ | バグの作業項目と関連付けられている成功したテストの一覧を表示 |
アクティブなバグを伴わないで失敗しているテスト | ○ | ○ | バグの作業項目と関連付けられていない失敗したテストの一覧を表示 |
回帰 | ○ | ○ | 前回成功して、今回失敗したテストの一覧表示 |
対応するテストなしに発見されたバグ | ○ | ○ | バグの作業項目で「テスト」の記述のないものを表示 |
トリアージ | × | ○ | 作業項目の「トリアージ」の項目が「トリアージ済み」でない作業項目を時系列で表示 |
必要条件テスト履歴および概要 | × | ○ | 必要条件に対してのテストの状態を表示 |
懸案事項およびブロックされた作業項目 | × | ○ | 懸案事項の作業項目の状態およびブロックされた作業項目を時系列で表示 |
ロード テストの詳細 | ○ | ○ | ロード テストの詳細を表示 |
ロード テストの概要 | ○ | ○ | ロード テストの概要を一覧表示 |
タスクを含む作業項目 | ○ | ○ | タスクを含む作業項目 |
テスト結果を含む作業項目 | ○ | ○ | テスト結果を含む作業項目 |
言葉だけではレポートのイメージが浮かびにくいですが、例えば「残存作業」は図1のようなレポートが出力されます。
レポートを見てみる
ではもっとレポートを見てみましょう。「チームエクスプローラー」からチームプロジェクトを選択し、「レポート」フォルダを開くと、上記のレポートがずらりと一覧表示されます。ここから見たいレポートを選択するとVS上にレポートが表示されます。レポートを見るためにVSを立ち上げるのはいやだ、もしくは業務でVSは使わないけどレポートは見たい、という管理職の方のためにブラウザから参照する方法もあります。アドレスは「http://(TFS名)/Reports」です。(TFS名)の部分にはお使いのTFS名を使用してください。
ブラウザからでもVSからでもよいのですが、よく項目を見てみると「タスクを含む作業項目」など、一覧に表示されていないレポートがあることに気がつきます。表示されていないレポートを表示するにはブラウザ上の「詳細の表示」を選択してください。常にすべてのレポートを一覧表示したい場合は、「詳細の表示」で一覧表示されていないレポートを選択し、「プロパティ」タブを開いて「リストビューで非表示にする」のチェックを外してください。
ネットワークにつながっていなければレポートは見られない、という訳ではありません。例えばネットワークのつながらない会議室でレポートを参照したいとき、画面上部の印刷マークからレポートを印刷して会議室に持っていくことができます。また印刷ボタンの隣の「エクスポート」からPDFやExcelなどの形式でレポートを保存することもできますので、出力ファイルを用いて資料を作成することもできます。