2月に開催された「Developers Summit 2010(デブサミ2010)」のベストスピーカー賞の表彰式が19日、「PROJECT UX : Web ブラウザー最新動向」のイベント会場で行われた。
2月に開催された「Developers Summit 2010(デブサミ2010)」のベストスピーカー賞の表彰式が19日、マイクロソフト主催のイベント「PROJECT UX : Web ブラウザー最新動向」の会場で行われた。
デブサミは、翔泳社が主催する開発者向けカンファレンス。各セッション会場にて実施した来場者アンケートにより、ベストスピーカー賞は矢倉 眞隆氏、小松 健作氏、羽田野 太巳氏、白石 俊平氏、上山 智士氏、竹迫 良範氏らによるセッション「次世代Web標準 HTML5 最新動向」が選ばれた。
受賞者の白石 俊平氏、羽田野 太巳氏、矢倉 眞隆氏の3名は、同イベントにて「特別企画 HTML5とか勉強会@マイクロソフト」と題したセッションを行った。
イベントでは、HTML5の概要および先日のMicrosoft MIX10(以下、MIX10)で発表され注目されているInternet Explorer(以下、IE)9のHTML5の実装の状況について解説された。
HTML5の目的は「機能の拡張」と「安定性の向上」
まず、ミツエーリンクスの矢倉 眞隆氏がHTML5およびCSS3の概要や、追加された要素について紹介した。
矢倉氏は、HTML5の目的は大きく「機能の拡張」と「安定性の向上」の2つであるとし、新たに加わるアプリケーション機能において互換性の確保や安定した基盤づくりを目指して、昨年ごろから急速に実装が進んでいると語った。しかし、2010年4月時点でもまだ仕様は策定中であり、「アクセシビリティの問題や、HTTPなどの他の仕様に影響する部分において衝突を回避する仕組みを見つけるという工程を繰り返す必要がある」と述べた。
現状では、API部分の仕様を分離し、使える機能は早く安定して使えるようにするという試みが各ブラウザで行われている。実装はIE8でも一部が対応していたが、IE9ではDOMまわりの実装を中心に進んでいくだろうと矢倉氏は予想している。
また、CSS3もHTML5のAPIと同様で、機能(モジュール)ごとの小さな集まりで実装は進められており「IE9では安定しているモジュールを中心に実装されるのではないか」と語った。
IE9はアグレッシブに標準を取り込んでいる
次に、OpenWeb Technologyの白石 俊平氏がHTML5のAPI、IE9までで実現している機能および実装予定の機能を紹介した。
白石氏は、IE9までに実現済み予定の中でも特に注目する機能として「クロスドメインXMLHttpRequest(XDR)」をあげ、デモを交えて説明した。XDRは、クライアントサイドでXMLHttpRequestをopenする際、http://から始まる外部サーバのURLを指定し、サーバーサイドでは「Access-Control-Allow-Origin」レスポンスヘッダにすべてのオリジンを指定すれば、最小の手順で実現できる。
白石氏は「IEは過去のバージョンのしがらみに縛られている中、IE9はすごくアグレッシブに標準を取り込んでいる」とし、「IEはWebのペースメーカーであり、IEで実装された機能はPCブラウザ上でどこまでHTMLを実現できるのかのベースラインとなるのでは」と語った。
リッチアプリケーションの普及により、テクノロジーの知識は必須
最後に、有限会社futomiの羽田野 太巳氏が、APIの中でもCanvas、Video/Audio、Formsなどのビジュアル要素を紹介した。
Canvasの特徴は、JavaScriptからAPIを通して図を描くことができ、今までデスクトップアプリケーションだったものをWebブラウザだけで動かせるという点だ。オブジェクトを認識しないただのビットマップであるため、描いてしまった図を個別に認識はできないが、描画は超高速で、ピクセル単位での操作が可能となっている。
Videoは、コントロール属性を付けるだけで、動画にインターフェイスを付加させることができる。コントロールがブラウザごとに違うため、サービス会社は各種コントロールを独自に用意している。
Canvas、Video共に現状ではIEに対応していない。また、ビデオコーデックもブラウザごとに違いがあり、IE9はH.264に対応するのでは、と見解を述べた。ちなみに、FormはIE、Firefoxには対応しておらず、主に実装されているのはOperaのみとなっている。
羽田野氏は「IE6からの移行により、IE8、9のシェアが広がっていくことは間違いない。マイクロソフトは、MIX10でIE9プラットフォームプレビューが公開された際に『We love HTML5 so much』と述べたように、HTML5に相当コミットしていると思われる」とし、「よりリッチなアプリケーションが一般ユーザにとって当たり前となり、製作者側のテクノロジーの知識は必須となるだろう」と述べ、セッションを閉じた。
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