フロントエンドエンジニアに対する企業のスキルニーズとは
続いて、様々な分野のクリエイターのエージェンシー事業を展開しているクリーク・アンド・リバー社の田川浩充氏が登壇し、HTML5に関連する求人情報から、企業のスキルニーズを読み解いた。

田川氏があるWeb制作会社に入った2006年当時、流行っていたのがPCのサイトとフィーチャーフォンのサイトを連動させる環境の構築だった。そのときは、PCサイトの作成担当としてディレクター、デザイナー、マークアップ、Flash作成の4名、フィーチャーフォン担当が3名、さらにプログラマーがプロジェクトマネージャー主体に3名の、合計10名ほどの体制でプロジェクトを回していたという。
それが最近では、ディレクター、デザイナー、プログラマー2人ぐらいで回している。Webデザイナーをプログラマーが兼任しているケースも多い。短期間で効率的に開発できるように、プロジェクトを少数で回す傾向も強まっている。それが顕著なのがソーシャルゲームの会社だ。また、プロジェクトの対象がフィーチャーフォンからスマホに移り、淘汰された市場もある。
このような背景から現在、どのような人が企業から求められているのか。田川氏は、株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)の求人情報を元に読み解いた。同社の主力事業はモバゲーのソーシャルゲームだが、他にもECサービスや旅行のサービスも手がけるなど、かなり多角的な事業を行っている。
DeNAのHTMLに関わる求人は、大きく分けて以下の2つだ。
- ECサービスのフロントエンドエンジニア
- ソーシャルゲームのフロントエンドエンジニア
ECサービスの募集要項には「必須のマインド」として「自発的に部門のミッションを理解し、開発ができる方」とあり、そこから、少数精鋭のプロジェクトが多いと推測される。HTML5、CSS3の知識は「望ましいスキル」という位置づけだ。
ソーシャルゲームの求人を見ると、企画立案から制作、容量を抑えたページに仕上げるための提案まで、「何でもやる」というイメージだ。やはり少数精鋭が多いと思われる。HTML、CSS、JavaScriptのコーディング経験も必須とされており、ソーシャルゲームではHTML5がガンガン使われていることがここから透けて見える。
以上の事実を踏まえて、フロントエンドエンジニアには、どのようなスキルを取得するのが理想か。
まずシステム以外に、デザインスキルが求められる。逆に、Webデザイナーにもフロントエンドのテクノロジーの知識が必要である。そうした変化の中で、田川氏は「HTML5周辺の知識は、現行のネット業界で生き抜くためのパスポートのようなもの」と見ている。コーディングができるだけの人、UIが作れるだけの人というのは若干、この動きから取り残されてしまう。田川氏は「ぜひこの機会にHTML5など、自分のプラスアルファになる知識が必要な時代だと認識してほしい」と述べ、講演を締めた。
デベロッパーの将来にHTML5認定試験はなぜ有効か
最後に登壇したNTTコムウェアの川田 寛氏は、「HTML5についてはテクノロジーとムーブメントの2つを明確に意識したほうがいい」と語った。

まずテクノロジー面では、イノベーションというより、パラダイムシフトという考え方が正しいという。かつてドキュメント記述を行うためのフォーマットがあり、別にアプリの実装を行うためのものがあった。それらを一緒にしよう、という考え方から出てきたのがHTML5だ。
ではムーブメント面ではどうか。ここで気をつけなければいけないのは、ソフトウェアアーキテクチャが変わってきていることだと、川田氏は述べる。たとえばAjaxが流行し、その双方向性通信におけるデメリット部分を補った「WebSocket」という技術が出てきている。
スマートデバイスの普及によるユーザビリティの変化も大きい。プレイヤーも変化している。たとえば電子書籍を作っているメーカーが仕様の作成に入るなど、様々な業界の関係者がHTMLに関わるようになってきた。
そうした中で、なぜエンジニア自身がHTML5を扱えるようになることが求められているのか。2013年2月、米国の調査会社ガートナーが「2016年、エンタープライズ分野で、50%以上のモバイルアプリがHTML5を活用したハイブリッドアプリになる」と予想した際、多くの人がその妥当性を疑った。
ところが状況が変わり、「実際にそうなるのではないか」という雰囲気が出てきた。さらに「モバイルファースト」という考え方も出てきて、「UX(ユーザーエクスペリエンス)にはネイティブアプリがいいが、コストを考えるとWebの力も必要」という議論が起きている。
一方、システムインテグレーション(SI)の視点で注目しなければならないのが、マイクロソフトのビジネスモデルを変えようという動きだ。これまで同社では、1つのOSを長期にサポートし、その上でアプリケーションを動かすことに注力してきた。その結果、Internet Explorer(以下、IE)のあるバージョンを5年、10年動かすシステムを数多く生み出してきた。しかし、Windows 8系では常にアップグレードを要求し、HTML5に対応したWeb標準準拠のブラウザが必須の時代になってきている。Flashプラグインを拒否したAppleショックも大きい。
ただ、HTML5にも問題点がある。川田氏は「HTML5というテクノロジーだけを見ていると、解決できない問題が数多くある」と指摘する。たとえばJavaScriptをどうテストするか、未だに答えがない。他にも、セキュリティアーキテクチャの変化、設計フェーズでの扱い方、品質管理方法、対策方法など、問題は山積みといっていい。
実は現在、HTML5対応に必要なツールが続々と登場してきている。ただ、自分のプロジェクトに合致する唯一の正解というものは無いのが現状で、その選択は奥が深い。
たとえばプラットフォームに依存しない、脱IEプログラマーとなるためには「Modernizr」を使い、Feature Detectionの考え方を身につけると良い。また「Compat Inspector」により、IE依存の機能をプロジェクトの中で検出することができる。
川田氏は「HTML5のポテンシャルを発揮するには、プラットフォームがどう動くのか、ミドルウェアがどういう働きをしているのか、といったことの知識も求められる。そこにフォーカスしているのが今回のHTML5プロフェッショナル認定試験だと思っている」と述べ、セッションを締めくくった。

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