フィギュアの股下に回り込んだ服のパーツが一番の苦労点
――原画イラストを元にした原型制作で一番苦労した点はどこでしょうか?
藤縄 原画の時点では気にならなかったのですが、原型を作成していく工程でプリーツが股下を回り込んで、なびいている箇所があります。フィギュア的には「分割するポイントが確保できない」のでNGという部分です。理由としては、プリーツを前と後ろを付けた状態にすると「腰パーツが取り外せない」形になってしまうからです。
しかし、そうはいってもどこかで分割しなければなりません。パーツ的にはあまりよろしくない方法ではありますが、一番目立たないであろうシワのラインに沿って、前後に分割しました。
――商業フィギュアの場合は、股下はオブジェクトを通さないという暗黙のルールがあるのですか?
藤縄 なるべくなら股下にオブジェクトは通しません。理由は、商業原型の場合は、組立てが複雑になると不良品率が上がり経費もかさんでしまうからです。できれば避けたいところです。
先ほども触れたとおり、今回は体の前面のほうにあるシワのラインで分割すれば目立たないということもあり、そこで分割しています。
ニリツ たしかにゆとりのない巻き込み方でしたね。
――逆の見方をすれば、股下に別のオブジェクトを通したいフィギュアを作成する方にとっては参考になる手法ですよね?
ニリツ 知人でも、原型の分割で苦労している方がいるので、分割手法は大変な部分だと感じました。
塗りの表現、光の当て方も2次元と3次元とでは違う
――完成したフィギュアについて、イラストレーター、原型師から見た感想をお聞かせください
ニリツ 「2次元と3次元でこれだけ差がある」という意味で非常に勉強になりました。また「3次元の立体物のエネルギーはすごいな」と感じました。
今回のイラストの場合、ある程度は3次元をイメージしてから、2次元に落とし込んで描いていますが、それを再び3次元でアウトプットしているので、「自分の頭の中でどのように考え、イメージしているのか」という意味で面白い感動がありました。
一方で「自分の頭の中でイメージしている3次元のイメージが、他の方からすればこう見えるのか」ということも新鮮でした。僕の頭の中をのぞかせてもらったような印象ですね。
藤縄 私は、「塗り」の部分で、イラストがそのまま立体に飛び出してきたような塗りにもチャレンジしてみたかったですね。ホビー系の塗料は鮮やかな淡い発色は苦手なので、イラストのままの表現をするのは、至難の技ではありますが……。
ニリツ 原画イラストは、リアルではありえないけれども、見栄えのする照明を髪の毛に当てて描いています。髪を描く場合、影を塗っておいたり、グラデーションをかけておいたりという細工が必要だと思います。
イラストでこだわっている部分を挙げるとすれば、白い服の影です。見栄えを意識して、寒色系や暖色系で影を入れている箇所があります。こうした部分は、完成したフィギュアの撮影時に、暖色系の照明で撮影するのか、寒色系で撮影するのかによって、変わってきます。
藤縄 難しい部分ですよね。
――書籍の中でも塗りの部分では、さまざまなカラーをミックスして色塗りをしていますよね。
藤縄 イラストのカラーは、市販のホビーカラーだけは表現できない色がありますので、それになるべく近づけるようにカラーを作成します。
私は塗装を専門で行っているわけではありませんので、プロの塗装職人(フィニッシャー)の方ほど、仕上げの精度を上げてはいません。専門で塗りを行っている方であれば、さらにすごいクオリティで仕上げてもらうことができます。
