『モバイルファーストSEO Web標準の変革に対応したサイト制作』の著者で株式会社セブンアイズ代表取締役の瀧内賢さんは、これまでサイト制作やSEOに関する業務に携わってこられ、特にGoogle検索の順位安定化を研究されてきました。つまり、Googleが意図することを読み解き、アルゴリズムの傾向を分析することで検索上位に表示されるサイトを作られてきたということができます。
いま、SEO対策は大きな変化を迎えています。我々が日常的にモバイル機器でネットを利用するようになり、Googleも今後モバイルフレンドリーなサイトを検索上位に表示するようになっていくでしょう。まだPCユーザーも多くを占める中で、いますぐモバイルユーザーのためにサイト制作をするべきなのでしょうか? 瀧内さんにお話をうかがいます。
サイト制作はスマートフォンに軸を移さなければならない
――現在株式会社セブンアイズを設立され、SEOを始めホームページ制作を仕事にされている瀧内さんですが、最初にこれまでされてきた仕事を教えてください。
瀧内:いままで多くのサイト制作やSEO業務に関わってきました。エンドユーザーのみならず、Web業者に対してもコンサルティングや作業指示書作成などを行なっています。その中でサイトの検索順位の変動を定点観測し、Googleの検索アルゴリズムの真意を読み解こうとしてきました。少しずつ傾向が見えてくるのですが、それを抽出してサイトの検索順位安定に繋げてきました(セブンアイズのSEO検証・実験サイト)。
そのアルゴリズムは改良され続けていますが、近年大きく変革を遂げようとしています。検索数においてモバイルがPCを上回ったことで、Googleもモバイルに対応したサイトを無視できなくなったことです。時代の流れでSEOの対象が変化すれば、おのずとサイト制作側の施策も変化させていかなければいけません。そういった変化を取り込みながら、日々検証・実験に取り組んでいます。
――本書はまさにモバイルファーストな時代のサイト制作やSEO対策を行なう手法がサイト制作に携わる方の視点で解説されています。やはりPC前提では検索結果の上位に表示されない時代が来るのでしょうか。
瀧内:本書のテーマはサイト制作におけるパラダイムシフト、要するにスマートフォンに軸を移すことです。現在のネット検索において、市場占有率が最も大きいのはPCではなくスマートフォンです。だからこそ、スマートフォンユーザーが見ることを想定したサイトを制作することが急務です。「誰のための、または誰に向けたWebサイトであるか」ということを、いま一度突き詰めて考えないといけない時代に突入したのです。
Googleが2015年4月21日に導入したモバイルフレンドリーを皮切りに、今後スマートフォン対応を迫られることになるでしょう。ですが、モバイルで閲覧するための基準を満たしたサイトはまだまだ少ないのが実情です。Googleが徐々にモバイル仕様のアルゴリズムを増やしていくことも予想し、早目に準備をしておかなければいけません。Web担当者や制作会社の方、個人事業主であれ、サイト制作に関わる方であればモバイルファーストへの移行はもはや欠かせません。
モバイルユーザーがストレスを感じない設計に
――スマートフォンで閲覧するユーザーのためにどうサイトを制作すればいいのか、細かいところまで解説されてるのが本書の特徴ですが、最も注力したのはどの部分でしょうか。
瀧内:「第3章 ユーザーを意識したモバイルフレンドリーサイトの設計」の節「モバイルデザイン設計」で言及したデスティネーションファースト(Destination First、目的地への導線を重要視すること)です。そもそも検索は、情報をいち早く探し出すことが第一の目的です。独自のデザイン性にこだわりすぎて、最初に訪問した人がどこをどのように進んでよいか分からないような、複雑で奇抜なものを作るよりも、求めている情報を探しやすい理に適ったつくりのほうが、本来はユーザーに好まれます。
特にスマートフォンという限られた大きさの画面となると、「何をファーストビューで表示するか」などを考慮した、検索本来の目的を満たすページレイアウト設計が、断然好まれるのです。
そして、目的地へ早く到着させるためには、そこまでの最短の導線を示す必要があります。例えるなら「直線レールの新幹線」のようなものです。つまり、モバイルファーストの基礎とするべき考え方の一つが、目的地への導線を重要視するデスティネーションファーストなのです。この設計方法が、結果としてユーザー満足度を高めることとなり、ひいてはSEOにも好影響を与えることになります。
本書ではデスティネーションファーストを取り入れるために、CALL TO ACTION(行動を促す表記)を目立たせること、短く簡潔なメニューを心がけること、トップページへ簡単に戻れることなどを紹介しています。早く目的の情報に辿り着きたいというユーザー心理を忘れないようにしてもらいたいですね。
――そういった考え方、手法はどのように研究されているのでしょうか。
瀧内:Googleのガイドラインや発表、発言など、あらゆる要素を精査して体系化したものです。Googleの発言は一部断片的ですが、その意図することは明確ですので、「ユーザー目線」で繋ぎ合わせることで、水面下にあるものも含めて全容が見えてきます。
皆さんが制作されるサイトをユーザーが利用するシーンを思い浮かべてみてください。画面が小さかったり、周りの音がうるさかったり、モバイルユーザーの環境はさまざまです。ゆっくりサイト全体を隅々まで閲覧する場合もあるとは思いますが、いち早く目的の情報に辿り着きたいというユーザー心理があることを忘れてはいけません。だからこそ、分かりやすい導線が必要なのです。また、いまのモバイル機器は通信環境が不安定で、回線速度も早くありません。そのため余計に、ストレスなく見られるサイト制作が求められています。
SEOは事業の浮沈に直結する重要な「武器」
――最後に、SEOを仕事にされてきた瀧内さんの今後の目標を教えてください。
瀧内:SEOについていえば、情報過多のいま、何を取り入れていくかの取捨選択が最も重要です。モバイルファーストなど数々の要素がありますが、これらをろ過装置に入れてみると、案外共通項が多いことが分かります。その共通項、つまりいつの時代にでも変わらないものを核に据えることが、SEOにおいて有効となります。
ネットが当たり前のいま、SEOは事業の浮沈に直結する重要な「武器」となります。この知識、この偉大な力を、多くの方々に体験してほしいのです。私の将来の夢は、大学にSEO関連の学科を新設し、多くの門下生を輩出させていくことです。結果、多くの方々が幸せになっていただくことを願っています。