量子アニーリングは日本発。たくさんの日本人に活躍してほしい
ゆうこ こうやって量子コンピュータが発達してくると、エンジニアさんはこれからどうしたらいいのか悩んじゃうところなのかなと思うんですけど、そういうエンジニアさん達は、量子コンピュータの動向をウォッチしておいたほうがいいんでしょうか?
宇津木 僕の考えですけど、できればぜひ興味をもってもらいたいなと。
かまぷ 量子情報勉強会に足を運んでもらって。
宇津木 それはなぜかというと、世界中で話題になっている、人工知能、機械学習、IoTやビッグデータ解析などの中で、量子コンピュータもその波に乗って、特にGoogleが筆頭で研究してるんです。これをぜひ、日本の多くの方に知ってもらいたい。例えば、Googleが量子コンピュータをクラウド上に公開した時に、いち早く日本人が使い出したら、「日本人すげえな」ってなるじゃないですか。このハイパフォーマンスコンピューティングの更に上のような業界ができた時に、日本人がたくさん活躍してたらいいなあと思って。
かまぷ その量子アニーリングを一番初めに考えたのは、日本人なんでしたっけ?
宇津木 そうそう。東工大の西森先生という方が、学生と一緒に、量子アニーリングの論文を出したのが最初。
かまぷ 元の考え方を。で、それを実現したのがD-Waveと。
宇津木 そうですね、はい。まあ他にもアメリカの方も研究をして、どんどん理論が積み重ねていって、それを実際に作ったっていう感じなんですけど。最初の発端は日本人っていうのは誇らしいこと。
かまぷ そのコンピュータを使って何がやりたいというのが無いと、エンジニアも勉強ができないと思うんですよ。例えばIoTだったら、Raspberry Piを買ってEjectボタンを作ったり、カーテンを自動で開けたりだとか、そういう目的があって、ものを作るんだったらわかる。でも、量子コンピュータを使えますよって言われても、車メーカーで流体力学を調べている人とか、宇宙の観測を行ってる方は、「おおし、やってやるぞ」ってなるかもだけど、普通のエンジニアはまあいっかってなりそう。
宇津木 この機械学習が我々の手に降りてくれば。
かまぷ AlphaGoも、機械学習ですよね。あれもGoogleですけど、別に量子コンピュータではないんですよね?
宇津木 あれは普通のコンピュータでやってますし、AlphaGoが量子コンピュータの問題に適しているかはちょっとわからないですけど、そういうふうに、例えばレジ打ちのおばちゃんがいろんな人の買い物を全部、データを取っといて、これを使ってディープラーニングをして、何時のどのぐらいの時間帯はこのお客さんがこれを買うだろうって予測したいと思った時にも使える。
かまぷ ああ、マーケティング系のね。
宇津木 そうそう。ディープラーニングがもうちょっと使いやすくなってきたら、それを計算するときに量子コンピュータが使えるかもしれないので。そういう時代が来れば、まさにRaspberry Piのような感じで量子コンピュータを勉強できるかもしれないですね。
かまぷ ところで、量子コンピュータが今のスマホみたいに、1人1台持つ時代は、来るか来ないかが気になります。
宇津木 来ないんじゃないかなと思いますけど。でも僕も研究者の端くれとして、なんかそういうのもちょっと夢があって良いかなとは思いますけどね。
かまぷ なんかすごく使う人が増えていったら、チップとかも廉価になっていって、もうスマホが固まるなんていつの時代の話? みたいになると面白い。
宇津木 どうなんですかね。どちらかというとスマホで、その量子コンピュータのところにアクセスして、で計算させて戻すっていうほうが現実的かな。それだったらすぐできそう。
ゆうこ 現状の量子アニーリングだとすごく冷やさないと計算できないし、量子的な振る舞いができる物質が開発されたら……ちょっと遠いですかね。
かまぷ ところで、アニーリングって何て意味ですか?
宇津木 アニーリングはですね、「焼きなまし」って日本語で言うらしいんです。純度の高い金属を作りたいと思ったら、金属を1回どろどろに溶かして、もう1回冷やし直すんですね。その手法をアニーリングって呼ぶんですが、まさにその物理現象の考え方を利用しているのが量子アニーリングなんです。
ゆうこ その焼きなましの操作と、量子アニーリングはどう関連してるんですか?
宇津木 量子アニーリングっていうのは、超電導の回路がこういっぱいいると。で、その1匹1匹の回路が全部、0と1の重ねあわせ状態になってますと。それをバーッってこう広げといて、それを1回、全部0と1の重ね合わせにするんですね。でその後に、そいつらを関係づける。相互作用っていうんですけど、相互作用を与えていくと。で、ちょっとずつ重ねあわせ状態を解いていくような処理をする。
で、金属でいうと温度を冷やすかのように、ここでは磁場の強さをちょっとずつ弱めていくと、金属の1つ1つの原子が熱運動しているように、最初は0と1の重なり合わせなんですけど、それがだんだん冷えていくと、自分は0だな、自分は1だなってこう、ちょっとずつ自分がなりたい状態になっていく。で最後、磁場をなくすと、もうそいつらが、自分が0だったよ、僕は1だよっていうふうに決まるんですね。その状態が答えになってる。計算した結果になってるっていうという意味でつながっています。
