「問題の概念的なメタ化」が柔軟で効果的な解決を導く
巣籠:自然言語処理の分野では、従来の辞書マッチングによる逐次翻訳ではなく、機械学習やディープラーニングなどによる言語解釈、自動翻訳が可能になったことを「マシンがメタ(Meta)を獲得した」と表現することがあります。いまのお話を聞くと、ソーチャーさんは「MetaMind」という会社を作りましたが、この社名には「Meta Learning」(メタ学習)をスケールさせて思考や感情をメタ化するという意図があるように思います。
ソーチャー:まさにそのとおりです。鋭い洞察力ですね! そこまで気が付いてくれる人は少ないです。私がPh.D(博士号)を取る最後の年、いろいろな企業のコンサルティングをして、たくさんの問題を相談されました。問題を概念的にメタ化できれば多様な問題を柔軟かつ効果的に解決できるはずです。MetaMindという社名には、汎用的な問題解決プラットフォームを作りたいという想いが込められています。
巣籠:MetaMindのAPIは個人でもよく使わせてもらっていました。会社としてもうまくいっていたと思うのですが、Salesforceに買収されたというニュースにびっくりしました。なぜ、Salesforceに合流しようと思ったのですか。
ソーチャー:自分のビジョンや会社のビジョンを考えたとき、1つは最新鋭のAIによって企業や人々の可能性を広げること。もう1つは、それを多く人に使ってもらうこと、実装してもらうことだと思っています。Salesforceとはパートナーとしての付き合いもありましたが、さまざまな業界に対してサービスを提供する同社は、同時のたくさんのメタ問題を抱えている企業でもあります。まさに我々のビジョンを試すのにふさわしい企業だったのです。MetaMindのAIを、部門や業界を超えて試すチャンスだと思いました。もっとマクロ的な視点では、米国の経済だけでなく、世界の経済をよくすることもできると思ったからです。
巣籠:業界を問わないメタ問題を解決するためのAI。そのようなAIを考えるとき技術的な工夫点などありますか。
ソーチャー:AIの3つの重要な要素として、データ、アルゴリズム、ワークフローへの統合を挙げることができます。アルゴリズムはSalesforceでも、100人以上のデータサイエンティストが以前から取り組んでいます。MetaMindとしてもこの領域にディープラーニングの知見を提供できると思っています。
しかし、難しいのはデータとワークフローの統合です。データを大量に集め、適切なものに選別したり、どのデータをどう処理すればいいのか。どう問題解決につなげていくのか。AIを企業などの問題解決に適用する場合、シンプルなモデルからリサーチの領域まで幅があります。残念ながらすべての問題に対してAIが適用できるかというと、これからという部分も少なくありません。SalesforceではPredictive Lead ScoringやOpptunity Insights[1]といったAIソリューションを提供していますが、これらはまだ機械学習によるものです。ディープラーニング化を現在進めているところです。
注
[1]: Predictive Lead Scoringは有望なリードに注力したい営業担当者を支援する機能。Opptunity Insightsは商談の上向きと下向きのトレンドをアラートで通知する機能で、ともにAIを活用して営業活動を支援するソリューション「Sales Cloud Einstein」で提供される。
