課題設定は「時間軸」「場所軸」「評価軸」で考える
では、どのように課題を設定すればいいのだろうか。松本氏は「技術Xのスペシャリストになりたい」という例を用いて解説した。
課題の設定は三つの軸で考える。一つ目は「時間軸」。技術Xが今後の時間経過でどうなっていくかを分析する。「技術Xは何年先まで使われるのか」「この先も発展性・応用性はあるのか」「技術Xのスペシャリストになるためにはどれほどの時間が必要なのか(習熟速度)」といったことだ。
技術Xがまだ使える技術と分かれば、そこから派生した技術Yにも目を向けて習得することや、1年以内にコミュニティで発表すること、プロダクトの中に導入実績を作っていくことなどをマイルストーンに組み込んでいく。「3年先、5年先にどういう環境ができているか考えて、その備えをしよう」と松本氏は提案する。
二つ目は「場所軸」だ。技術Xのスペシャリストはどのような場所で活躍できるのかを考える。考え方は二つある。
一つは技術Xを評価してくれる場所、組織や事業軸でその技術を評価してくれる場所を考えること。例えばデータが100ギガや1テラもない組織にHadoopのスペシャリストとして入社しても、活躍できる場所を見つけることは難しい。
もう一つは成長できる場所がどこか考えることだ。例えば、技術Xを業種Aで用いることによってコストメリットが作れるのであれば、業種Aが存在する会社で空いている開発者ポストを見つけ、必要なスキルを習得して転職を検討することや、国内外のユーザーグループに定期的に顔を出すことを課題に設定する。「自分の目標が、できる限り評価される場所に居続けることが大切だ」と松本氏は訴える。
「そういった場所にいないのに、『この会社は評価してくれない』と主張するのは違うと思う。アンマッチな場所に居続けるのは自分の責任でもある」
第三の軸は「評価軸」。「最終的に誰にどう評価されたいのか。その評価者は何を評価軸としているのか。自分はどの程度の評価を得たいのかをそれがどう評価してもらいたいのかを考える」ことだ。
課題設定の例には「最終的には経営者に認められ、経営に携わるエンジニアポジションを獲得したい」「そのためには事業成果として評価される実績を上げる」「事業成果の結果として十分な金銭的リターンがほしい」などが挙げられる。「ほしい評価は偽らずに認識し、評価軸に沿って行動していくことも大切」と語る。
これらの軸で考えた課題を、マイルストーンに落としていく。最終的な目標に対して一段一段課題をクリアし、上っていくのである。マイルストーンができあがれば、その間の施策を出し、検証していくことを繰り返すことによって目標は達成できる。
ただ、忘れてはならないのは、多くの場合エンジニアの評価者は経営者であることだ。「どんな目標を達成するためにも、まずは事業を理解できるエンジニアであることが大前提となる」と、松本氏は指摘する。うちの会社は何を売っていて、その事業に対して自分の技術はどういうメリットを作れているのか、常に考えることが重要となる。
松本氏の目標は「事業を起こし、ユーザーに価値を届ける中で技術・資本的な可能性を追求できる人間である」こと。この目標に対し、三つの軸で分析を行って課題を設定し、キャリアを築いてきたのだ。
松本氏は最後に参加者にエールを投げかけ、基調講演を締めくくった。
「目的と現在の環境、その間のマイルストーンを意識すれば、その方向に最も早く正しく向かうことができる。目的に対して最短距離を走り続け望む方向で評価されていこう」
