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開発者コミュニティを育てるには? 中国企業のオープンソース戦略 ~ DevRelCon 北京 レポート

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2017/06/27 14:00

目次

Alibabaのオープンソース戦略 Ding Qi@Alibaba

 中国Eコマース最大手、Alibaba。グループが手がける国際事業の一つAlibaba Cloud(Aliyun)は現在、中国国内でAWSを抜いてトップのシェアを誇っています。そのAlibaba CloudのRDSチームを率いるDing氏が、Alibabaでのオープンソース戦略について語ってくれました。

Alibaba Ding Qi氏
Alibaba Ding Qi氏

 Alibabaでは現在AliSQLというMySQLのブランチを開発していて、これがプロダクトをより強固にし、人材の獲得に大きく寄与しているとのことです。

 このオープンソース戦略は以下の4つのステージを通ってきたそうです。

 一つ目のステージは、オープンソースを使うことをよしとすること。Alibabaでは2009年にオラクルからMySQLへの移行を決定し、その時からずっとMySQLのユーザーです。二つ目のステップはフィードバック。オープンソースを使い始めて気づいた問題に対して、報告したりパッチを送ったりする段階です。そして三つ目としてオープンソースを提供する側に回ること、そして最後の四つ目がオープンソースへ恩返しをする段階と言います。

 現在Alibabaでは中国国内のMySQL、PostgreSQLのユーザーコミュニティを組織したり、ApcaheやMariaDBにスポンサードしたりすることで、彼らのコミュニティをより強固なものにするためのサポートをしています。

Alibabaがオープンソースに関わる理由Alibabaがオープンソースに関わる理由

 Ding氏がオープンソースに関わることで得られるメリットとしてあげていたのは次の二点です。

 一つはプロジェクトが長生きすること、もう一つは採用面で効果を発揮することです。企業独自のデータベースを持つのもいいですが、例えばメンテナンスのために人を雇った場合、ゼロから勉強してもらう必要があります。しかし、MySQLのDBAを雇えばそういった問題は起こりません。実務でMySQLを使うことで、企業独自のスキルを磨くのではなく、その人のキャリアを次に繋げることができるのです。

 また、ALiSQLをオープンソースにしたことで、社外の人が問題を見つけ、提案をくれたり、パッチを送ってくれたりするなど、外部の開発者とのリレーションの構築に役立っているといいます。

オープンソースコミュニティと常に戦略的に関わりを持つこと

 Alibabaではコミュニティとの関わりを常に大事にしています。例えば、データベースの読み書き速度を向上させるプロジェクトを発足させた時は、その計画について事前にいろいろなコミュニティに話をしたそうです。

 話をすることで興味を持ってもらい、中には連絡をくれてチームのメンバーになった人もいました。開発段階で関わってもらっているため、プロダクトががリリースされた時には、彼らを教育する必要もありません。また、開発者をプロジェクトに巻き込むことでより多くの開発者をひきつけることができました。なんとTwitterから引き抜いた人材もいたそうです。こういった人材面での成果は、DevRelのメリットを上司に説明する上でも役に立ったといいます。

活気のあるオープンソースの作り方

 実際、オープンソースのプロジェクトの中には開発が始まってから3年以内にまったくアップデートがなくなり収束してしまうものも少なくありません。Alibabaでもそういうプロジェクトは実際にありました。オープンオースをメンテナンスするにはそれなりの戦略が必要なのです。

 Ding氏は、活気のあるオープンソースプロジェクトには、アクティブなディスカッションフォーラムが必要だと訴えています。みんなが質問に答えられてフィードバックを簡単に与え合えるような場所です。Alibaba CloudではYunxiというコミュニティを持っていて、そこにはAliSQLのための議論ができる場があります。GitHub上でのタイムリーなレスポンスも不可欠です。

 またAliSQLでは更新頻度も気にしていて、1か月に1、2回の機能をリリースしています。その多くはユーザーからのフィードバックに基づいているものがほとんどだそうです。ユーザーからのフィードバックは定期的に集めており、実際にユーザーのもとを訪ねて、どのように利用されているのか調査することもあります。例えば、ユーザーのローカル環境に起因する問題を発見したら、それは他のユーザー環境でも起こりうるかもしれません。Ding氏はそういった発見ができることはプロダクトの成長にとって、とてもよいことだといっています。

ユーザーこそが一番のエバンジェリスト

 Alibaba Cloudチームのメンバーはこうしたコミュニティとの繋がりの中で加わってくれた方がほとんどだそうです。後からDing氏に聞いた話によると、外部の開発者との定期的なランチ会など、オフラインでの接触も大事にしているとのことです。

 オープンソースを提供するということは、ユーザーとの関係構築と密接に関わっています。問題が起きた時、Alibabaよりも先にユーザーが対応してくれたこともあるといいます。ユーザーが製品の良さや特徴を広め、それによって採用にも良い影響を及ぼしています。ユーザーとの信頼関係構築がプロダクト全体に及ぼす好影響についてよくわかるセッションでした。


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著者プロフィール

  • Kayoko(株式会社MOONGIFT)(カヨコ)

     Twitter: https://twitter.com/kayoko_coco  小学生の時からwindowsのメモ帳でWEBサイトを作って遊んでいたインターネットっ子。2014年にセブ島で英語とプログラミングの研修を受けてアパレルの販売員からWEBフロントエンジニアに大胆キャリアチェンジ。I...

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