Angularを盛り上げていくための技術イベント
このように、AngularJS、Angularを積極的に活用し、その成果を享受してきたNRIだが、そのかたわら、並河氏はエンタープライズIT市場でのAngularに対する需要が思うほど高まっていないことに違和感を抱いていたという。例えば、Javaが登場した1995年からの数年間は、国内のIT業界全体で盛り上げていこうとする機運が大いに高まり、コンソシアム等の立ち上げ、関連イベントの開催なども相次いだ。翻って、現在のAngularの状況を見るに、そうした盛り上がりといったものは感じられない。
そんな折、Wijmo、SpreadJSのベンダーであるグレープシティの紹介でGoogleのAngular開発チームと議論した際に、互いに協力して、何がしかの活動ができないかという話へと発展。実績を重視するエンタープライズIT市場で、この優れた技術の普及に微力ながら貢献するには、事例の紹介を中心とするイベントの開催が効果があるのではないかとなり、今回の「GrapeCity Angular Day」の開催へと熟成されていった。
「イベントを1つの契機として、できるだけ多くの開発者の方がAngularに興味を持ち、その有用性を理解していただけることを大いに期待しています。今後もグレープシティとの間に、ますます密接な協業関係を構築し、Angularの普及に向けた活動をさらに強力に推進していければと考えています」と並河氏は力をこめて語る。
第二部:「GrapeCity Angular Day」セッションレポート
「GrapeCity Angular Day」当日は、イベントに参集した数多くの開発者の熱気に会場が包まれ、「エンタープライズシステム開発における有効性を探る」をテーマに、Angularに関わる最新の技術動向の解説や、先進開発事例が数々のセッションを通して紹介された。
Angularでの開発において理解が必須となるTypeScript
「GrapeCity Angular Day」の講演のトップバッターは、日本マイクロソフトの井上章氏だ。マイクロソフトでは、近年、開発者支援ツールの提供に関わるスタンスを大きく転換してきた。「その標榜するビジョンは、『Any developer, Any app, Any platform』、すなわち、Windowsプラットフォームにこだわらず、あらゆるプラットフォーム上の、あらゆるアプリケーションを開発するためのツールを提供していこうとしています」と井上氏は紹介する。
現在、マイクロソフトから無償提供されている開発エディタ「Visual Studio Code」はまさにこうしたビジョンを具現化したものだ。ツール自体がオープンソースであることに加え、Windowsはもちろん、macOSやLinuxの環境でも動作可能。Angularをはじめとする30以上の言語に対応するコードエディタを中心に、Gitによるソースコントロール、gulp、Gruntによるタスク実行などが行えるようになっている。
また、井上氏はAngularを利用した開発において理解が必須となるTypeScriptについて、その登場背景から基本的な言語仕様、現在および今後に向けた動向についても解説。「大規模プロジェクトでは複雑化が避けられないJavaScriptでの開発が抱える課題を解消するものとして、JavaScriptのスーパーセットとして登場してきたのがTypeScriptです。コンパイラによってJavaScriptが生成される仕組みとなっています」と紹介。GoogleがAngularの開発をTypeScriptベースで、Visual Studio Codeを活用しながら進めていることにも触れた。