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【デブサミ2018】セッションレポート(AD)

Microsoft AIプラットフォームの多彩な機能が実現する、インテリジェントなアプリ開発【デブサミ2018】

【15-A-2】Microsoft AIプラットフォームによるインテリジェントアプリケーションの構築

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 近年、デジタルトランスフォーメーションという言葉が話題になっているが、企業のビジネスのあり方はモノからサービスへ、顧客中心主義へとシフトしている。この変革を支える技術として注目を集めているのが人工知能(AI)である。AIが登場したのは1956年であり、特に新しい技術というわけではない。ブームと終焉を何度か繰り返し、ようやく最近機械学習や深層学習(ディープラーニング)がビジネスで使えるようになったことで、盛り上がりを見せているのである。そこでマイクロソフトではあらゆる開発者がAIを使えるよう「Microsoft AIプラットフォーム」を用意。同プラットフォームではどのようなサービス、機能を提供しており、それをどう活用できるのか。日本マイクロソフトAzureテクノロジストの佐藤直生氏が解説した。

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日本マイクロソフトAzureテクノロジスト 佐藤直生氏
日本マイクロソフト Azureテクノロジスト 佐藤直生氏

「Microsoft AI プラットフォーム」で何が可能になるのか

 最近のビジネスは、デジタルトランスフォーメーションといった言葉に表されるとおり、モノからサービスへシフトしている。「もはやあらゆる企業はソフトウェア企業だとも言えるように、モノにソフトウェア、データやコンテンツを組み合わせて顧客中心のサービスを提供している」と佐藤氏は力強く語る。

 そしてそれらのサービスを実装するためには、巨大なコンピュータ環境が必要になっている。「データ量やサイズは年々増大している。例えば2020年、自動運転車が1日に約4000GBのデータを生成・消費し、飛行機からは1日に40TBのデータが生成されるようになると言われている」。そしてこれらの大量のデータを収集・処理しているのがクラウドである。

 「クラウドは心配だ」との声は相変わらずあるが、マイクロソフトが2010年より提供している「Microsoft Azure」はセキュリティ、個人情報の保護、コンプライアンス、透明性の4点で、非常に信頼性のあるエンタープライズ向けパブリッククラウドだと佐藤氏は言う。しかもAzureでは100を超えるクラウドサービスを提供。「Microsoft AI プラットフォーム」もその一つである。

 今、非常に注目されているAI(人工知能)だが、その言葉が登場したのは1956年にさかのぼる。「この年に人工知能という用語が使用されるようになり、その後、何度もブームと終焉が繰り返されてきた。近年、クラウドやGPUの進化などによって、深層学習(ディープラーニング)が問題解決に活用できるレベルになったことで、非常に広がりを見せている」と佐藤氏は語る。

 そのエポックメーキングが、ImageNetという画像認識の精度を競うコンペティションにおいて、「2012年に、深層学習(ディープラーニング)を活用したことで画像認識率が約10%改善した結果を出したチームがいたことだった。それから深層学習(ディープラーニング)のブームが始まった」と佐藤氏。もちろんマイクロソフトもマイクロソフトリサーチという研究機関で、機械学習や深層学習(ディープラーニング)の研究に取り組んできている。「マイクロソフトリサーチが、2015年には画像認識で人間と同等の精度を150層ものネットワークからなる深層学習(ディープラーニング)で実現。また翌年の2016年には会話の音声認識で英語の会話の音声をもとに書き起こしたところ、人間を超えた」と佐藤氏は語る。

 ここで佐藤氏はAIと機械学習、深層学習(ディープラーニング)の関係についても整理した。AIという技術カテゴリーの中に機械学習があり、その機械学習の実装方法の一つであるニューラルネットワークが進化したものが、深層学習(ディープラーニング)である。

 「Microsoft AI プラットフォーム」は「クラウドベースのAIをあらゆる開発者に」をコンセプトとしたAIプラットフォームである。サービス、インフラストラクチャ、ツールで構成されている。サービスでは機械学習が容易にできる「Azure Machine Learning」、画像認識などのAIサービスが簡単に使える「Microsoft Cognitive Services」、カスタマーサポートの自動化が容易に実現する会話型AIを作るための「Microsoft Bot Framework」を提供。「これはC#とNode.jsで書けるフレームワーク」だと佐藤氏は説明を続ける。

 インフラストラクチャではNoSQLサービス「Azure Cosmos DB」をはじめ、SQL Serverベースの「Azure SQL Database」や「Azure SQL Data Warehouse」、HDFSサービスの「Azure Data Lake Store」のほか、Sparkサービス「Azure HDInsight」、「Azure Databricks」、データサイエンスツールがインストール済みのVMイメージ「DSVM」(Data Science VM)、AIトレーニングサービス「Azure Batch AI」などを提供。さらには、コンテナーオーケストレーターであるKubernetesサービス「Azure Container Service」(AKS)、クラウドではなくエッジでの処理をサポートする「Azure IoT Edge」、そしてCPU、GPU、FPGAなどのコンピュータパワーも提供する。ツールではコーディング/管理ツールと深層学習フレームワークの2種類を用意。前者ではVisual Studio Tools for AIAzure Machine Learning StudioAzure Machine Learning Workbenchなど、AI開発者やデータサイエンティストが使うツールを用意。また後者ではMicrosoft Cognitive Toolkit(CNTK)をオープンソースで提供している。

 「Microsoft AI プラットフォームはいろいろなモノを提供しているが、まずはMicrosoft Cognitive Servicesにフォーカスを当てたい」と佐藤氏は宣言し、Microsoft Cognitive Servicesの紹介を始めた。

Microsoft Cognitive Servicesが提供する機能
Microsoft Cognitive Servicesが提供する機能

 Microsoft Cognitive Servicesは上図を見ればわかるとおり、「Vision」「Language」「Speech」「Search」「Knowledge」の5つのカテゴリーに分かれ、約30個のAPIを提供している。例えばVisionでは顔認証や感情認識、Languageでは自然言語処理やテキスト翻訳、音声翻訳、Speechでは音声認識や話者分析、Searchでは画像や動画の検索、Knowledgeでは論文探索やカスタムのFAQサービスなどのAPIが提供されている。

 佐藤氏によれば、「ほとんどのAPIは汎用用途のためにマイクロソフトがトレーニング済みなので、カスタマイズせずに簡単に使える。画像認識や音声認識、検索など一部のAPIにはカスタマイズ可能なものも用意している」という。

 とはいえ、コンピュータがモノを認識できることにどんな価値があるのか。猫の写真を見せて「猫」だと認識できるだけだと、価値があるとは思えない。そこで佐藤氏は、レタス農家の例を挙げてAIの価値について説明した。レタス農家の悩みは雑草とレタスを一緒に収穫したくないことと、雑草をなくすために大量の農薬にお金が必要であることだ。「コンバインとAIを掛け合わせることができれば、農薬を大幅に削減し環境に優しい、オーガニックでおいしい野菜ができるかもしれない。こういった形でAIを既存の仕組みの中に統合することで、作業を効率化したり、今までなかった価値を提供したりできる」と佐藤氏は力強く語った。

AIはシステムの一部として活用する

 活用事例も次々と登場している。北海道大学大学院 工学研究院工学系研究教育センターでは、大学院後期課程の授業をe-ラーニング化し、遠隔地にいる社会人大学院生の受講支援として配信している。外国人留学生のために、コンテンツに日本語や英語の字幕を入れることもあり、これまではオンプレミスのストリーミングサーバーを用意して配信。字幕はアルバイトや職員が作成し、翻訳は外注などでまかなっていたという。

 こういった状況に対して「字幕作成にAzure Media Indexer、字幕翻訳にMicrosoft Translator、また動画配信にはAzure Media Servicesを導入。動画配信システムの初期導入コストや、字幕の作成、翻訳にかかる時間とコストを大幅に削減できた」と佐藤氏は語った。人力での字幕起こしにかかる時間はコンテンツの約10倍で、90分の動画だと900分の作業。時給1000円のアルバイトとしても、計1万5000円である。同サービスの導入により、字幕起こしの費用は平均153円と100分の1に、字幕起こしにかかった時間は平均29分と30分の1に、字幕翻訳費用は50円以下と400分の1に、そしてその時間は平均20分程度と1080分の1になったといい、具体的な数字を挙げて大幅な効率化を明らかにした。

 続いて佐藤氏が紹介したのは、ジョン・F・ケネディ元大統領暗殺に関する膨大な文書の整理への活用についてだ。大量の文書を読むには何十年もかかると言われているが、以下を用いた仕組みを作ることで、大量文書の内容が容易に解釈できるようになる。例えば、Text AnalyticsEntity Linking Intelligence ServiceといったAPIを用いてテキスト分析の仕組みを構築し、人名や固有名詞などのキーフレーズを容易に抽出・分析できる。

テキスト分析によって重要語だけでなく属性まで検索
Bing Entity Searchによって重要語の抽出だけでなく、その属性の検索まで可能

 またコージェントラボがAzure上で開発した自然言語理解エンジン「Kaidoku(カイドク)」を使えば、さまざまな文書を理解しマッピングしてくれるため、「検索にかかる時間を短縮してくれたり、気付いていなかった文書の関係性を可視化してくれたりする。例えばカスタマーサポートに応用するとクレームを一元化できるので、問い合わせサポート業務の改善につながる」。

 こういった仕組みを使うと、ビジネス業務にどんな変化があるのだろうか。佐藤氏は、AIサービスを活用することで「データ入力が変わる」と話す。これまでの「事象発生→手入力→入力画面→登録」といったフローがデジタル化され、人手を介することなく負荷を削減してデータ化できるようになるといった具合だ。

 続いて佐藤氏はビッグデータ分析サービス「Azure Data Lake Analyticsも紹介。「大規模な分散分析が可能になる顔の解析」「画像へのタグ付け」「顔の感情分析」「OCR」「テキストからの重要語句の抽出」「テキストの感情分析」という6つのコグニティブ機能を提供しており、ビッグデータ分析のためのSQLライクなクエリに、簡単にコグニティブ機能を組み込めるようになっている。

 また、マイクロソフトがトレーニング済みのMicrosoft Cognitive Servicesだけではまかなえない場合は、カスタムAIを利用できる。これを使うとどんなことができるのかも簡単に紹介した。佐藤氏が取り上げたのは、相撲の写真からロマンチック小説風ストーリーを作る事例。「このソースを見たい人はGitHubで公開されているので参考にしてほしい」。

 そのほかにも、プロのデータサイエンティストが使える高度な機能を提供する「Azure Machine Learning Workbench」を紹介。「これまでのAzure Machine Learning StudioはGUIで簡単に開発できる半面、幅広いデータサイエンスのニーズのすべてに対応することができなかった」と佐藤氏。だがデータサイエンティストの初心者にはブラウザで動くMachine Learning Studioは使いやすく「無料で使えるので興味のある人はぜひ、使ってほしい」と佐藤氏は説明する。

 Azureを使ったAI開発では普段使っているIDEや任意のフレームワークも利用可能だという。佐藤氏は「柔軟なトレーニングとデプロイの選択肢が実現する」と話し、そのほかにも多数のIoT向けのAIプラットフォーム「Azure IoT Edge」などについても簡単に紹介。

 「ビジネスコミュニティ『Deep Learning Lab(ディープラーニング・ラボ)』も立ち上げているので、関心のある人は参加してほしい」。最後にこう呼びかけセッションを締めた。

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 日本マイクロソフト株式会社

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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