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イベントレポート

Sansanはデータ分析でどんな未来を創造するか――Data Strategy & Operation Centerの歩み【Sansan Builders Box】

「問いすらわからない」ものに挑戦するSansan Data Discovery

 続いては、西田氏によるセッション「イノベーションはここから生まれる -Sansan Data Discoveryの挑戦」だ。

Data Strategy & Operation Center R&Dグループ 研究員 西田貴紀氏
DSOC R&Dグループ 研究員 西田貴紀氏
(写真:山平敦史、写真提供:Sansan株式会社)

 彼が参画するSansan Data Discoveryは、出会いのデータベースから 新たな価値を導き出し、各分野におけるトップレベルの 外部識者と共同研究を行うプラットフォームである。では、このプラットフォームのメンバーたちはどのような性質の課題に取り組んでいるのだろうか。西田氏は、その役割を2つの軸を用いて示した。

 「これは、R&DとSansan Data Discoveryのポジショニングを示したものです。縦軸はSolution(解決策)で、Simple(シンプルなもの)→Known(世の中で知られたもの→Unknown(まだ知られていないもの)となっています。横軸はProblem(課題)で、Known→Unknownです。

 このうち、問い(課題)はわかっているけれど、解き方がわからないものをR&Dが担っています。一方のSansan Data Discoveryは、問いすらわからないし、答えもないものに挑戦していく共同研究プラットフォームです」(西田氏)

 では、なぜそうした共同研究に、今このタイミングで取り組む意義があるのだろうか。西田氏は順を追ってそれを解説していった。

 まず示されたのは、経済学者のサイモン・クズネッツ氏が提唱した「世界の国々は4つに分類される。先進国、発展途上国、そしてアルゼンチンと日本である」というフレーズだ。

 アルゼンチンはかつて農業大国だったものの、工業化に失敗し先進国から発展途上国になった唯一の国だ。一方で日本は、発展途上国から先進国になった唯一の国だと言われている。つまり、日本には大いなるポテンシャルがあるという。だが、現在の日本は「失われた20年」「長期的な不況」などと、悲観的な見方をされることも多い。かつてほどの力を持っているのだろうか。

 この疑問に対する解を示すため、西田氏は次に経済物理学者のセザー・ヒダルゴ氏が提唱した指標を紹介した。その指標とは「経済複雑性指標」である。

 「経済複雑性指標とは、国の経済成長を長期的に見通すために用いられる指標です。これは何かというと、例えば、GDPでりんごを1兆円分生産する場合とiPhoneを1兆円分生産する場合、どちらも同じ1兆円ですが、それぞれが持つ複雑性は違うことを意味しているんです。

 りんごは農家がいれば生産できます。でもiPhoneはいろいろな機械や機器を組み合わせなければ生産できません。つまり、後者の方が複雑性があるということです。長期的に見れば、組み合わせを変えることで発展のバリエーションが生まれる分、産業の複雑性が高い方が経済成長していく可能性が高いと彼は提唱しました」

 そしてなんと、日本は経済複雑指標の値が世界第1位なのだという。つまり、この理論によれば日本は世界トップレベルの成長ポテンシャルを持っていることを意味している。

Innovation = Creation × Diffusion

 西田氏は、本セッションの題目でもある“イノベーション”について触れた。「イノベーションを起こす」とはそもそも何なのか。その本質について、西田氏はこう考えるという。

 「イノベーションの語源は、nova(新しい)とIn(導入する)を組み合わせたものです。つまり、新しいものを作れば何でもイノベーションというわけではなく、社会に広く導入されなければイノベーションにはなりません」

 西田氏はさらに解説を続ける。例に挙げたのは社会学者のダンカン・ワッツが提唱したフレーズだ。要約すると「どんなにいい花の種があったとしても、種が落ちる場所が肥沃な土壌でなければその花は咲かない」という趣旨だという。

 「ここから学べることは、『Innovation = Creation(創造) × Diffusion(拡散)』だということです。Creationとはクリエイティビティを発揮して新しいものを組み合わせること。かつ、それがDiffusion(拡散)することでイノベーションになる。それこそがイノベーションの本質なのだと僕は考えています」

 この理念を前提として、「だからこそ、出会いのデータには大きな可能性がある」のだと西田氏は語った。ビジネスに関連した人脈のネットワークと、かつネットワーク上にある膨大な情報が伝播している。つまり、CreationとDiffusionの両方を成立させる素材がそろっている状態だ。

 だからこそ、ユーザーが人脈データを活用するためのプロダクトを提供しているSansanという企業において、共同研究プラットフォームを構築し、研究に取り組む意義があるのだという。西田氏はSansan Data Discoveryが取り組む各プロジェクトの概要を述べた後、出会いの意義についてこう総括し、セッションを終えた。

 「誰かと会った瞬間に、自分の人生が変わるようなネットワークができ始めたり、それによって自分のキャリアが変わったりした経験が、みなさんきっとあるはずです。人と人との出会いは大きな可能性を秘めています。私たちはこれからも、人生が変わる『出会い』を解き明かしていきたいです」

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この記事の著者

中薗 昴(ナカゾノ スバル)

 週の半分はエンジニア、もう半分はライター・編集者として働くパラレルキャリアの人。現職のエンジニアとして培った知識・経験を強みに、専門性の高いIT系コンテンツの制作を行う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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