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この10年でソフトウェア開発はどう変わったか?――"The State of the Octoverse"から見る世界の開発トレンド/担当者インタビュー【GitHub Universe】

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2019/01/16 11:00

 2018年、GitHubのリポジトリ数は1億件を達成した。これはGitHubが年に一度発表する、世界の開発者および開発環境に関する情報をまとめたレポート「The State of the Octoverse」の中で紹介された数字だ。同社のデータサイエンティストチームによって作成されたこのレポートは、開発トレンドを把握し、今後のソフトウェア開発事情を見通すうえで非常に重要な役割を担っている。そのレポートの注目ポイントが、2018年10月に開催されたGitHub Universeでのセッション“State of the Octoverse”で語られた。また、セッションに登壇したデータサイエンティストAnna Filippova氏にインタビューを敢行した。

目次

急成長地域や人気の言語…この1年のトレンドは?

 「The State of the Octoverse」は毎年10月にGitHubがまとめている年次レポートだが、「今回(2018年度)のOctoverseは特別」だとGitHubのデータサイエンティストAnna Filippova氏は語った。なぜなら、GitHub設立から10周年という記念の年だからだ。

 「なので今回は、この10年間を振り返り、みなさんのコントリビューションがどんな意味を持つか、またソフトウェア開発がどう変わったかを探っていきたいと思います」(Filippova氏)

 このように話し、開発者に焦点を当てたアナリスト集団である「RedMonk」のPrincipal Analyst & Co-founder、Stephen O'Grady氏を迎えて、セッションが進んだ。

登壇したRedMonkのPrincipal Analyst & Co-founder、Stephen O'Grady氏(左)と、 GitHubのData Scientist、Anna Filippova氏(右)
登壇したRedMonkのPrincipal Analyst & Co-founder、Stephen O'Grady氏(左)と、
GitHubのData Scientist、Anna Filippova氏(右)

 2人が注目のポイントとして挙げたのは、以下の3つのトレンドだ。

  • GitHubに関わる地域の多様性が高まっていること
  • プログラミング言語のコミュニティの革新
  • オープンソースがこの10年で変わったこと

広がる多様性、急成長の国の要因は?

 まず1つ目のトレンド「地域の多様化」について、次のデータを参照した。

 これは、コントリビューター数の国ごとのランキングだ。全体の約80%がアメリカ以外からのアクセスを誇っているGitHubだが、コントリビューションもさまざまな国からなされている。2018年のユニークコントリビューター数は、全体で昨年比1.6倍に増加したという。

 このランキングを見ると、ブラジルが過去5年間で急激な上昇を見せていることが分かる。これについてO'Grady氏は「2017年の調査によると、ブラジル連邦政府の組織の93%がオープンソースを使っている」と言い、ブラジルという国全体がオープンソースに対して非常に意欲的な現状を明らかにした。日本は8番目にコントリビューションが多い国となっている。

 また、最も成長率の高かったナイジェリアについても言及された。ナイジェリアでは、コントリビューター数は前年の1.6倍に、組織によるものは2.1倍に、作成されたリポジトリ数は1.7倍にまで増加した。成長が加速した要因としてO'Grady氏は「レガシーなインフラがないからだ」と分析した。

 その他にもGitHubにおいて新規ユーザーが急激に増えた国は多い。トップ10は以下の通りだ。中東やアフリカ、東南アジアに多いことが分かる。

The State of the Octoverse(https://octoverse.github.com/peopleより)
The State of the Octoverse(https://octoverse.github.com/peopleより)

KotlinやPythonの急成長―その背景は?

 リポジトリが最も多く作成されている言語は、JavaScriptだ。また、コントリビューションが多いのもJavaScriptという結果になった。

 さらに注目すべきはTypeScriptの急上昇で、7位に躍り出ている。O'Grady氏はTypeScriptがこれだけ愛される理由ついて「JavaScriptに変換でき、スキルを組み合わせて使うことができる。また重要なのは、開発者側からしても企業側からしても安全なコードを書ける。これらの要因がこの結果を生んだのではないか」と分析した。

 一方、成長率でトップだったのはKotlinだ。Kotlinを使っているコントリビューターの数は、昨年比で2.6倍に伸びた。

 O'Grady氏は、Kotlinの急成長の背景に、「Javaという大規模なコミュニティとの相性の良さ」を挙げた。Kotlinは、Java仮想マシンを動かすことができるなどJavaの開発者であれば親しみやすく、またシンタックスが簡潔であるといった特徴がある。これらが普及の要因であると考察した。

 Filippova氏が、「3つの言語に共通して重要な点があると思う。ソフトウェアの書き方はどう変わって来ているのか」と問うと、O'Grady氏は「10~20年前は環境が非常に標準化されていたが、今はたくさんの多様な言語が採用されて使われている。1つのアプリケーションに3~5つの言語が使われることもある」と指摘。KotlinをはじめClosure、Groovyなど、幅広い用途で使われ、また既存の基盤にも対応できる能力を持っている言語が多くある特徴を挙げた。

 Filippova氏も、「JavaScriptの古いライブラリを、静的型付けをすることで再利用できる。相互運用性があるということ」と、昨今人気のプログラミング言語の強みを説明した。

 Pythonについても、急上昇言語として触れた。シンタックスについての議論や、学習が容易であることなど、アピールポイントはさまざまあるが、O'Grady氏はとにかく「幅広い用途に使える言語である」と指摘した。データサイエンスやマシンラーニング、アプリケーション開発にも利用される。

 「Pythonは、フロントエンドのためだけでもなければ、バックエンドのためだけの言語でもない。デベロッパーのキャリアを越えてさまざまな文脈で使える言語なのだから、今日これだけ人気になったのも不思議ではない」(O'Grady氏)

 以上の人気言語についてFilippova氏は、「何より、これらの言語がみなGitHub上のオープンソースプロジェクトであることをうれしく思っています」と加えた。


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著者プロフィール

  • 岡田 果子(編集部)(オカダ カコ)

    2017年7月よりCodeZine編集部所属。慶応義塾大学文学部英米文学専攻卒。前職は書籍編集で、趣味・実用書を中心にスポーツや医療関連の書籍を多く担当した。JavaScript勉強中。

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