
“Alexa Everywhere”の世界はすぐそこに
まずはAlexaの歴史を振り返ってみよう。2017年11月にAlexaが日本に上陸。2018年7月には「Amazon Echo Spot」のような画面付きのデバイスが登場し、テンプレートを使ってMulti-Modalスキルを開発できるようになった。
2018年9月にはAmazon Presentation Language(APL)という言語が公開され、さらに自由な画面レイアウトを作ることが可能に。昨年末には、大画面スクリーンを搭載した「Echo Show」も登場した。同月にはAmazon Pay for Alexa APIが公開され、スキルから決済ができるようにもなっている。
現在、Echoシリーズは「Echo」「Echo Plus」「Echo Dot」「Echo Spot」「Echo Show」の5つのラインアップがある。これらだけでなく、今年1月の家電見本市「CES 2019」では、メガネや家電など多数のAlexa対応デバイスが登場し、今後もさらに増え続けると見込まれている。
「Alexaはスマートスピーカーというジャンルを超えて、家の中のどこにでもAlexaがいる、まさに“Alexa Everywhere”の世界が現実味を増してきた。これはつまり、声でお買い物をする機会が増えるということです」(畠中氏)
現在、Alexaスキルから収益を得る方法としては、「(1)Amazon Payを利用する方法」「(2)スキルから直接Amazonにアクセスして決済を行うスキル内課金」の2つがある。1つずつ詳しく見ていこう。
Amazon Payを利用する―Alexaスキルで収益を上げる方法(1)
Amazon Payとは、Amazon以外のECサイトでもAmazonのアカウントを使って快適な買い物体験ができるサービスだ。異なるECサイトでショッピングをする際に、その都度クレジットカード情報や配送先情報を入力する手間が省ける利便性の高さゆえ、導入企業は提供開始から約4年で数千社を超える規模へと成長しているという。
このAmazon PayはECサイトに実装されるところからスタートしたが、今ではこの技術を活用したさまざまなサービスがリリースされている。例えば、Amazonの社員食堂では、カードリーダーに社員証をかざすだけでAmazon Payを使った決済ができる仕組みが用意されている。この流れで昨年発表されたのが、Alexaスキル向けAmazon Payだ。Amazonアカウントを使って、Alexaスキルから簡単に支払い処理を可能にする機能となっている。
すでに公開されているAlexaスキル向けAmazon Payを活用したスキルの中から、畠中氏はメガネスーパーの事例を紹介した。Alexaに「メガネスーパーを開いて!」と話しかけると、「メガネスーパーへようこそ! Amazon Payで再注文しますか?」と答えてくれる。それに対し、「はい」と答えると、Alexaが過去の購入履歴を調べて「○○を再注文しますか?」と聞いてくるので、「はい」、そして配送先の確認が入るので、「はい」、と答えれば注文と決済は完了。たった3回の「はい」だけでリピート購入ができてしまうのだ。
「Amazon Payに対応したスキルの詳しい作り方は、Alexaの開発者ポータルで紹介されています。Alexaに対応することによって、お客さまとのタッチポイントを増やせるので、物販やサービスの販売をされている事業者の方は、Webやスマホに加えて、音声インターフェイスでのショッピング体験の提供に、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか」(畠中氏)
スキル内課金を利用する―Alexaスキルで収益を上げる方法(2)
スキル内で利用できるゲーム、情報、音などのデジタルコンテンツを販売する際に活用できるのが、スキル内課金だ。あいにく日本ではまだ解禁されていないスキル内課金だが、米国のアカウントで米国向けのスキルを作って公開することは今でも可能となっている。
スキル内課金では「買い切り型」「サブスクリプション」「消費型」の3つのタイプから選択してスキルに実装することができる。
買い切り型 |
一度アイテムを購入すると無期限で使い続けられるタイプ。 ex.ゲームの新しいステージ |
サブスクリプション型 |
定期的に自動課金されるタイプ。更新しない場合はスキルから 「キャンセル」と言うだけで課金をストップできる。ex.定期購読 |
消費型 | 1回使い切りのタイプ。ex.ゲーム内で使用するコイン |
米国では買い切り型とサブスクリプション型は0.99〜99.99ドル、消費型は0.99〜9.99ドルの価格範囲が設定されている。「将来、日本を含め他国で導入される場合には、この設定は異なる場合がある」と畠中氏は話す。
スキル内課金からの収益モデルとしては、スキルが売れた場合、デベロッパーには70%の金額が振り込まれる。Amazonがディスカウント設定した場合には、Amazonの取り分である30%から引かれるため、デベロッパーの取り分が70%から下がることはない。この数字も米国での例であるため、日本でリリースされるときには多少の数字変動がある可能性がある。
「スキル内課金はSkill Connectionsの機能を使って実装されるため、決済周りに関してはデベロッパーのみなさんが作る必要はありません。詳しい情報は米国のサイトで公開されているので、これらの情報を入手したり、お手持ちのEchoで言語設定を変えて米国のスキルで課金のタイミングを研究してみたりするなど、日本上陸に備えて予習しておくと良いかもしれません」(畠中氏)
スキル内課金の日本上陸を待つのでは遅い
スキル内課金が使えるようになることで、魅力的なコンテンツが増え、ユーザーが増えると、収益を得られるチャンスが広がる。その資金をもとにコンテンツに投資することで、好循環が生まれるのだ。
そのために畠中氏は「今後、日本でもスキル内課金で収益が得られるようになる前提で、『音声ならではのユーザー体験とは何か』『繰り返し使ってもらえるスキルとはどんなものか』『音声ファーストでありつつも効果的にビジュアルを活用するにはどうすれば良いか』の3つのポイントについて熟考しておくべきだ」と語る。
Alexaスキルをどんな人にどんな風に使ってもらいたいのか。Webやスマホに代替されるものであっては、意味がない。また、繰り返しスキルを使ってもらって収益を上げるには、「超便利」「やめられない」「習慣になる」といったポイントを押さえておくことも大切だ。
最後に畠中氏は、米国の事例で得られたスキル内課金のベストプラクティスを下図の通り紹介した。

「さまざまなデバイスにAlexaが搭載されてきた今、VUIを避けて通れない時代はすぐそこまで来ています。スキル内課金が日本に上陸する日をただ待っているだけでは、必ず後れを取ってしまう。まずは無料で使えるスキルを作り、実績を積んでおくべきです。Alexaスキルでの収益化に向けて、今から準備を始めましょう」(畠中氏)
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